光熱費や食品の値上げ……この春からの値上げのニュースが連日報道されている。スーパーやコンビニに行っても普段から愛用している商品を買うたびに、また値上げか、と感じることは少なくないだろう。上昇をたどる物価の一方で、たとえ給料があがってもその分、社会保険料もあがっていて、つまるところ手取りはほぼ一緒。わが家の経済に頭を悩ませる人も多いはずだ。
いかにして稼ぎを増やすべきか。給料があてにできないのならば、自分で稼ぎ出せばいい。その点で、思考の転換に気づきをもたらしてくれるのが竹内亮介『一生使えるAmazon輸入ビジネス大全』(秀和システム)だ。
著者の竹内亮介氏はAmazon輸入ビジネスの第一人者。現在、毎月安定して月収1000万円以上を稼ぎ出している。しかも、たったひとりPC1台、1日1時間程度のスキマ作業だけでだ。場所や人、時間に縛られることなく自由でストレスフリーという夢のような生活を楽しんでいる。
本当にそんなに稼げるのか? と目を疑うような話だが、竹内氏も最初から順風満帆なビジネスライフを送っていたわけではない。実は大学在籍中にお笑い芸人養成所を卒業した売れない元芸人。24歳のときに薬で重度の副作用を負い、神経的な病気を患ったことから若くして闘病生活を余儀なくされ芸人業を引退し、その後すべての職を失い、ニート、無職、引きこもりの人生ドン底状態に。散髪にも行けず、読みたい本も買えず、毎日同じスウェットを着て過ごすという悲惨な状態だったが、インターネットビジネスを知ったことをきっかけに一発奮起。実家の一室を借り、再起を果たしたという。
本書はそんな著者のAmazon輸入ビジネスの成功体験をもとにしたハウツー本。Amazon輸入ビジネスのメリットから、月収3万円、10万円、50万円、100万円、200万円、1000万円と、稼ぎたい目標金額に応じて、方法論を惜しげもなく全部掲載している。”大全”と銘打つだけあって、全472ページとかなりのボリュームだが、実際にはPC画面上の設定手順の紹介も充実していて、読みやすい。単なる成功体験自慢ではなく、各段階でのポイント、留意点を詳細に網羅しているところに、著者の真摯な人柄がうかがえる。
|
|
ビギナーなら当然、最初から読み進めるべきだが、Amazon輸入ビジネスについてある程度の知見があるのならば、最初は飛ばして月収100万円コースから読んでもいい。ビジネスマンならご存知のとおりだが、取引する金額が大きくなればなるほど、付帯する作業も多くなるもの。一見煩雑にも思えるその付帯作業のディテールまで丁寧に解説しているところに好感が持てる。
ところで、そもそもAmazon輸入ビジネスって何? という話だが、その原理原則は海外のAmazonから安く仕入れた商品を日本のAmazonで売ること。現在、世界23カ国で展開されているAmazonだが、実は同一商品が多数出品されており、売っている国によって価格がかなり異なる。その仕組みを利用して、差額分で利益を出すという「とてもシンプルで手堅く、リスクが限りなく低いビジネス」というのが著者の考え。
その根拠は、Amazonがネットショッピング市場でもっとも成長を遂げている存在であることはもちろん、個人や企業がAmazon上で商品を販売できる場所である「Amazonマーケットプレイス」や、商品の保管、注文処理、梱包、出荷・配送に関する問い合わせ、返品対応まですべてAmazonが代行してくれる販売支援サービス・FBA(フルフィルメント by Amazon)など、個人でも手間なく効率よく稼げる仕組みが整っていることだ。
簡単にいえば、Amazonが提供しているプラットフォームをフル活用して転売で儲けるということで、取引金額が大きくなるにつれて、転売から貿易に変わっていくという話。“転売”というワードにいい印象を持たない人も少なくないと思われるが、その価値について著者はこう断言している。
「ビジネスにおいて、どうやって価値を提供すればいいのかというと、『誰かがめんどくさいと思っていることを代わりにやってあげる』というのが基本パターン」「海外から商品を買うのがめんどくさい、あるいは言語の壁があるため、海外から商品を買いたくない、買えない、輸入するのが不安……こういった方のために、商品を代わりに仕入れて、日本の買いやすいAmazonで販売しているからこそ、Amazon輸入ビジネスは儲かるのです」
|
|
ゆえに、誰に対してどのような価値を提供しているのかを常に意識しながらビジネスを行うことが大切だと説いている。日常的に利用しているオンラインショッピングの仕組みを学ぶという点でも有意義な一冊だ。コロナ禍を経て、働き方や暮らし方など価値観が大きく変わった現在、商売の有り様も大きく変容したことを素直に感じることができる。
本書を読み進めていて、個人的に気づきがあったのが「先入観を捨てると稼げる」というコラム。Amazon輸入ビジネスで売るための商品リサーチをしていると当然、自分に興味関心のないジャンルの商品はスルーしがちだが、実はそこにこそビジネスチャンスがあるのだという。「自分が知らないから売れているわけではないと先入観で決めてしまう人は稼げない人」「稼げる商品が、自分の興味のあるものとは限らない。『このジャンルや商品は自分には興味がない』という考えは一度捨てて、世の中の需要を最優先に考えてみるといい」
まさに目から鱗である。
5章の「月収50万円を稼ぐための4ステップ」では季節商品で稼ぐ、6章「月収1000万円を稼ぐための3ステップ」では最初は無理な価格を提示するという海外セラーとの値引き交渉術など、各段階に応じて必要な視点やビジネススキルにも触れていて、普通にビジネス本としても有用だ。ただし、すぐに稼げるようになるわけではなく、実際には月収10万円になるまでに時間がかかるが、めげずに継続してほしいと説いているところにもリアリティがある。
とかく、日本人は与えられたことを一生懸命やるのには長けているが、仕組みづくりが苦手などと評される。そんな中で本書は、日本人の稼ぎ方に対するマインドを変える点でも非常に有意義な1冊。自分が必要な稼ぎは自分で稼ぎ出せばいいだけの話。そのために何をすべきか? あるいは、やりたいことがあるのであれば、資金を貯めるのにAmazon輸入ビジネスを利用してもいい。ハウツー本でありながら、今後の人生設計を豊かにするためのヒントが満載の自己啓発書としても有益な一冊である。
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 realsound.jp 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。