【F1】角田裕毅は自然体で鈴鹿に登場 レッドブルは「色が違うだけ」 「日本人初」の先に見える新しい歴史

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2025年04月04日 17:10  webスポルティーバ

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 角田裕毅がレッドブルへ──。そして日本GPをトップチームで走る。

 自身初の表彰台、いや、日本人初のF1優勝さえ視野に入る。

 そんな周囲の期待をよそに、角田本人はふだんと変わらない様子で鈴鹿サーキットへやって来た。違うのはチームウェアだけで、不思議と気分は何も違わないと角田は言う。

「日本GPも楽しみですし、鈴鹿を走るのも楽しみにしていますけど、本当に普通な感じで(レッドブルで走るということに関しては)違いはまったく感じませんし、特に何もないです。サーキットに入った時も、レーシングブルズにいる時と同じような感覚でしたし、まったく変わらないですね。つまらなくてすいません(笑)」

 中国GPのあと、すでにイギリスのミルトン・キーンズのファクトリーでシミュレーター作業とエンジニアたちとのミーティングをこなし、日本にやって来てホンダやレッドブルのイベントを忙しくこなしてきた。

「最初に電話がかかってきたのはクリスチャン・ホーナー代表からで、もともとレーシングブルズのシミュレーター作業のためにイギリスに行く予定だったんですけど、『その(昇格の)可能性があるから準備しておいてほしい』ということでした。

 それで当初、シミュレーターは1日の予定だったんですけど、イギリス滞在を延ばして、ホーナーとも会って正式に聞きました。僕としては考える時間もほとんどなかったんですけど、トップチームからオファーをもらえるのはなかなかないことですし、こういう機会も人生でなかなかないと思うので、『承諾します』と答えました」

 この間、ずっと角田の周囲にいて行動をともにしてきたパーソナルアシスタントの平松雄大も、角田はふだんとまったく変わらない様子だったという。

「本人はいたって変わりがありません。周りが表彰台とか騒いでいるだけで、本人は『クルマの色が違うだけ』という感じ。乗ってみないとどうにもならないし、乗ってベストを尽くすだけだと考えているみたいです」

【レッドブルも「僕と同じ考え方」】

 周囲は表彰台や初優勝の期待で盛り上がりながらも、レッドブルの難しいマシン特性への懸念も抱く。しかし、角田自身はあまりの急展開にまだ現実味がなく、実際に乗ってみなければわからないマシンのことをあれこれ考えても仕方がない、という姿勢だ。ある意味でそれは、乗ってしまえばなんとかなるという自信の表われでもあるのだろう。

 その自信の裏づけになっているのは、日本に来るまでにこなしてきた2日間のシミュレーター作業だ。さまざまなセットアップを試してマシンの挙動に対する対処法を把握したことで、見えていない部分や不安な要素はないと断言する。

「ないですね。シミュレーターを2日間やったんですけど、いろんなセットアップを試して、かなりよかったと思います。シミュレーター上では限界もありますし、コース上でその動きがそのまま(実車に)出るとも思って走っていないです。

 そういう(マシンの感触を把握する)ことよりも、マシンのリアがナーバスだった時にどういうセットアップが使えるかとか、フロントが弱かった時にどういうセットアップが使えるのか、ということをいろいろと試しながらやっていました。(マシンを学ぶというのとは)違う考え方で作業をしてきました。

 あとはエンジニアのほうがこのマシンに精通しているのだから、僕は『マシンが今、こういう動きをしているから、こういうマシンにしたい』ということを伝えて、あとはエンジニアに任せて、そういう動きにテイラーメイドしてもらうようにするつもりです」

 レッドブルとしても、そのセットアップ作業のなかでマイルドな方向へ振って、ドライバーが自信を持って限界まで攻められるマシンにすべきではないかと考えている。角田自身もレーシングブルズで親しんできたマシン作りをトライした結果、非常にいい反応が得られたという。

「レッドブルも僕と同じ考え方を持っていたのもあって、シミュレーター上で僕が作りたかったクルマの方向性を試した時にマシンバランスがすごくよくなって、全体的なパフォーマンスも上がったんです。

 それをマックス(・フェルスタッペン)も試したら、けっこうフィーリングがよくて今までで一番いいセットアップだったようなので、今週末はマックスも僕寄りのセットアップでスタートすると聞いています。そういう(チームへのフィードバックという)意味では、いいスタートが切れたのかなと思います」

【まずはポイント獲得なら満足】

 表彰台や優勝はあまり想像していない、と角田は言う。それはあくまで「夢」であって、現時点での具体的な「目標」ではない。マシンのポテンシャルも、自分がそのポテンシャルをフルに引き出せるかどうかも、まったくの未知数だからだ。

「う〜ん、そう期待していただいているのはうれしいですけど、あんまり考えてなかったです(笑)。カラーリング(チーム)が変わって、そのクルマでパフォーマンスを発揮できるようになるまで、多少は時間も必要だと思います。だけど、自分が気持ちよく走れるようになってパフォーマンスを最大限に引き出せた時に、そのチャンスが巡ってくると思います。

 だから、まず鈴鹿は限られた時間のなかでどれだけクルマを理解して、FP1から徐々にクルマのパフォーマンスを引き出せるかが重要です、まずはQ3とポイント獲得ができれば満足のいく結果だと思います。それよりも上の表彰台を目指すということは、まだあんまり頭のなかにないですね。もちろん、そうなったらうれしいですけどね」

 日本人として初めて前年度にタイトルを獲得したトップチームのシートに座り、チャンピオンドライバーと組む。そんな歴史的な瞬間に、我々は立ち会っている。

 しかし当の本人は、拍子抜けするほど当たり前のようにそこにいて、当たり前のようにマシンやエンジニアたちと触れあっている。肩に力が入りすぎたところもなければ、本当に自然体で、地に足を着け、フリー走行から予選・決勝へと一歩ずつ歩を進めていこうとしている。

 レッドブルに乗って戦うことが、角田のなかではなんら特別なことではなく、自然なことのように感じられる。

 その姿を目の当たりにして思った。

 きっと大丈夫、角田裕毅ならやってくれる。我々日本のファンに、新しい歴史の1ページを見せてくれるだろう。

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