「“有機野菜だから安心”は間違い」食の専門家が断言する“意識高い人”の思い込みと蔓延する“デマ”

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2025年04月06日 06:10  週刊女性PRIME

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週刊女性PRIME

※写真はイメージです

 今年10月から、東京・品川区が小中学校の給食で使う全野菜を有機(オーガニック)野菜に切り替える計画が発表され、話題になった。「安全のため」「給食の質の向上」がその理由だそうだが……。

農水省も「安心・安全」とは言っていない

有機野菜だから安心・安全というのは間違い。国の規格である『有機JASマーク』があっても、食品としての安全性を保証しているわけではありません。健康的なイメージだけで食品を選んでいると“損”をする可能性も」

 と語るのは、科学ジャーナリストの松永和紀さん。

「“農薬=身体に毒”というイメージを持つ人もいますが、農薬は国の基準で健康被害がないとされる量が用いられています。そもそも有機農業とは、化学合成肥料や農薬、遺伝子組み換え技術を利用せず、環境への負荷を抑えた方法で行う農業のこと。約40種類の農薬は使えるため、完全無農薬とは異なります」(松永さん、以下同)

 通常使われる化学合成農薬についても、今と昔で種類が異なる。使用量も厳しく定められ、残留量もごくわずかで健康的な影響もない。

「むしろ適切に使用したほうが栽培中や保管中にカビが発生し、食中毒などの健康被害を及ぼす物質(カビ毒)が食品に残ることを防げます。病害虫の多い日本で有機農業を大規模に行うのは、難しいのが現状です」

 また、有機食品のほうが栄養価が高い、おいしいというのが“定説”だが……。

イギリスや欧州でまとめられた報告書では、従来の方法で生産された食品と有機食品を比べ、違いがないとしています。それに『農薬や肥料のせいで土が痩せ、今の野菜は栄養がない』とする意見もありますが、それも根拠がありません」

 例えば、昔の苦味の強いピーマンは現在の消費者に好まれず、サラッとした食べやすいものを選ぶ傾向にあり、需要に合わせて改良された品種が市場を占めている。

品種が違えば味だけでなく栄養価も変わりますし、それは有機であるなしとは無関係です。『おいしさ』は品種以外にも栽培方法、収穫時期、鮮度、調理方法などで変わり、主観も入ってくるので一概には言えません」

 有機農作物を飼料として家畜に与えて育てた「有機畜産物」も徐々に増えているが、日本で有機栽培の飼料を確保するのは難しく、輸入された飼料を用いざるを得ない。環境負荷をできるだけ低減するという有機農業の本来の目的とは齟齬(そご)が生じる。

「大量生産が難しい有機食品は一般的な方法で育てた野菜や畜産物より価格が高め。それでも理念に共感し、『地球にやさしい』という観点で有機食品を選ぶのはいいことだと思います。ただ、一般的な農産物と比べて“健康にいい”とは言いきれないのです」

健康神話の落とし穴!? 玄米は発がんリスクも

 健康や美容にいいとされる食品のひとつに、玄米や全粒粉、きび砂糖といった未精製の「茶色い食品」がある。

玄米に関しては、白米よりも血糖値が上がりにくいという科学的根拠があります。食物繊維も同じ量の白米と比べ4.7倍、ビタミンやミネラルが豊富。ただし、玄米を消化しづらい体質の人もいて、摂取により下痢や腹痛を起こすことも。

 また、玄米の胚芽(はいが)やぬか部分には『無機ヒ素』が含まれています。食品安全委員会は『健康被害は認められない』としていますが、多く摂取した場合のリスクについては見解が分かれます

 さまざまな側面があるため、万人にとって身体にいいとは言い難い面もあるのだ。

「味の好みで玄米を選ぶのはいいと思いますが、嫌いなのに我慢して食べ続けることもないでしょう。その代わり、全粒粉小麦や野菜などで食物繊維を積極的にとることをおすすめします」 

 茶色い砂糖の代表格は、きび砂糖、黒糖、三温糖だ。

「確かに白砂糖と比べればミネラルが多めですが、ごくわずか。ほとんどが糖分なので、白砂糖より茶色い砂糖のほうが血糖値が上がりにくいということもありません。なお、白砂糖は結晶化して白く見えるだけで『漂白されている』というのはデマです」

遺伝子組み換え食品の事故は30年間で0件

 一方で、「身体に悪い」イメージが定着し、悪者扱いされている食品も多い。その代表が遺伝子組み換え食品。

遺伝子組み換えは品種改良の技術のひとつ。もともとは医薬品の開発に利用されていました。遺伝子を別の種に組み込むと聞くと、不自然なものを作り出すように思えますが、生物の進化の過程でも自然に起きていたことで、決して珍しいことではありません

 例えば、遺伝子組み換えで作られた、特定の除草剤が効かない作物は、除草剤をまいたとき、ほかの雑草は枯れるがその作物が残るため、生産者が雑草を抜く手間が省ける。

 現在は北米や南米で遺伝子組み換えされた大豆やとうもろこし、菜種などが大量生産され、日本に輸入されている。地球温暖化によって米の生産に影響が出ているが、遺伝子組み換えで気候変動に強い稲の開発も進んでいる。

「こうした技術の進歩が、安定した食品の供給につながっているのです。また、日本では国が安全性を評価し、組み換えなしの食品と同等に安全とされたものだけを認めています。原材料の表示の基準も厳しくなりました」

 豆腐や納豆には原材料に遺伝子組み換えについての表示義務があるものの、油や液糖、しょうゆなどでは表示義務がない。知らない間に口にしていることは往々にしてありそうだが、過剰な心配はいらない、と松永さん。

「市場に出回って30年がたちますが、全世界で健康被害は1件も報告されていません。日本では食品安全委員会がリスク評価をしてアレルギーなども検討し、問題ないと認められた食品しか流通していません。『老化を促進したり、食物アレルギーの増加を引き起こす』という説もあるようですが、これも根拠はゼロ」

 ほかにも多くの食品が過去に流布されたイメージだけでジャッジされていることも多い。どんなものにもいい面と悪い面、注意すべき点と気にするほどでもない点がある。一部分だけのイメージで判断せず、生活スタイルや価格、味など総合的に見て、どれが自分に合っているかで食品を選ぶ、というのが正解だと松永さんは言う。

甘味料を含む清涼飲料水をよく飲む人は、それに合う脂質や塩分過多の食事を好む傾向が。食品ではなく、栄養バランスが悪い食習慣が問題の本質だと思うのです

食品に過敏になるより“食習慣”に注意

「日本人は料理を手作りすることへのこだわりが強く、それが加工食品や添加物の悪いイメージが払拭されない一因と考えています。安全で効率的に生活するためにも、適度に活用してもいいのでは」

 松永さんが長年の取材から感じるのは、食品の安全性が脅かされるのは事業者側よりも消費者の段階が実は多い、ということ。

例えば、賞味期限は開封前までが有効で、開封したら無効です。しかし、開封したあとも『この日付まで食べられる』と勘違いしている人は意外に多い。保存方法も表示どおりに守られておらず、結果、アレルギーや食中毒になることもあります

 食の健康情報にはつい飛びつきがちだが、出典元を必ず確認しよう。

「エビデンスの信頼性にもバラつきが。国など公の信頼できる研究機関からであれば信頼度は高いと考えます。新しい研究で覆されることもあるので情報更新も必須です」

教えてくれたのは……松永和紀さん●京都大学大学院農学研究科修士課程修了。毎日新聞の記者を経て独立。食品の安全性や環境への影響などを専門分野として執筆活動をする。著書に『食品の「これ、買うべき?」がわかる本』(大和書房)他。

取材・文/遊佐信子

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