画像提供:マイナビニュース温室効果ガスの排出を2050年までに全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」の取り組みが世界各国で進められています。同様に日本国内でも自治体ごとにゼロカーボンを目指す計画づくりが急がれています。
NTT東日本グループでは通信で培ったノウハウを活かして設備構築、運用、保守までをトータルに支援。地域の実情にあわせたエネルギーの「地産地活」を提案しています。
地方自治体の脱炭素化をサポート
「北海道には179市町村ありますが、すでに160以上の自治体が『ゼロカーボンシティ宣言』をしています。とはいえ、まだ実行フェーズに至っていない場合も多いので、公共施設における太陽光発電や蓄電池の導入などに我々が少しでもお役に立てれば……と思い、自治体向けの提案に力を入れています」
こう話すのは、NTT-ME(エヌ・ティ・ティ エムイー) 北海道ブロック統括本部の山内秀敏さんです。
「ゼロカーボンシティ宣言」とは、2050年にCO2(二酸化炭素)を実質ゼロにすることを目指すという表明のこと。まさにいま計画立案を急ピッチで進めている自治体も多いのかもしれません。
「我々は各地域のCO2排出量削減に少しでも貢献したいと考えており、全道各地にあるNTTの通信ビルなどに再生可能エネルギー(以下、再エネ)電源を積極的に導入しています。また、自治体や地域の企業と連携しながら、その地域に即したエネルギーの地産地活に貢献したいと考えています」(山内さん)
2024年度は道内の自治体の約4分の1にあたる40自治体ほどにアプローチ。今年度も引き続き提案先を広げていく予定です。
エネルギーの地域循環を目指して
現在、具体的に進んでいる取り組みはあるのでしょうか。同社の柳橋愛見さんが答えます。
「2022年4月に環境省の第1回脱炭素先行地域に選定された石狩市では、いま市内5つの公共施設を『中心核』と位置づけ、マイクログリッド構築事業を進めていますが、公募型プロポーザルで我々が優先交渉権を獲得しました。2026年度末に電力供給まで完了させる計画でいま進めています」
石狩市が選定された第1回脱炭素先行地域とは、他に先駆け2030年度までに民生部門(※)の電力消費に伴うCO2排出の実質ゼロを目指す地域のこと。
選定されたのは全国26カ所で、北海道では石狩市のほか、上士幌町、鹿追町が選ばれており、国は「脱炭素ドミノ」の起点となるモデル地域として位置づけています。
※民生部門とは、産業部門と運輸部門を除く家庭部門とオフィス関連の業務部門のこと
石狩市では市内5つの公共施設(石狩市役所、石狩市総合保健福祉センター、子ども未来館あいぽーと、石狩市学校給食センター、石狩市民図書館)に再エネを導入し、マイクログリッドの構築を目指しています。
マイクログリッドとは平常時には再エネを自家消費し、非常時にはエリア内で電力を融通する送配電の仕組みのことです。
「公共施設の屋上に太陽光パネルを設置して、蓄電設備を導入。停電などの災害時には重点拠点に限定して電力を供給して業務を継続できるようにしました。カーボンニュートラルにとどまらずBCPを重視したのが我々の提案のポイントです」(柳橋さん)
初期費用のかからない太陽光PPA
石狩市への提案で、もうひとつ注目すべき点は、公共施設への太陽光発電設備の導入をPPA方式で行うことです。
電力購入契約、PPA(Power Purchase Agreement)とは、どういった仕組みなのでしょうか。
「お客様の敷地や建物に、我々の費用負担で太陽光発電設備を設置して、お客様には発電した電力を購入いただくという契約形態です。地域内でエネルギーが循環する仕組みにより、地域の活性化につなげていけたら、と考えています」(柳橋さん)
NTT-MEではこのほか、富良野市と連携し、市内にあるNTTの通信ビルの敷地内に設置した太陽光発電設備から再エネ電力を通信設備に活用し、ゼロカーボンシティ実現に貢献しています。
降雪エリアならではの工夫とは
ビルの屋上など限られたスペースでも設置できるのが太陽光発電の魅力ですが、心配なのは冬。雪の季節はどうなるのでしょうか。
同社の岡安哲さんは地域の条件に合わせた提案が可能だと言います。
「確かに太陽光パネルに雪が積もってしまうと発電が難しくなってしまいます。そこで当社では自社ビルに設置した太陽光パネルを使って降雪期でも発電量を増やすための実証実験を続けてきました。
パネルの表面のガラスに親水剤や雪が滑りやすい滑雪剤を塗って、滑雪効果や溶剤により発電量がどれくらい低下するか調べたり、北海道エリアで一番発電効率が良いのは30度の角度ですが、雪が落ちやすく角度を急にして設置したり、発電量の違いなどを確認したりして、さまざまな実証実験の結果に基づいて、地域の環境ごとに最大の効果が得られるよう提案しています」
通信会社がエネルギー分野の提案と聞くと、少し不思議な気もしますが、よく考えると通信はいま欠かすことのできないライフラインのひとつ。情報通信と電力はセットで考えるべきインフラかもしれません。
「NTTグループ全体では再エネの他にもさまざまなソリューションを持っています。災害時の備蓄品管理のサービスもあれば、DX関係の提案も可能です。自治体の抱える課題に対し複合的なソリューションでお手伝いできるのが、我々の強みだと思います」(岡安さん)
エネルギーの地産地活で、持続可能なまちづくり
自治体と連携した取り組みを進めるにあたっては、住民の理解にも気を配ります。
「計画の実行前には景観への配慮や産廃の問題など地域の方々の不安に向き合い、しっかりと説明して、理解していただく必要があるでしょう。我々も自治体と協力して、親子で参加できる『ミニソーラーカー工作教室』づくりなど、太陽光発電を身近に感じていただくイベントなどを開催しています」(柳橋さん)
猛暑や大雨など気候変動が肌で感じられるようになってきた今、こうした再エネ利用の取り組みはこれから加速度をつけて進んでいくのでしょうか。
「資源エネルギー庁の『エネルギー白書』によると、化石燃料の輸入額は過去2年間で約22兆円も増加しているそうです。日本はエネルギーのほとんどを海外に依存していますから、エネ庁ではエネルギー危機に強い需給構造の転換が必要だと強調しています。
こうした危機的な状況だということを我々一人ひとりがまず課題認識するのが非常に重要だと思っています。そのうえで、風の強いところ、日照時間の長いところ、地熱が活用できるところなど、それぞれの自治体が特色を生かしながらエネルギーの地産地活を考える。自治体や地域の企業の方々と役割分担しながら、持続可能な地域の未来を築くことが、我々の使命だと考えているのです」(山内さん)
カーボンニュートラルの実現は、地球温暖化の防止という環境面にととまらず、経済的な面でも持続可能なまちづくりに直結しているということですね。
北海道は再エネのポテンシャルが高いといわれますが、何をどのように利用することがベストなのか。私たちひとりひとりが真剣に考える必要がありそうです。
井上由美 いのうえ・ゆみ 函館生まれ、札幌在住。広告制作会社のコピーライターを経て2000年からフリーランスのライターに。好きなものはコーヒーとお酒、紙の本、海の匂いと波の音、犬、子ども、お風呂。嫌いなものは戦争と原発と大声。 この著者の記事一覧はこちら(井上由美)