<柔道:全日本選抜体重別選手権>◇5日◇1日目◇男女7階級◇福岡国際センター
女子52キロ級の阿部詩(24=パーク24)が笑顔を取り戻した。
2回戦敗退で2連覇を逃した昨夏パリ五輪後の国内復帰戦で、大会初優勝。決勝で大森生純(JR東日本)に延長戦で一本勝ち。28年ロサンゼルス五輪代表を争う同い年を退け、世界選手権(6月、ブダペスト)へ大きく前進した。男子のパリ代表勢は、兄で66キロ級2連覇の阿部一二三(27=パーク24)が準決勝を棄権。60キロ級で銅メダルの永山竜樹(パーク24)と81キロ級でV2の永瀬貴規(旭化成)が優勝を逃した。
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復活への長い6秒間だった。決勝の延長戦、突入1分17秒。右腕は相手の背中を、右足は左足を捉えた。のけぞらせた。しかし倒せない。「このワンチャンスを逃したらダメ」。意を決して左足一本で前進した。1分23秒、宙に浮かせ、背中から畳にたたきつけた。優勝。実は初めてだ。座り込んでガッツポーズし「1歩を踏み出せた」。やっと明るい笑顔を取り戻した。
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8カ月超、苦しかった。2連覇を狙った昨年7月の五輪で2回戦敗退。「パリの慟哭(どうこく)」とも呼ばれ、号泣する姿に厳しい見方や声も寄せられた。
「情報を入れるのが嫌だった。一切、テレビも見ずに、ぼうぜんとしていた。全てを放り投げた日々を送っていた」。気持ちの整理がつくと、悔しさがこみ上げた。「これは自分じゃない」と改心。10月中旬から練習を再開し「畳の上で戦うことが一番の生きがい」と気付いた。2月の復帰戦グランドスラム・バクー大会ではオール一本勝ちで優勝。着実に歩みを進めた。
この日も、苦しかった。1回戦、準決勝と辛勝。決勝は28年へのライバルと目される大森と相まみえた。中学時代に近畿大会で対戦した経験はあるが「打倒・阿部詩」の色がより濃かった。「後ろにひっくり返って負けている。後ろを狙われることが多かった」。パリで、後に金メダルをつかむケルディヨロワ(ウズベキスタン)に谷落としで一本負けした記憶がよみがえった。恐怖心は拭えない。「なくなることは、たぶんない。取っ払ってやるしかない」。気持ちを奮い立たせて、日本一に到達した。
次は「世界一」の称号を奪い返す。今季目標は、過去4度Vの世界選手権での復活優勝、と掲げてきた。「まだ100%ではない」と自覚しつつ「世界選手権へ、いい1歩になった」と喜んだ。最高の結果で切符獲得を濃厚にした。ただ、見据えるは、さらに先。「ロスへの道の第1歩になった。もっともっと強くなりたい」。正真正銘の“完全復活”を3年後、あの畳の上で果たす。【飯岡大暉】
◆阿部詩と選抜体重別 17年の兵庫・夙川学院高2年時に初出場し、準決勝で志々目愛に敗れて3位だった。18年の3年時は準決勝で角田夏実に敗れ、またも3位。22年は負傷のため棄権して3度目の3位に。五輪代表を目指して国際大会中心に出場したため、意外にも今回が初Vとなった。対海外勢は、ほぼ無敵。16年のシニアデビューから19年まで48連勝。優勝した21年東京五輪からパリ五輪の2回戦までも無敗だった。
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○…阿部一二三が負傷のため欠場した。2連覇したパリ五輪からの復帰戦だったが、優勢勝ちした1回戦で負傷し、準決勝を前に「左肘に違和感があった」と棄権を決断した。「すごく悪い状況ではない。無理しないように」とも強調した。体重無差別の全日本選手権(4月29日、日本武道館)に出場予定だが「様子を見ながら。世界選手権まで2カ月を切っているので」と慎重に判断する姿勢も見せた。
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