写真 電子売上1億円を突破した話題の漫画『娘がいじめをしていました』(KADOKAWA刊)を手がけたしろやぎ秋吾さんの、待望の新作『娘はいじめなんてやってない』(同)が昨年11月にリリースされた。
本作も『娘がいじめをしていました』同様、小学校のいじめをテーマとした加害者と被害者の家族の心情や状況に焦点を当てながら展開される。ただ前作とは異なり、小学6年生の紫村俊介がいじめを苦に学校の屋上から飛び降りたところからストーリーが始まる衝撃的な幕開け。その後、クラスメイトの青空茜がいじめ加害者として疑われ、青空家はどんどん窮地に追い込まれていく。
「我が子がいじめの被害者・加害者だったら……」という目を背けたくなる“if”に真摯に向き合いたくなる本作。その作者のしろやぎさんに制作に至った経緯など話を聞いた。
◆「正常でまともそうな行動」できない親たち描く
──まず『娘はいじめなんてやってない』の制作に至った経緯を教えてください。
しろやぎ秋吾さん(以下、しろやぎ):担当編集さんから「『いじめられる方にも問題がある』ということはタブーなのかどうか」というテーマを提案してもらったのが始まりです。
個人的にも「前作のいじめ加害者の子どもたちのその後はどうなったのだろう?」と思うところがありました。そこで今回「過去にいじめをした、された子どもたちを新たに主人公にしては?」と思い、構想を練り始めました。
──あとがきに「今回は子供のことを信じ続ける親を描いてみようと思いました」と記されていました。いじめというテーマの中で前作とは違う作品として描くうえで、どのようなことを注意しながら構成しましたか?
しろやぎ:本作ではいじめ被害者の自殺未遂という最悪の状況から始めました。ですので、加害者側の親も被害者側の親も終始パニック状態で、「正常でまともそうな行動はしてほしくない」と思いながら描きました。
◆「娘に寄り添う」と決めたのは、親のずるさ?
──今回は前作以上に、親のいろいろな側面が描かれていた印象です。
しろやぎ:主人公(いじめの加害者と疑われる茜の母親・青空翼)が「娘に寄り添う」と言い張るシーンがありました。その背景には「もう取り返しがつかない状況から目を背けたい」「娘に不利益を与えたくない、現実逃避したい」みたいな“ずるさ”があったのかもしれません。
──前作を制作する際には、実際に当事者家族に取材されていたそうですね。本作でも、いじめに関与したお子さんやご家族に取材されたのでしょうか?
しろやぎ:今回は取材はしていません。ただ、いじめの手口やSNSでの反応は、参考にした実在の事件や出来事がいくつかあります。
◆全員、根が悪人とは思われないよう描いた
──青空家、柴村家、それぞれの夫婦の会話もとてもリアルに感じました。
しろやぎ:状況が決まればセリフは出てきやすいのですが、夫婦の何気ない日常会話などは考えるのが難しいですね。
──会話といえば、本作は心の声が多く、そのキャラの心情が描かれるシーンが珍しくありませんでした。心の声を決めるうえで注意したことはありますか?
しろやぎ:実はそこまで深くキャラクターの背景を決めて描いてはいないような気がします。荒い言葉が出てきやすい状況なので、「全部のキャラクターが根は悪くない人にしよう」とは気をつけました。
==========
いじめの被害者、加害者、傍観者、それぞれの親たちの複雑な感情が、読者の心に迫るリアルさで描かれた本作。しろやぎさんの絶妙なバランス感覚があったからこそ、各登場人物の視点でいじめについて考えることができるのだろう。
<取材・文/望月悠木 漫画/しろやぎ秋吾>
【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki