
『スターズ・オン・アイス2025』前編(全3回)
【浅田真央が9年ぶりの出演】
4月4日、大阪。東和薬品RACTABドームでは、アイスショー『スターズ・オン・アイス』の記者会見が行なわれていた。壇上にはそうそうたるメンバーがそろっていた。
なかでも浅田真央(34歳)は、晴れやかで明るく、たたずむだけで目立っていた。
「私は9年ぶりの『スターズ・オン・アイス』の出演になります。今回は、同世代でずっと競技で頑張ってきた仲間だけでなく、テレビで見ている現役スケーターたちもいて、一緒に滑れるのがすごく楽しみです!」
浅田は朗らかな声で言った。華やかな印象を与えるのは、愛らしい表情の変化で、あたりが自然と明るくなるからか。単なる容姿の問題ではなく、フィギュアスケーターとして向き合ってきた人生にまぶしいほどの輝きがあるのだ。
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会見後の記念撮影、浅田が坂本花織、島田麻央というふたりの現役トップスケーターに挟まれる姿は、彼女の歴史と今を浮き彫りにしたーー。
【名前を受け継いだ16歳の新星と初共演】
「島田麻央選手のお母さんが、私のことを応援してくれていたみたいで、『まお』という名前をつけたというのはニュースで知っていました。今回、会えるのを楽しみにしていて。輝くトップスケーターの皆さんと、スペシャルな時間を過ごせるように」
浅田は、昨年12月の全日本選手権で坂本に次いで2位になった16歳の新星、島田について語った。
それに対し、壇上で隣に座っていた島田はリスペクトを込めてこう話している。
「(浅田に)ずっと憧れ続けてきて、同じアイスショーに出られると思っていなかったので、すごくうれしいです。なかなか生で演技を見られないので、貴重な機会を大切にしたいと思います」
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会場では、関係者から優しい笑みが漏れた。生で演技を見たことがない、というほどの世代の差。そこには月日の流れが横たわる。
浅田は、島田が生まれた2008年10月には、すでに全日本選手権を連覇し、GPファイナルで2度優勝、四大陸選手権にも優勝し、世界選手権も制覇していた。10代でフィギュアスケート界を超えたスーパースターだった。その後、五輪でも可憐な演技で、世界に名をとどろかせ、2017年4月に惜しまれつつ現役を退いている。
【麻央から真央へ聞いてみたいこと】
島田にとって、伝説的なスケーターに会えた密かな興奮があるのだろう。何しろ、彼女は自らの名前で「まお」の系譜を運命的に継いでいる。自身のキャリアの指標にもなるはずだった。そこで報道陣から、「浅田さんに聞いてみたいことは?」と問われた島田は、とつとつとした口調ながらも、芯を食う質問を投げかけている。
「いろいろと聞いてみたいことはあるんですけど......ひとつは、初めての五輪から金メダルを狙う、というのはどんな気持ちで挑んだのか。そういうのを聞いてみたいなって」
これに笑って返せるのが、浅田という人物の器量だ。
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「(そういうやりとりが)きっと来るなって思っていました(笑)。私が最初の五輪は、19歳の時でした。子どもの頃から夢見ていた大会だったので、緊張もしたと思うんですが、五輪は夢の舞台だったから、最初は楽しかった思い出がありますね。だから、初舞台は楽しんでもらいたいって思います」
浅田のアドバイスに、島田は納得したように「ありがとうございます」と丁寧に返していた。
諸行無常、時代はうつろう。しかし、浅田はフィギュアスケート界の昨日と明日をつなぐ。不世出のスケーターと言えるだろう。
【かなだい、友野一希とのスペシャルナンバーを披露】
今回の『スターズ・オン・アイス』で、浅田は高橋大輔、村元哉中、友野一希と4人のコラボ曲『Silhouette(シルエット)』を披露するという。時を超えた物語を演出。熟練のスケーティングが織りなす、スペシャルナンバーだ。
会見後のサブリンクで浅田は、高橋とのパートを熱心に仕上げていた。浅田と対をなすように日本のフィギュアスケートを牽引してきた高橋と息が合う瞬間は見ものだろう。アイスダンスを経て、フィギュアスケーターとして誰も立てない境地に立った高橋にリードされながら、浅田が輝きを解き放ち、全身で「時代が映す光と影」を表現する。それは練習でさえ、特別な風景だった。
「(大阪、札幌の計)6公演、一瞬一瞬を噛み締めながら。心を込めて滑りたいと思っています!」
浅田は熱っぽく語っている。その真摯さは、彼女のスケーティングと重なる。スケートに愛された渾身の滑りが、見る者の心を震わせるのだ。
4月5、6日、『スターズ・オン・アイス』は大阪で連日、開催される。その後、札幌でも4月12、13日と公演予定だ。
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