
2024年の「移住希望地ランキング」が発表され、群馬県が1位を獲得した。群馬以下の順位は静岡、栃木、長野、福岡。近年どこの自治体も移住者の受け入れに積極的だが、実際の移住者から「移住して初めて分かったデメリット」を聞いた。
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■群馬が悲願の1位
「移住希望地ランキング」は「ふるさと回帰支援センター」が行っているもので、今回で16回目。同センターの相談者・セミナー参加者を対象にアンケートを行い、調査結果を毎年発表している。「移住希望地ランキング」は「窓口相談者」の件数を表す。
群馬は2023年2位だったが、今回1位を獲得。2位静岡、3位栃木、4位長野、5位福岡と続く。ベスト3に共通している点は、首都圏へのアクセスに優れていること。いずれも新幹線が通っており、東京や福岡などの主要な都市に1時間もかからずに行くことができ、転職しなくても移住することが可能だ。
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静岡、長野、福岡はこの手のランキングでは上位の常連。静岡、長野は観光地に恵まれ、福岡は知名度抜群の「博多」を持つ憧れの街というイメージもあるだろう。
■移住者増加で新幹線に座れず
5年前のコロナ禍の最中、神奈川から高崎市に家族で移住してきた40代の岡本聡一さん(仮名)は、以降、東京・丸の内にある職場まで高崎駅から新幹線通勤をしている。
「通勤時間は50分弱ですが、『座って通勤できるなら』と決めた移住でした。しかし、移住者が増えたこととコロナ収束によって、テレワークが廃止されオフィス回帰が進んだこともあり、朝は自由席が満席です。1時間立ちっぱなしになり、通勤環境はかつてとさほど変わらなくなりました」(岡本さん)
さらに岡本さんは自身の反省を踏まえ、移住希望者にこう忠告する。
「田舎なのは間違いありませんが、高崎市や前橋市に住む限り、都会人が憧れがちな緑豊かな田園風景とはほど遠い。逆に、都会のように整備された公園は少なく、子どもの遊び場に困ります。
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群馬が誇る温泉も、近くにあると意外と行かないもので、私も移住以来、一度も温泉に行っていません。実際に住むことになる街やエリアが、自身の希望するライフスタイルと合致しているのか、よく考えて移住先を決めるべきです」(岡本さん)
■家賃もそれほど安くない
地方移住の魅力のひとつなのが家賃の安さだ。しかしそれも、エリアによってはさほど感じられないという。
人気ランキング3位の栃木県の県庁所在地、宇都宮市に3年前に移住し、都心への新幹線通勤を続ける30代の武井賢治さん(仮名)はこう話す。
「宇都宮市はバスやローカル線の便が悪いので、都心に毎日通うためには宇都宮駅からの徒歩圏に住むことになる。
駅周辺には都心通勤者をターゲットにしたマンションがいくつかあります。私が妻と子ども3人で住んでいるのもそのひとつなのですが、築10年ちょっと、約60平米で家賃は15万円以上。都内でも葛飾区や江戸川区なら、それくらいで借りられるのではないでしょうか。
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ちなみに宇都宮駅は市の中心地からは少し離れていて、再開発によってできた大型商業施設や観光客向けの餃子店が数件ある程度。あまり情緒のない、どちらかというと無機質な街です」(武井さん)
移住希望地で2位、海も山もある静岡県の住み心地はどうか。釣り好きが高じて三島市に昨年移住した40代の町田正太郎さん(仮名)が話す。
「三島は地元民と私のような移住者の棲み分けがはっきりしている。例えばJR三島駅から南に歩くこと約15分ほど、西は伊豆箱根鉄道の三島広小路駅から東は三島大社のエリアは旧市街にあたり、太宰治が逗留していた頃の名残もあって素敵な雰囲気です。
でもそのエリアは古くから住んでいる人が多く、移住者はなかなか馴染めない。私も含め、移住者の多くはこういった昔ながらのエリアの外に住むことになる。ただ、駅周辺は夜の店が多く、客引きもいて俗な雰囲気。一方、駅から遠ざかるとヤンキー気質も残っていて、夜は暴走族がうるさいこともあります」(町田さん)
さらなる心配は、災害だという。
「静岡移住の最大の懸念は地震でしょう。覚悟の上の移住とはいえ、地震速報が出る度に『ついに南海トラフか』と体が反応してしまいます」(同)
■移住先が"急変"することも
一方、移住希望地4位、長野県の第2の都市である松本市に4年前に移住した50代の関雄二さん(仮名)は、想定外の事態に悩まされている。
「落ち着いた環境が気に入って移住したのですが、ここ2年ほどで訪日観光客が押し寄せるようになり、スキーシーズンの松本駅は外国人の方が多いのではないかと思うほど。街もインバウンド需要に浮き足立っている感があり、移住当時とは雰囲気が変わってしまった。再移住を検討したいところですが、家族もいるのでそうそう身軽には動けません」(関さん)
「住めば都」というが、移住は人生の一大イベント。実際の移住はくれぐれも慎重に。
文/山本優希 写真/photo-ac.com