
花粉症の鼻炎に使える市販の点鼻薬は、大きく分けて2種類あります。「抗アレルギー成分と血管収縮成分を組み合わせた点鼻薬」と「ステロイドを含む点鼻薬」です。
それぞれの特徴と違い・効果、選び方、使用する上での注意点を、分かりやすく解説します。
抗アレルギー成分などを含む市販点鼻薬の特徴・注意点
1つは、比較的古くから用いられてきた、抗アレルギー成分と血管収縮成分を組み合わせたものです。実際にドラッグストアなどで売られている代表的な点鼻薬の製品には次のようなものがあります。1. ナザールスプレー(有効成分:クロルフェニラミン、ナファゾリン)
2. パブロン点鼻(有効成分:クロルフェニラミン、ナファゾリン)
3. アルガードST(有効成分:クロルフェニラミン、クロモグリク酸、ナファゾリン)
4. エージーアレルカット(有効成分:クロルフェニラミン、クロモグリク酸、グリチルリチン酸、ナファゾリン)
5. 新ルル点鼻薬(有効成分:クロルフェニラミン、ナファゾリン、リドカイン)
6. ナシビンメディ(有効成分:クロルフェニラミン、オキシメタゾリン)
店頭の製品パッケージは、いろいろな特徴がPRされているので、どれがいいか迷うかもしれません。しかし、有効成分を見比べると、いずれも似たような成分が使われていると分かると思います。結論から申し上げると、どれを選んでも大きな差はありません。
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なお、クロルフェニラミンを飲み薬として使う場合は、眠気を生じることが問題になりますが、点鼻の場合は点眼時と同様で、全身に作用するわけではありません。眠気は気にしなくて大丈夫です。
3と4に含まれている「クロモグリク酸」は、ヒスタミンをはじめとするアレルギーを引き起こす体内物質が放出されるのを、あらかじめ抑えてくれる作用があります。そのため、発症してから使っても、効きにくいです。4に含まれている「グリチルリチン酸」には、炎症を鎮める効果がありますが、それほど作用は強くありません。どれも広く使用されてきた実績があるので、過量に使わない限りは、副作用を気にする必要はないでしょう。
一方、1〜5に含まれている「ナファゾリン」は、血管を収縮させる成分です。6に含まれている「オキシメタゾリン」も同じような血管収縮薬ですが、「ナファゾリン」よりも長時間にわたって効果が持続するという特徴が知られています。鼻づまりが起きているときは、鼻粘膜の血管が拡張して腫れたような状態になっているので、薬で血管を収縮させると、比較的即効で収まります。
しかし、これで花粉症が治ったと勘違いしてはいけません。あくまで見かけ上、一時的に鼻づまりが改善しただけであり、アレルギー反応が抑えられたわけではありません。しかも、血管が収縮すると血液循環が悪くなるので、繰り返し使っているとかえって症状が悪化することもあります。血管収縮成分を含んだ点鼻薬は、つらい鼻づまりのときに頓用するのはかまいませんが、毎日続けて常用することはお勧めしません。
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ステロイドを含む市販点鼻薬の効果・注意点
花粉症に使える、もう一種類の市販点鼻薬は、ステロイドを含んだもので、具体的には次の3製品があります。7. ナザールαAR(有効成分:ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)
8. パブロン鼻炎アタックJL(有効成分:ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)
9. フルナーゼ点鼻液(有効成分:フルチカゾンプロピオン酸エステル)
7と8は、全く同じ有効成分を含んでいるので、同じものとみなしてよいでしょう。9に含まれる有効成分は別ですが、基本的には同じステロイド類です。
「ステロイド剤は危険」と考えて使うのをためらう方がいるかもしれませんが、注意が必要なのは飲み薬の場合です。ステロイドは全身に作用すると重い副作用が現れることがあります。しかし、皮膚疾患の治療に用いられる塗り薬としてのステロイドや、喘息の治療に用いられる吸入薬のステロイドの場合は、薬が全身に作用することもありませんので、安心して使えます。点鼻薬のステロイドも同様で、過度に心配する必要はありません。
少し前までは、ステロイドの点鼻薬は、使いすぎると副作用が懸念されたことから医師の指導下で処方されるよう限られていました。しかし広く使用されて十分な実績もできたため、患者自身の判断で季節性の花粉症に対して使っても大きな問題はないと判断され、スイッチOTC化されました。私自身も長年、花粉症に悩まされていますが、ステロイドの点鼻薬が市販品で手軽に使えるようになってから、かなり助かっています。ステロイドの点鼻薬は本当に効くという実感を得ています。
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また、ステロイドの点鼻薬を使ったときに、薬液が喉や口の中までまわってきたときは、しっかりとうがいをして残らないようにしましょう。ステロイドには、免疫抑制作用があるため、喉や口の中に侵入した細菌やカビを排除する免疫のしくみが働かなくなってしまいます。そのため、声がれや口腔カンジダ症などの感染症になってしまうこともありますので、注意してください。
阿部 和穂プロフィール
薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))