小室哲哉&氷川きよし 2025年4月6日(日)よりフジテレビほかにてスタートする『ゲゲゲの鬼太郎 私の愛した歴代ゲゲゲ』は、『ゲゲゲの鬼太郎』の生みの親である水木しげるの没後10年を記念して放送されるTVアニメ。過去に放送されたシリーズの中から毎週1話ずつ、厳選された名作エピソードがオンエアされる。
そんな記念すべき作品のエンディングテーマで、氷川きよし×小室哲哉という奇跡のタッグが実現! 小室が楽曲プロデュースした「Party of Monsters」は本作の魅力を引き出すだけでなく、これまでの氷川のイメージをガラリと覆す楽曲となっている。
この度、氷川と小室の2人にインタビューを実施。異例のタッグが生まれた経緯や、楽曲へ込めた思い、さらに『ゲゲゲの鬼太郎』の魅力も語ってもらった。
[取材・文=米田果織 撮影=You Ishii]
■氷川きよし×小室哲哉、アニメタイアップで満を持してのタッグが実現
――タッグを組むことが決まっての率直なお気持ちを聞かせてください。
氷川:憧れの小室哲哉さんの楽曲を歌えることとなり、とてもうれしく思い、感動しています。小室さんの作品は、私自身の青春時代に“生きる力”をくださいました。小室さんの作品を聞くことで毎日「頑張ろう」と思えていたので、今回、自分が歌い手となって小室さんの曲を歌うことで、それを聞いた人たちの力になれたら。たくさんの方に届いてくれたらいいなと思っています。
小室:KIINA.はTM NETWORKのメンバー木根さんと長く交流があり、彼伝いで「KIINA.は洋楽も好きなんだよ」などいろいろな話を聞いていました。「いつか一緒に何かできないか」という話も上がったことがあります。
氷川:本当にありがたいことです……! 昨年はコンサートも見に来てくださって。
小室:そうなんです。実はタッグの依頼はかなり前から上がっていて、TM NETWORK の「SEVEN DAYS WAR」をカバーしていたり、「ボヘミアン・ラプソディ」を日本語詞で歌っていたりして、「ジャンルが幅広いな」「なんでも歌えるじゃん」と思っていました。たくさんの可能性があったのですが、僕自身が昨年、アニメタイアップの仕事を多く受けていたこともあり「アニメタイアップで一緒にできたら」とお願いし、今回のタッグが実現しました。
――なるほど、満を持してのタッグ実現だったのですね。長く可能性を探られていたこともあって、楽曲制作もスムーズだったのでは?
小室:そうですね。いろいろと考えていたからこそ、楽曲が完成してからは「かなりバッチリハマった楽曲ができたな」と手応えを感じました。……が、制作においてはすぐにパッと浮かんできたわけではありませんでした。1ヵ月くらい悩み考えましたね。
――どんなところに悩まれたのでしょう?
小室:「僕っぽい」と「今っぽい」の“真ん中”が狙えたら、と思ったんです。最初に頭に浮かんだのはマイケル・ジャクソンの「スリラー」で、そこにラップも織り交ぜたいと思いました。
氷川:Music Videoでは、かなり激しい振りも披露しているんですよ。つい先日、撮影を行ったのですが、動悸がするほどでした(笑)。
小室:そうなの(笑)!? でも確かに、激しい振りが合いそうな楽曲に仕上がったと思っています。題材もわかりやすく楽しいものになっているので。
氷川:ハロウィンとかに踊ってもらえたらうれしいですよね。
■アニメ×音楽の力― 2人が楽曲に込めた思い
――『ゲゲゲの鬼太郎 私の愛した歴代ゲゲゲ』のエンディングテーマ、という点に関しての思いも聞かせてください。
氷川:昨年8月まで活動を休止しており、この作品が復帰後初の新曲となります。私自身、子供の頃に『ゲゲゲの鬼太郎』を見ていたこともあり、そのエンディングテーマでスタートを切れるのはとても光栄なことです。鬼太郎が背中を押してくれているような感じがします。そんな鬼太郎と、小室さんの力もお借りして、また自分の歌の世界が広がったらいいなと思いました。
――演歌ではない楽曲でスタートすることも、世界を広げる1つの要素になっていると感じます。
氷川:本当にそうだと思います。きっと「演歌で来る」と思っている人が多かったと思うのですが、裏切りも大事ですよね! 良いスタートが切れそうで、ワクワクしています。
――小室さんらしいダンスサウンドが活きた楽曲となっています。最初に楽曲を聞いたとき、どんな感想を持ちましたか?
氷川:これまで歌ったことのない作品だったので、「これは挑戦になるな」と思いました。小室さんには長時間のレコーディングにもお付き合いいただき、その熱量に自分も応えたいと思い、現場ではたくさんの“思いのキャッチボール”をさせてもらいましたね。それが積み重なるごとにエネルギーへと変わっていき、良い作品へと繋がったように感じます。とても楽しい時間でした。
実は、『ドラゴンボール超』の主題歌「限界突破×サバイバー」を任せていただいたときも、「これは自分には歌えないかもしれない」と思ったんです。ただ、「歌えない!」「無理!」と言っていたほうが、逆によかったりもするんですよね(笑)。そう言っていたほうが歌えるので、それが自分の中のジンクスみたいなものになっています。もう47歳なのですが、いつまでも挑戦することを止めないでおこうと思いました。
――具体的にどのようなキャッチボールをされたのでしょう。
小室:演歌は音符が長いのに対し、今回の曲は音符が短いです。KIINA.が何十年かけて習得してきたプロの技が使えない部分が多く、そのギャップをどうすればいいか模索し合いました。どれがハマるかパターンを変えてみたり、もう1つバージョンを作ってみたり、ラップ調じゃないメロディーにしてみたり。結果的にインパクトを重視して、今の完成形となりました。
氷川:歌詞の内容的にも、私が皆さんに伝えたいことがあり、こちらのパターンで決まってよかったと思っています。込めたメッセージを受け取ってもらえたらうれしいですね。
――楽曲制作において、『ゲゲゲの鬼太郎』の要素を拾ったのはどこになるのでしょうか?
小室:『ゲゲゲの鬼太郎』の主人公・鬼太郎は、妖怪なのに妖怪を倒すという、アンチヒーロー的要素を持っています。制作前に水木しげる先生のことを調べる中で、戦争を体験したことによって善悪の基準がおかしくなっていると語られているものがあり、そういったことが作品に投影されていると感じました。「人間がよくて妖怪が悪い」ということは決してなくて、善悪は状況によって変わることがあると伝えたかったのではないでしょうか。楽曲でもそう伝えているつもりなので、聞いてくれた皆さんが感じ取ってくれたらいいなと思っています。
――小室さんはこれまでも何度かアニソンを手掛けてきており、氷川さんも「限界突破×サバイバー」でアニサマに2度出演するなど、アニメに関わりが深くなってきました。2人が感じる「アニソンの魅力」「アニソンの力」とは?
小室:アニメは今でこそ細かく動くし、「作画がすごい」と話題になることも多いですが、昔は声優さんと音楽の力で、あまり動かない絵に情緒を乗せていたと思うんです。今も、実写以上に“音の力”が必要になってくるのがアニメだと感じています。また、作品のイメージを作る要素は音楽が大きく担っている気がしていて、以前に僕が担当したアニメ『シティーハンター』の主題歌「GET WILD」が代表例ですよね。今ではあまり聞かなくなりましたが、昔は曲中に何度もアニメタイトルや必殺技のフレーズが出てきていました。そういう意味で、アニソンは作品を想起させる一番の引き金的な役目をしていると思います。
氷川:アニメの主人公って憧れますよね。負けそうになっても、最後は必ず勝つじゃないですか。壁にぶち当たってもめげずに立ち上がり、勝つまで何度も挑戦を諦めない主人公のように、私自身もなりたいと思っています。そして、作品の要素だけでなく、主人公や登場人物の人生観や、ロマン、夢、憧れのすべてが集約されているのがアニメの主題歌だと思います。他のジャンルにはない、アニソンにしかない魅力はそこにあると感じます。
『ゲゲゲの鬼太郎 私の愛した歴代ゲゲゲ』
4月6日(日)スタート
毎週(日)あさ9時〜9時30分 フジテレビほか
※地域によって放送日時が異なります
(C)水木プロ・東映アニメーション