井上尚弥のラスベガスでの一戦、現地ベテラン記者の予想は「一方的」 来年は中谷潤人との対戦にも期待

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2025年04月03日 07:20  webスポルティーバ

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 軽量級の最強王者、世界スーパーバンタム級4団体のチャンピオンである井上尚弥(大橋)が5月4日、ラスベガスのT-モバイルアリーナでラモン・カルデナス(アメリカ/29歳/26勝14KO・1敗)と対戦することになった。井上にとって2021年6月以来となる米リング登場。今では世界的な知名度を誇るようになった"モンスター"は、アメリカに本拠地を置くメディア、関係者にも歓迎されることは間違いない。

 約1カ月後に迫った井上対カルデナス戦を前に、元ESPNのメインライターだったスティーブ・キム記者に、その見どころを尋ねた。ロサンゼルスに本拠地を置き、現在はフリーライターとして健筆を振るうベテランライターは「対戦相手となったカルデナスがエリート級の選手でないことが残念」と言いながらも、井上の試合をリングサイドで見るのが待ちきれない様子だった。

【井上尚弥のベガス戦の貴重性と価値】

――井上がラスベガスに降り立ち、カルデナスの挑戦を受ける今回のイベントを楽しみにしていますか?

スティーブ・キム(以下、SK):イノウエがアメリカのリングに戻ってくるというのはすばらしいことだ。特にアメリカのファンが、この国でイノウエの戦いをライブで観られるのはこれが最後になる可能性もある。試合予想は一方的であり、もっと上質な対戦相手を見つけられなかったのは本当に残念なことだった。

 ただ、たとえそうだとしても、真に偉大なボクサーとはそうそう頻繁に現れるものではない。イノウエ、オレクサンドル・ウシク(ウクライナ/ヘビー級史上初の4団体統一王者)、サウル・"カネロ"・アルバレス(メキシコ/スーパーウェルター級〜ライトヘビー級4階級世界王座制覇)、テレンス・クロフォード(アメリカ/ライト級〜スーパーウェルター級4階級世界王座制覇)といった一部の特別な現役ボクサーたちが戦う姿を見る機会は、実に貴重なもの。彼らはどの時代でも通用する稀有な選手たちであり、そのリング登場を見逃す手はない。

――井上がしばらくアメリカで試合を行なわなかった背景をどう振り返りますか?

SK:イノウエのアメリカでのキャリアを考えると、新型コロナウイルスによるパンデミックが起こったのはとにかく残念だった。2020年4月、一度はジョン・リエル・カシメロ(フィリピン)とのバンタム級統一戦が決まり、チケットセールスは好調だった。にもかかわらず、コロナ渦によって流れてしまった。あの興行のチケット売り上げが爆発的だったという記事を『リングマガジン』に書いたのを覚えている。

 その後、2020~21年にイノウエはラスベガスに来たが、1戦目(ジェイソン・モロニー戦)はMGMグランドガーデンの"バブル"(感染予防のための隔離状態)での開催で、もう1戦(マイケル・ダスマリナス戦)はバージンホテルで少数のファンの前で戦った。当時のイノウエは日本からやって来た珍しい呼び物という位置付けだったが、それ以降、真の意味で国際的なスーパースターに成長した。サウジアラビアの"リヤドシーズン"の力なしでも8ケタ(=1000万ドル/約15億円以上)のファイトマネーを稼ぐ稀有な存在になり、その報酬は米ボクシング界が支払える範囲を超えたがために、しばらくはアメリカでのファイトが実現しなかった。

――その流れのなかで、久々のラスベガス戦が実現することの意味をどう考えますか?

SK:今回、イノウエが久々にベガスに来るにあたり、カジノからの大きな支援が得られたということだ。イノウエは今ではボクシング界の輝かしい巨星のひとり。繰り返しになるが、試合自体は好ファイトにならなかったとしても、アメリカのボクシングファンに偉大なボクサーを見るチャンスが生まれたことに意義があると思う。

【魅力的な選択肢があるのに5月4日に実現できなかったことは残念】

――カルデナスが井上を倒すという番狂わせはあり得ると思いますか?

SK:ラスベガスのオッズでは大きな差がついている。1989年、ジェームズ・バスター・ダグラスがマイク・タイソンを東京ドームで倒した"世紀の番狂わせ"の2倍ものオッズだ。それだけ力の差があるマッチアップだということ。正直に言ってしまえば、問題はイノウエが勝つかどうかではなく、どれだけ早く勝つかに絞られてくると思う。

 カルデナスが勝つようなことがあれば、21世紀最大級の番狂わせだろう。イノウエは集中力と規律に秀でたアスリートであり、これだけ前評判に差があっても、スティーブン・フルトン戦と同じように、丁寧に戦うと思う。それが現実であり、番狂わせは考え難い。

――試合予想をお願いします。

SK:井上が2ラウンドで決着をつける。初回KOと言わないのは、私がとても寛大だから(笑)。KOするのはボディ攻めかもしれないし、ほかのパンチかもしれない。

――ラスベガスの屋内会場では最大のキャパシティ(約2万人)を誇るT-Mobileアリーナが使用されることには驚かされましたか?

SK:少し驚いたが、大きなイベントにしたいというのがイノウエ自身の希望だったとボブ・アラム・プロモーターには聞いている。チケットの価格は少し高いが、MGM系列が(プロモーションに)大きな投資をしていることもあり、多くの観衆が集まるだろう。

 個人的に気になるのは、日曜の夜のイベントがどんな雰囲気になるか。ベガスでも日曜の興行は多くないだけに、その成否が興味深い。

――今年、井上はあと3戦を予定し、9月にWBA世界スーパーバンタム級暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)と防衛戦、12月にはWBA世界フェザー級王者ニック・ボール(イギリス)への挑戦が計画されています。どの試合を最も楽しみにしていますか?

SK:アフマダリエフ戦は井上にとって、スーパーバンタム級で最後に残った厳しいハードルだと思う。それも非常によいマッチアップだと思うが、階級をまたひとつ上げて屈強な男(ボール)と戦うのも同様に興味深いこと。このふたつの試合は同じくらい魅力的だと考えている。

――来年以降、井上にはどんな相手と対戦していってほしいですか?

SK:まずフェザー級では総合的なスキル、スピード、クイックネスを持ち、カウンターを取る技術もあるフェザー級無敗ランカーのブルース・キャリントン(アメリカ)は魅力的な対戦相手になる。身長と身体の強さを兼備したWBO世界フェザー級王者ラファエル・エスピノサ(メキシコ)との激突も面白い。このふたりとの対戦ならアメリカでも大きなイベントになり、多くのチケットがさばけるだろう。

 イノウエがスーパーバンタム級にとどまるというなら、もちろんジュント(WBC世界バンタム級王者・中谷潤人)との対決も忘れてはいけない。私はジュントのトレーナー、ルディ・ヘルナンデスとは毎週のように話している。ルディは今すぐにでもジュントと井上の試合を実現させたいと願っている。

 井上にはこれだけ多くの魅力的な選択肢があるのだから、そのなかのどのカードも5月4日に行なわれないのはやはり残念ではある。

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