ニコンのZ5IIってどんなカメラ? 春の鎌倉と夜桜と子猫を撮って確かめた【道越一郎のカットエッジ】

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2025年04月06日 18:30  BCN+R

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Z5IIで猫カフェ撮影に挑戦。かなり厳しい戦いを強いられたが、かわいい子猫が撮れた
 ニコンは4月3日、フルサイズのミラーレスカメラ新製品「Z5II」を発表した。短期間ながら試用する機会があったので、鎌倉と中野をぶらぶら歩いて撮影。ファーストインプレッションをまとめた。まず、カメラそのものの印象から。質感はとてもいい。ボディーのみで税込み25万8500円と決して安価なカメラではない。当たり前といえば当たり前だが、「ブツ」としてのカメラの存在感がしっかりある。前面、背面、上面カバーがマグネシウム合金。これが「効いている」。それでいてボディーのみの重量は620gと軽い。カメラは持ち歩いて撮ってナンボ。軽さは正義だ。ボタンやダイヤルの配置、操作感も、撮影の道具としての配慮が感じられる。シャッター音は控え目でやや堅めの「コシャ」という感じの音。個人的には撮影していると気分が上がる「いい音」だ。ファインダーは明るく、背面モニターを見て撮るより、ファインダーを覗いて撮るほうが「撮ってる感」があって楽しい。

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 新製品を首からかけて、ちょっとした所用ついでに鎌倉を歩いた。訪れるのは5年ぶりぐらいだ。駅にほど近い古道具屋に、目を引く鶏の置物があった。なぜかこんなのを見つけると撮りたくなる。カメラを構えると、鳥の目のところにピント枠が行く。Z5IIは9種類の被写体検出に対応。これも一応、鳥として認識しているらしい。どんなアルゴリズムなのか、ちょっとだけ気になる。こんな置物でも、やっぱりピントは目にあってほしいわけで、その点は助かる。やや逆光気味だったが、難なくまあまあの露出になっている。もう少し明るく撮れてもよかったとは思うが、そこは好みだ。

 しばらく歩くと「レストラン 古我邸」を見つけた。文化庁が定める「日本遺産」に指定されている建物だという。1916年に建てられた別荘で鎌倉文学館、旧華頂宮邸と並ぶ鎌倉三大洋館の一つだとか。結婚式なんかもできるらしい。小さな丘に建つ洋館は雰囲気がある。見学に来ていた小学生ぐらいの女の子が思わず「わぁ」と声を上げるほど、美しいたたずまい。ついシャッターを切った。建物を拡大してみると、広い前庭の上に立つ建物の屋根や煙突の質感もしっかり記録されていた。空の青もいい。ただ、残念ながら、ここの桜はまだだった。

 鎌倉といえば、高徳院の大仏だ。さすが鎌倉随一の観光地。半分以上は海外からの観光客で占めていた。何を思ったか、ここでは露出を間違えてしまい、露出補正を-1.3EVにして撮影。かなり暗く写してしまった。やむを得ず、JPEGファイルを現像ソフトで少し明るく修正した。それでも、仏像表面の質感や、頭の螺髪(らほつ)のブツブツ感もしっかり出ている。カメラもキットレンズも軽いので、こうした観光地で撮影するにも、気軽にパシャパシャと撮れるのが気持ちいい。

 鎌倉には和風の小物を売っている店が多く、眺めているだけでも楽しい。カラフルな巾着袋を並べて売っているカゴが目についた。ここで、いきなりISOを2万8800まで上げて撮影。高感度性能を試す。Z5IIは最高ISO感度が6万4000。ただ、そこまで感度を上げて撮ることはあまりないだろうと、この辺にしておいた。シャッタースピードは8000分の1秒。ピントが来ている白っぽい巾着袋の質感はしっかりと表現されている。さすがフルサイズ。これくらい感度を上げても「塗り絵」にはならずびくともしない。このあたりなら常用しても問題なさそうだ。

 Z5IIは新たに裏面照射センサーを搭載し、暗所撮影に強くなったという。そこで、夜の撮影も試した。桜祭の提灯が並ぶ中野駅の駅前広場。提灯から放つピンク色の光が、天井に反射して面白かったので撮ってみた。ISOは1800。オートフォーカスも問題なし。シャッタースピードは30分の1秒。中央7.5段の手ブレ補正に助けられ、手ブレもなかった。手持ちで1〜2秒でも行けそうな勢いだ。手前の暗がりにある路上禁煙のマークから、提灯の明るい部分までがっつり写っている。確かに暗所でも気兼ねなく撮れる実力がありそうだ。

 中野通は桜の名所。中野駅から北上し哲学堂までの間は特にきれいだ。ここ数年、倒木の恐れありとして老木がずいぶん伐採されてしまった。以前は延々と続く桜のトンネルが楽しめたものだが、その距離はずいぶん短くなってしまった。現在、桜のトンネルが楽しめるのは、早稲田通との交差点あたりが一番だろう。いい感じでライトアップされていて、夜桜を楽しんだ。それにしても、せっかくいいカメラを使っても、夜桜をきれいに撮るのは本当に難しい。伝わるのは夜桜の雰囲気ぐらい。どこをどう切り取るかのセンスの問題だ。

 Z5IIはオートフォーカスのスピードがZ5比で3倍に速くなったという。そこで、動きモノを撮るべく、猫カフェに行って撮りまくってみた。結果は、新製品の長所をうまく引き出すことができず、かなり残念な歩留まりになった。やや暗めの照明に動き回る猫たち。撮影にはかなり厳しい環境だ。もちろんストロボなどの照明は使用禁止。それでも、しっかり目にはピントが来る。ただ、ちょこまか動かれるとさすがに追いつかない場面も。ピントは来ていても、猫が動くので被写体ブレが起きる。後から考えれば、シャッタースピードは遅くとも200分の1秒以上にはしておくべきだった。ISO感度を許容範囲いっぱいにまで上げ、できるだけシャッタースピードも上げて臨むのが正解だろう。かなり暗めに撮れたので、現像ソフトで明るく補正した。

 Z5IIのキャッチコピーは「さあ、どう撮ろう」だという。手にすると確かに「さあ」という気分にさせられるカメラだ。発売は4月25日。税込み市場推定価格は、ボディーのみが25万8500円。NIKKOR Z 24-50mm f4-6.3同梱のレンズキットが29万9200円。NIKKOR Z 24-200mm f4-6.3 VR同梱のレンズキットが35万8600円。標準ズームレンズキットでギリ30万円を下回った。撮像素子は2450万画素の裏面照射型C-MOSセンサー。画像処理エンジンは最新のEXPEED 7を搭載している。3000カンデラの明るいEVFを備え、背面モニターはバリアングル。低輝度時のオートフォーカス性能はZ6IIIと同等の-10EVを実現した。連写性能は毎秒14コマ。ハイスピードフレームキャプチャーで毎秒30コマの撮影が可能。撮影時の設定などが共有できる「イメージングレシピ」にも対応する。

 BCNの実売データでは、ニコンのフルサイズミラーレスカメラの中で、現在最も売れているのは「Zf」。フィルムカメラ風のレトロなデザインが受けている。価格はボディーのみで20万円台半ば。ここに、価格帯が非常に近いメインストリーム、Zシリーズのカメラが加わることになる。新製品の投入で市場拡大に成功するか、逆に2台で食い合うことになるのか、微妙なところだ。同社によれば、Zfはファッション性を気にする層向け。持っているところにも意義が見いだせる「おしゃれなカメラ」としても位置づけている、という。一方、Z5IIは道具としての使いやすさを、より追求したとしている。確かに最初のフルサイズカメラとしても十分すぎる実力を備えている。Z6IIIやZ8、あるいは頂点のZ9も気になるが、いかんせん高すぎて手が届かない、という層にも、Z5IIはぴったりのカメラだろう。久々に街ブラ撮影が堪能できたZ5IIは、より撮影を楽しむことにこだわったカメラだと実感した。(BCN・道越一郎)

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