
【写真】梅田修一朗、長谷川育美、間宮康弘のインタビュー撮りおろし&アニメ場面カットが満載!
■現場で生まれる“生きた演技”の魅力
――『ヒロアカ』の公式スピンオフである本作への出演が決まったとき、どのような気持ちでしたか?
梅田:最初は信じられなくて、マネージャーから連絡をもらったときも「本当に……?」という感じでした。でも、すぐに実感が湧いて、嬉しさと同時に身の引き締まる思いがこみ上げてきました。僕自身、『ヒロアカ』を見て元気ややる気をもらっていたので、そのスピンオフに関わることができるなんて、本当に光栄でした。それだけに「この世界の一員として応えなければ」という責任感も強く感じましたね。
長谷川:私は、とある作品の打ち上げが終わったあと、二次会に向かう途中でマネージャーから「そういえば、『ヴィジランテ』決まったよ」とさらっと告げられたんです。驚きすぎて思わず「ええっ!?」って、大きな声を出しちゃいました(笑)。頭の中が「やばいやばいやばい!」って一気にいっぱいになって、嬉しいよりもまず驚きの感情が先に来ましたね。そこからすぐに緊張感が押し寄せてきて、一気に『ヒロアカ』の世界に飛び込むんだ、という実感が湧きました。
間宮:僕は『ヒロアカ』本編でギガントマキア役を演じているので、今回オーディションを受けさせてもらったんですが、正直「いや、厳しいかな」と思っていたんです。そんなある日、駅のホームでマネージャーから電話がかかってきて。「受かったよ」と言われた瞬間、「えー! 受かったの!?」と駅のホームに響き渡るくらい大声で叫んでしまいました(笑)。「まさか受かるわけない」と思っていた分、余計に嬉しかったです。
梅田:もうナックル師匠は間宮さん以外考えられないですよ!
間宮:ありがとう(笑)。実はオーディションには裏話があって。航一とポップのキャスティングが決まったあとに、ナックルダスターの追加オーディションがあったんです。で、僕も追加で呼んでもらったんですが、おそらく航一とポップの2人はすでに決まっていて、その声を聞きながらお芝居する形だったんですよね。だから、僕が受かった理由の一つは、2人のお芝居にしっくりハマったからかもしれません。「このトリオならイケる!」と思ってもらえたのかな、と。
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間宮:そうそう。スタジオオーディションで彼らの声を聞いたとき、「あ、これは原作を読んでいたときに頭の中で聞こえていた航一とポップの声だ!」って思ったんです。それくらいしっくりきていたから、おそらくこの2人は決まりなんだろうなって、なんとなくわかりましたね。
――『ヒロアカ』本編と同じく、音響監督は三間雅文さんが担当されていますが、収録時に受けたディレクションの中で特に印象に残っているものはありますか?
梅田:三間さんからは、キャラクターの内面をしっかり掘り下げることを強く求められました。航一だけでなく、それぞれのキャラクターが持つ価値観や人との接し方、何を大切にしているのかを深く理解した上で演じることが大事だと。視聴者が自然とキャラクターの気持ちを汲み取れるように、日常の何気ないシーンも、戦闘シーンも、一つ一つのセリフに確かな想いを込めることを意識しました。三間さんのディレクションのおかげで、演技により深みを持たせることができたと思います。
長谷川:ポップもそうですが、『ヴィジランテ』のキャラクターたちって、コミカルなシーンが多いんですよね。でも、ただ「面白いシーンだから」と軽く演じてしまうと、作品のリアリティが薄れてしまう。三間さんからも、「キャラクター自身は本気で怒っているし、悲しんでいる。視聴者から見て面白く映るシーンだったとしても、本人は決してふざけているわけじゃない」ということをよく指摘されました。ストーリーの流れ的に、つい笑いを狙いたくなるシーンもありますけど、そこはポップの感情が本物であることを大事にしながら、しっかりキャラクターとして生きることを意識しましたね。
間宮:僕は原作を読んだ状態で収録に入ったんですけど、それが逆に難しくなることもありました。『ヒロアカ』本編の収録のときも三間さんに言われたんですが、原作を知っていると、どうしても先の展開がわかってしまうんですよね。たとえば、キャラクターが驚くシーンで、本来なら初めて聞いた情報に対してリアルなリアクションをすべきなのに、先を知っているがゆえに「次にこうなるんだよな」と思ってしまって、リアルさが損なわれる。「間宮さん、それ知ってるでしょ?」って、何度も指摘されました(笑)。だからこそ、「今、この瞬間にキャラクターが何を感じているのか」を常に意識して、予定調和にならないように気をつけました。
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間宮:そうなんですよ。キャラクターのその瞬間の感情を大事にしないと、予定調和な芝居になってしまう。作品の持つダイナミズムが薄れてしまうので、毎回新鮮な気持ちで臨むことを心がけました。
梅田:本当に難しいですよね。でも、収録では妥協せず、納得いくまで追求させてもらえる環境だったので、1話1話を大切に作ることができました。
長谷川:「原作は忘れて!」って最初に言われましたもんね(笑)。
梅田:「この先二度と読むな」とまで(笑)。航一の視点で物語が進むからこそ、彼と同じく“何も知らない”状態で演じることが大事だったんだと思います。
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■“非合法ヒーロー”の視点から見る世界
――『ヒロアカ』本編と『ヴィジランテ』を比較したとき、それぞれの違いや魅力をどのように感じますか?
梅田:『ヒロアカ』のヒーローたちは、光の当たる舞台で活躍する公に認められた存在ですが、『ヴィジランテ』はその影に生きる“非合法ヒーロー”たちの物語です。正規の免許を持たず、個性を自由に使えない者たちが、それでも自分なりの正義を貫く姿が描かれているのが特徴ですね。
航一も、一度はヒーローになる夢を諦めたキャラクターだからこそ、彼の視点から描かれる物語は新鮮で、本編とは違う角度から“ヒーロー”という存在を考えさせられる作品になっていると思います。
長谷川:仲間同士の空気感も違ったものがありますよね。本編は、ヒーローを目指す少年少女たちが切磋琢磨しながら成長していく物語ですが、航一、ポップ、ナックルの3人は、明確な共通の目的があるわけではなく、それぞれの事情を抱えながら、気づけば共に行動するようになっている。
最初から息の合ったチームではなく、ぶつかり合いながらも、次第にお互いを理解していく。その凸凹な関係性こそが、この作品ならではの魅力になっていると思います。
間宮:それに、この3人の個性って、あまり戦闘向きではないんですよね。ナックルは武闘派ですが、航一は「滑走」、ポップは「跳躍」。それでも、彼らなりの手段でヴィランに立ち向かうというのが、本作ならではの面白さになっていると思います。
加えて、彼らの立ち位置も、本編のヒーローたちとはまったく違う。オールマイトがスーパーマンのような、誰もが憧れる象徴的な存在であるのに対し、ナックルはバットマンのように、影の世界で戦う存在。航一もマスクをつけ、ポップも黒い衣装で活動しているように、彼らの戦い方そのものが、本編と一線を画しているんですよね。
あと、『ヒロアカ』の世界では、ヒーローは“助けを求められる存在”ですが、『ヴィジランテ』では逆に「やばい、来た!逃げろ!」という展開になることもある(笑)。ヒーローが必ずしも味方ではない、そういう視点の違いが、この作品の面白さを生み出しているんじゃないかなと感じます。
――『ヒロアカ』本編のファンの方にも注目してほしいポイントですね。最後に、航一、ポップ、ナックルの関係性について感じたことを教えてください。
長谷川:本当に家族みたいな関係性だと思います。
間宮:たしかに。ナックルは年齢的にも上なので、自然と父親的なポジションになっていて。
長谷川:普通、大人の男性にあれだけズバズバ文句を言うことってないと思うんです。でも、ポップはナックルに本気で怒ったり、遠慮なく突っ込んだりする。それって、もうほぼ家族みたいな関係性だからこそ成り立つものだなと。
間宮:「パンツでうろつかないで!」ってね(笑)。
長谷川:そうそう(笑)。あの感じがまさに家族ですよね。本当に他人だったら、あんなふうに言えないし、そもそもあそこまで干渉しない。でも、ポップはナックルに対して、それができる関係性になっている。そこがすごく面白いなと思いました。
梅田:本当にそうですね。間宮さんが前に「原作ファンの方にとっても、この3人の関係性はすごく愛おしいはず」とおっしゃっていましたが、僕もそれをすごく実感します。物語を最後まで読んでしまっているので、余計にこの関係性の尊さを感じるというか。
航一が洗濯物を干しながら「これはこれで」ってつぶやくシーンがあるんですけど、あれがすごく航一らしいなって。まさかこんな生活になるなんて思ってなかったけど、でも「悪くないかも」とどこかで受け入れている。少しずつ互いを認め合い、居場所として感じ始めている。この関係性の積み重ねが、本作の魅力のひとつになっていると思います。
(取材・文・写真:吉野庫之介)
テレビアニメ『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』は、4月7日よりTOKYO MX・BS日テレにて毎週月曜23時、読売テレビにて毎週月曜23時59分放送。