※画像はイメージです2025年4月、新年度に入り多くの新卒社員が気持ちも新たに入社した。そんななか、退職代行モームリのXアカウントが4月3日「速報です。本日の依頼77件中なんと18名が2025年卒の新卒の方です。」と投稿し、話題を呼んでいる。
入社後、即退職という事態は近年増え続けているが、現在、人事担当者を悩ませているのが「入社前逃亡」。4月に入社予定だった学生たちが、内定辞退するケースが続出していたというのだ。入社前なのになぜ“逃亡”するのか。そこには、深刻な人手不足と若者の仕事観の変化があった――。
◆“入社前逃亡”された人事が語る、怒りを覚えた新卒採用事情
採用を担当する人事は、“入社前逃亡”の一番の被害者と言っても過言ではない。
「辞退の連絡を聞いた電話を切った後、脱力感がすごかったですわ……」と語るのは、関西地方の調剤薬局を展開する会社で人事を務める矢島秀雄さん(仮名・49歳)。
今年の3月に入ってから内定辞退の申し出が2件あったという。
「一人は『より高待遇の会社に行きたい』という話での辞退でした。ウチも初任給は業界平均より高いほうですが、もう一つの内定先が直前になって給与を上げたみたいなんです。
2人目は本人の父親から電話があり、『こんなひどい会社にウチの娘を預けられない』と怒鳴られました。どうやら事実無根の悪い噂をネットで見たようで、こちらが説明しようにも聞く耳を持ってくれなかったです」
差し迫った時期の内定辞退により、社内にはさまざまな影響も出ているそうだ。
「15人採用予定のうちの2人だったので人員計画への影響も大きいし、準備していたものも全部白紙に。この2人は昔から付き合いのある大学の研究室からの紹介だったので、教授に『勘弁してくれ』という連絡もしましたね」
矢島さんは念のため、会社からの連絡内容をすべて上司に報告したそうだが、問題はなし。学生の謎の行動に全員が不思議がっていたという。
◆「半分は内定辞退する」“内定切り”に遭う人事
大量採用の会社では、より壮絶な“内定切り”に遭っているという。IT企業の人事部に勤める横山梨沙さん(仮名・30歳)は、相次ぐ内定辞退に疲弊を隠せない様子だ。
「私の会社は全体の採用目標が400人なんですが、最近では辞退や未承諾を見越して1000人に内定を出しています。入社日の前日に退職代行から辞退の連絡が来たときは、衝撃的すぎて笑うしかありませんでした」
取材に丁寧に答えてくれつつも、横山さんの口調からは怒りが溢れ出していた。
「会社から内定を出して、入社承諾書を送った後に辞退するのは本当にやめてほしい。法的拘束力が弱いとはいえ、会社と交わす契約のようなものですよ。社内のいろんな部署に迷惑がかかりますし、入社直前となればなおさら。承諾書の提出期日までに意向が決まらないなら、言ってくれればこちらも待つのに……」
◆大卒は内定辞退者があまりに多い?
内定辞退が相次いだことにより、採用方針が変わりつつある企業もあるという。製造業を営む中小企業で人事部長を務める原田大介さん(仮名・55歳)は、溜め息交じりにこう語る。
「ウチは高卒も大卒も採ってるんですが、’24年度採用から大卒の内定辞退や早期離職が増えましたね。今年度も内定を出した8人のうち、2名が1月と2月に辞退してしまった。一人は『ほかにやりたい仕事が見つかった』という理由。もう一人は『精神的に安定しない』という理由でした。もともと会話が支離滅裂なときがありましたが、研修には参加していたし、態度もよかったので意外でした」
◆「ネットがあるから頭でっかちになってしまう」
原田さんは人事歴約20年の大ベテラン。長年採用に携わってきた経験のなかで、近年は如実に学生の変化を感じているという。
「今の若いコは、仕事以外の時間の確保をかなり重要視しているようです。面接のなかで『残業はどれくらい?』や『趣味のために半休が取れるか?』といった質問が増えているのも、そういったスタンスの表れでしょう。それに、ネットを開けば良くも悪くもいろんな情報が流れてくるものだから、実際の経験よりも“頭でっかち”になっているのも感じますよ」
大卒の内定辞退が相次いだことで、原田さんの会社では次年度から高卒採用を増やす方針に切り替えるそうだ。
取材・文/週刊SPA!編集部
―[[入社前逃亡する若者]が急増中!]―