資産10億円の不動産投資家が語る「シュークリームの忍耐実験」から見えた意外な“投資の真実”

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2025年04月07日 09:20  日刊SPA!

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―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―
東京23区の中古ワンルームマンション中心に不動産投資を展開。現在、38戸の物件を所有し、資産額10億円、年間家賃収入4000万円の個人投資家・村野博基氏。村野氏は投資においては投資ではしっかりとした「モノの見方の物差し」を持ち、その基準は絶対ではないから柔軟に変えるべきと言います。なぜ見方が大事なのかについて聞いていきます。

◆「自制心が成功を掴む」は本当か?

資産を形成していくなかでは「物事において判断基準を持つこと」が重要です。しかし、その判断基準はその見方によって変わってくるもの。絶対的な判断基準はないと私は考えています。

この話をする際に私が引き合いに出すのは「忍耐」を図る問題です。

「目の前にシュークリームがあります。もしこれを食べてしまえば20分後にもう一つ差し上げますが、食べるのを我慢すれば10分後にもう一つ差し上げます。あなたはこのシュークリームを食べますか? 我慢しますか?」

このお話では、「忍耐強い人は10分待つ」を選択するでしょう。その一方で「忍耐強くない人は今すぐに食べてしまう」というのが一般的な見方かと思います。しかし見方を変えると「忍耐強くない人こそが10分待つ」という結論にもなり得るのです。

◆「投資はリスクがある」と思考停止することに

同じ問題ですが、聞き方をこう変えたらどうでしょう。

「既に一つのシュークリームは手に入れています。次のシュークリームを手に入れるまでに10分待つのと20分待つのではどちらが良いですか? ただし20分待つなら今食べても良いですが、10分待つ方を選ぶなら食べてはダメです」

忍耐がどこに発揮されるのかによって判断基準は変わります。前者の問題は「食べるか食べないか」に焦点を当てているのに対し、後者は「待つか待たないか」に焦点を当てています。結果、忍耐強くない人は先の問題では「食べる」を選択し、後の問題だと「食べない」を選択するはずです。

この事柄からも、物事の見方、焦点の当てかたによって行動が180°変わることは時折発生します。ですから自分自身の考え方や、行動したときの理由をよく考えて「どのような見方をしたのか、どこに焦点を当てたのか」をよく整理しておくことが必要です。そうすれば、もしうまくいかないことがあっても、違うものの見方をすることでうまくいったことに感じられて幸せな人生が送れたりするものだと考えています。

投資においても「リスクがある」と一歩踏み出さない方は多いですが、一方でどんなに利回りが低くても、普通預金よりはきっと高いはず。つまり物の見方によっては、投資をしないことは「本来得られたであろう利益を失う」ということであり、リスクがある、と踏み出さないことこそ利益を失うリスクだったりするのです。

◆「前提が変わらないか」を考えよう

同時に、物事を考えるときには「前提を疑ってみる」ことも重要です。そもそもの前提自体が正しいのか、本当にそうなのか、についても考えてみると良いでしょう。

以前、私が所有するあるマンションの管理組合で、外壁タイルの大規模修繕の実数精算の見積りが上がって来ました。そもそも外壁タイルは足場を組まないとチェックすることができません。ですので、当初の見積もりでは「想定値」で算定し、実際に足場を組んで点検した結果、実数精算という形でかかる費用の再提出が行われます。

しかし、それが当初の見積りと比較して1000万円以上も上がって提出されてきたのです。理事会では「金額は上がったけれど必要な工事だし。仕方がないからこの金額を支払ってやってもらおう」という話でまとまりかけていました。そこで私が「どうしてこんなに増えたのですか?」と尋ねたら「点検したら浮いている箇所が非常に多くて2万枚あったので」と施工業者さんは答えました。私は「どこのタイルが浮いていたのか。図面で見て確認させてください」とお願いしました。

◆浮いたタイルは「貼り換えなければならない」という前提

改めて確認してみたところ、マンション全体で浮いていた箇所は確かに2万枚でした。ただ、外壁ではあるものの、開放廊下の内側で玄関と玄関の間のタイルがほとんどを占めている状況で。これらの箇所は廊下内のためわざわざ足場を組む必要はありません。また、仮に万が一、タイルが剥がれて落下したとしても廊下内に落ちるだけ。誰かがケガをする可能性も低く、修繕をするのはあとからでも可能です。この部分を今回の大規模修繕から除外したことで、ほぼ当初の見積もりどおりにすることができました。

知らなければ、管理組合は多額の金額を払い、施工業者さんもやる必要のないタイルの貼り替えをする羽目になっていたところでした。

今回の施工業者さんは丁寧に全てのタイルを点検して確認しただけ。ですから、悪意はありません。また管理組合の理事会も、管理会社も「大規模修繕はちゃんと行わなければ」という意図で動いていましたから、悪意はありません。

全員が「善意」で「問題なく」進めていたとしても、このように「浮いたタイルは貼り換えなければならない」という前提を疑わなければ余計なコストが大きく発生し、結果としてマンションの財政を悪化させることに繋がってしまいます。この「前提を疑う」を意識してみると、本当の姿が見えて案外うまく物事が進むかもしれません。

<構成/上野 智(まてい社)>

―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―

【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち16区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)

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