
私は最近、野球のデータにとても興味があります。NPBが公開するデータを読めるようになりたくて、データ講座に通おうと思っていたくらい。最近の野球は、データからわかることがとても多いんです。
近年、MLBではデータは集めに関して、軍事技術などを応用した機械が活躍しています。さらにデータを解析する機械も発達していますが、そんな折、素敵なニュースを目にしました。
「NPBがプレーデータを今シーズンからファンに公開へ」
報道によると、これまで球団が独自に集めていた打球の回転数、打球速度などの細かなデータを、ファンに提供することを決めたそうです。「ホークアイが収集した全12球団の各試合のプレーデータを共有し、所属選手の競技力と技能の向上、及びチームの戦術などに活用する」とのことですが、ホークアイとはいったいどんなもので、この決定はNPBにどんな影響をもたらすのでしょう。
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日本でも近年ではデータに重きが置かれるようになりましたが、MLBではデータが重視されてきた長い歴史があります。
日本では、打率や防御率などから算出されたデータには親しんできました。「数字=成績」は選手の評価の軸として大事にされましたね。ですが、海を渡ってきたセイバーメトリクスと呼ばれる統計データ分析では、「野球=27個のアウトを取るスポーツ」と定義され、打率や打点などよりも出塁率や長打率などが重視されました。
そして今、話題になっているのが、ホークアイが収集したデータの解析です。プロ野球でホークアイを導入しているヤクルトのHPによれば、ホークアイは「球場に設置した8台の専用カメラでボールなどの動きをミリ単位の正確さで捉えてリアルタイムに解析し、投球の速度・回転数・回転の方向・軌跡など、さまざまな種類のデータを取得するサービス」とあります。
投手だと投球の初速、終速、回転数、回転軸の傾き。打者なら打球速度や打球角度など、ホークアイで集めたデータを「スタットキャスト」と呼ばれるデータ解析ツールを使うことで、膨大なデータから、選手やボールの動きが高速かつ高精度に分析できます。
このスタットキャスト導入の影響として、もっとも話題になったのが「バレルゾーン」という概念の登場でしょう。
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バレルゾーンとは得点につながりやすい打撃のことで、ホームランやヒットに必要な打球角度と速度を意味しますが、スタットキャストによって打球の角度や速度などを分析した結果、本塁打になる確率が高いのは「打球速度が158km/h」「打球角度は26〜30°」の打球であることがわかったのです。
MLBの中でも高い確率で打球がバレルゾーンに入ることで知られるのが、ヤンキースの大砲アーロン・ジャッジ選手。データ分析が打撃の"正解"を示した結果、ホームランを狙うには打球角度を上げることが重要とされ、MLBの選手たちのバッティングもアッパースイング気味へと意識が変わっていきました。
これは、データ解析がもたらした大きな変化のひとつです。ちなみに、MLBが蓄積しているこれらのデータは誰でも見ることができます。
MLBには「ファングラフス」と「ベースボール・リファレンス」という2大データサイトがあり、スタッドキャストがデータ化したものがこちらで自由に見ることができます。日本でも同様のデータを蓄積していたのですがオープンにはされておらず、誰でもデータにアクセスできるという点では差がありました。
しかし今後は、自由にアクセスできることになります。DeNAのトレバー・バウアー投手は無数のデータの中から、名投手の決め球のデータを自分なりに解析してその球種を自分のものにしたように、未来のある高校生がこれから公開されるデータをもとに、同じようなことができるかもしれません。きっと日本の野球界において、とても意義があることだと思います。
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一方で、データ偏重のMLBの後を追うことを危惧する声もあります。MLBの投手は相手打者の苦手なコースなどを叩き込まれるため、データが示す苦手な球さえ投げれば安打を打たれても評価は下がらず、逆に、打者を抑えたとしてもそれが打者の得意とする球種やコースだと注意されるのだとか。
データ主義を掲げるMLBを追随することで、競技の魅力が損なわれるのではいか、という意見もあるようです。ただ、データに現れない魅力も野球にはあるはずです。現在のMLBでは、打席に立つ前の選手がベンチでタブレットを開いてデータを確認する光景が当たり前ですが、どれだけデータが揃っていても、それを扱うのは人間です。弾き出された答え以外のところにあるドラマが、私たちを楽しませてくれます。
データと上手に共存できる未来がきっとあるはずで、現在は模索の段階でもあるのでしょう。データをどう扱うか次第でプロ野球はもっと面白くなる、と私は思うのですが、みなさんはいかがでしょうか。
それではまた来週。
構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作