4月1日、日本でもApple Intelligenceが広く使えるようになった。重要なのは、「そこでなにが便利なのか」という点だ。
【画像を見る】きょう公開のApple Intelligenceでできること(全7枚)
Apple Intelligenceの機能を紹介する記事は多いが、実は「それなりに長く使ってみないと価値が見えてこない」ものもある。そしてそれは、現時点でのApple Intelligenceにおける、最大の価値でもあったりする。
この機能からは、「個人にとってのAIの価値とはなにか」を考えるきっかけも生まれるだろう。
なお、本記事は報道用に許諾を得て、Apple Intelligence日本語版を搭載したiOS 18.4/iPadOS 18.4/macOS Sequoia 15.4の開発途上版を利用している(執筆は公開前)。
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●AIでの「通知要約」が圧倒的に便利
Apple Intelligenceに搭載される機能は多数ある。AppleのWebでも宣伝されているのは、文章を生成・要約する「作文ツール」や、画像を生成する「Image Playground」などが目立つ機能で、筆者も記事などで紹介してきた。
一方で、これらの機能が多くの人に「ガッツリ刺さる」のかというと、やや微妙であるようには思う。
確かにそれぞれは便利なものだ。必要な時は確実にある。しかし、毎日大量に使うかというと、そうでない人も多いだろうと思う。
一方、「毎日使い、確実に便利」な機能もある。それが「メールや通知の要約」だ。
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例えば以下は、ある日の通知画面だ。筆者の日常そのものであるので、複数のモザイク処理が入っていることをご了承いただきたい。
複数の通知内容がアプリごとに要約され、「いい感じ」にまとめ直されているのが分かるだろう。
この機能は、それぞれの機器にインストールされたアプリが出す「通知」で自動的に働くもの。要約精度の問題からAppleの「News」アプリは非対応となっているものの、Newsアプリ自体が日本では運用されていないので、大きな違いはない。
その性質上、アプリの通知がたまってこないと動作が見えづらいので、Apple Intelligenceをオンにしてもすぐには変化が分かりづらく、数日以上経過すると目立つようになってくる。
中でも有効なのが、メールやメッセージング系アプリの「まとめ」だ。前画像にもFacebook Messengerの通知がまとめられているが、ちょっと見ていない間になにがあったかを把握できて便利である。
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そして「メール」アプリでは、通知を含めた要約はもっと便利になっている。
以下の画像は、Mac上で新着メールが通知された時のものだ。
2件の通知があるが、よく見ると2つのグループに分かれている。これは時間差によるものでもあるが、送信元情報をベースに「関連する複数のメールにどんな内容が含まれているか」をまとめて要約してくれているのである。これは非常に分かりやすい。
次に、「メール」アプリ自体を見てみよう。
件名の部分にご注目いただきたい。
一見今までと同じに見えるが、メールの件名にあたる部分は、単にメールのタイトルをそのまま表示しているのではない。メールの件名と内容から作った要約が、「件名」欄に納まるようにまとまっているのだ。
しかも、前述のように、同じ送信元によるメール(返信でまとめてスレッド化されたもの)は、内容がまとめて要約されている。
だから、ここの部分を見れば、どんな用件に関するメールかが非常に把握しやすい。
次の画像は、件名部分を拡大したものだ。
一番上にあるサムスンの告知メールもうまくまとめられている。しかし、前の画面を見ればお分かりのように、メール本文はHTMLメールで、タイトルや文面の冒頭だけでは内容が分かりにくい。この要約機能はちゃんと「メール本文全体」を見て、分かりやすい内容へとまとめなおしてくれているのが分かる。
参考までに、同じメールをGmailで見た画像も示しておく。こちらはメールのタイトルをそのまま表示している。これでも分かりやすくはあるが、要約のあるAppleの「メール」アプリの方が視認性は高い。
こうしたことは、Apple Intelligenceをオンデバイスで動かしているからできることだ。メールの内容は極めてプライベートなものだが、データが外に出て行かないオンデバイスAIなので、プライバシーや内容の漏えいを気にすることなく、メールの要約ができるのだろう。
筆者はこれまで、iPhoneやMacの上でも「メール」アプリはあまり使わず、Gmailを主に使ってきた。
しかし現在は、要約機能があまりに便利なので、「メール」アプリを併用するようになっている。
●何もせずにAIの価値を得られることの意味
この機能はなぜ便利なのか?
最大の要素は「使う側は何もしなくていい」ということだ。
生成AI関連の機能は「生成」が伴うので、利用者がなんらかのアクションを起こす必要がある。便利ではあっても相応に大変で、新しい発想も必要になる。「使いこなす必要がある」機能、という言い方もできるだろう。
一方で「まとめ」「要約」機能については、こちらは何もする必要はない。Apple Intelligenceをオンにするだけで、誰にでも公平に便利さが提供される。
OSのアップデートに興味を持たない人も多い。それは、「自分が普段使っている機能が大きく変わるわけではない」「そのために新しい操作を覚えるつもりがない」からだろう。
だが、この「要約」機能なら、Apple Intelligenceさえオンにすれば誰もが使える。生成AIによる要約精度が気になる人もいそうだ。
100%適切というわけではなく、「なんでここを要約」と思うこともゼロではない。だが、気になったら内容をチェックすれば良いだけの話。それこそ「ざっくり把握して、すぐに内容をチェックすべきかどうか」を判断するきっかけになればいいので、100%の精度でなくてもいいのだ。
こうした両面が、日常的に使う機能としてAIを使う……という部分にうまく刺さっているのではないだろうか。
●どこのスマホAIも「まだ発展途上である」
では、このことから「Apple Intelligenceは賢い」と言えるのだろうか?
残念ながら、その点とこの機能は無関係である。
例えば、GoogleのGeminiとApple Intelligence搭載のSiriを比較すると、現状はさほど差がない。むしろ、画像からの検索などが統合されているGeminiと、ChatGPT連携になるApple Intelligenceでは、後者の方が面倒でまどろっこしく、「賢さはGeminiの方が優れている」と感じる人も多いだろう。
Apple Intelligenceを使ったSiriはかなり発展途上であり、アプリの利用履歴やコンテクストを生かした返答は、まだまだうまく働いていない。
そういう意味では、Geminiも、こちらの意図を読んでスマホ内ですることを楽にしてくれているレベルには達していない。
すなわちどちらもまだ不完全だ。
本来各社が狙っているのは、プライベートな情報を含む個人の意図を把握し、オンデバイスAIでプライバシー問題に配慮しつつ、「自分にとって最適なAIをアシスタントとする」ことを目指している。
Appleはその中で、「Private Cloud Compute」という仕組みを持っている。これはクラウドではあるが、「オンデバイスで処理が足りない処理だけ使う」「情報を永続的に蓄積するストレージを持たず、処理が終わったデータはその場で捨てる」という機構のもの。一般的なクラウドではなく、わざわざそういう処理を用意しているところが面白い。
現状、Private Cloud Computeが使われる率はさほど高いものではなく、長い文章を作文ツールで処理する時などが中心とされているが、今後は「パーソナルなアシスタントの処理の中には、デバイス内の処理だけでは追い付かないものも出てくる」と考えているためだろう。
先日、「Apple Intelligence上のSiriの開発が遅れている」という報道があった。その真偽は分からないが、Apple Intelligenceの中核がSiriであるとすれば、その可能性はまだまだ開拓しきれていない状況と感じる。
その際には、いかに「利用者が特別なことを意識しなくても、スマホの使い勝手が快適なものになるか」という視点が重要であることを、この「要約」機能は教えてくれているのではないだろうか。
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