G大阪でプレーしている満田誠(写真は今年3月2日のもの) [写真]=Getty Images 2024年は堅守速攻スタイルのサッカーで躍進を見せ、4位でフィニッシュしたガンバ大阪。そのキーマンだったダワンと坂本一彩はチームを離れたが、日本代表歴のある奥抜侃志、スーパー高卒新人・名和田我空らが加入。2025年はもう一段階、高みを目指して始動したはずだった。
ところが、2月14日の開幕・セレッソ大阪戦で2−5の大敗を喫すると、チーム全体がいきなり不安定な状況に陥った。宇佐美貴史や中谷進之介という攻守の大黒柱の欠場も重なり、苦境に陥ったのだ。
悩める名門の立て直し役に指名されたのが、サンフレッチェ広島から2月末に電撃加入したのが満田誠。ご存じの通り、2022年に流通経済大学から広島入りした彼はルーキーイヤーから9得点を挙げ、一気にブレイク。日本代表にも抜擢され、同年のE-1選手権にも参戦するほどの圧倒的存在感を示したのだ。
プロ2年目の2023年はケガもあり、J1・23試合出場にとどまったが、3年目の2024年は同35試合に出場。この年はジョーカー的な起用がメインとなったが、重要な戦力の1人と位置づけられていた。
まさにJリーグ屈指のアタッカーと目されていた満田。その彼が2025年突入後、全く出番がなくなるというのは、全くの想定外だったと言っていい。
「昨年から今年にかけての意気込みは強かったし、『より結果にこだわっていこう』とシーズン前から思っていました。でも広島でなかなかチャンスをもらえなかった。正直、難しさはありましたし、移籍の決断も悩みましたけど、『何が一番成長につながるか』を考えた時にやっぱり試合に出ることだった。それでガンバに移籍したんです。その後、試合に絡めるようになりましたけど、それだけじゃダメ。もっと結果にこだわっていかなきゃいけないと思っています」と本人は偽らざる胸の内を吐露していた。
そんな中、迎えた4月6日の柏レイソル戦。直近リーグ戦3戦未勝利のG大阪にとってこのアウェイゲームは勝ち点3がマストだった。2日のFC町田ゼルビア戦から中3日の過密日程を考慮し、ダニエル・ポヤトス監督は宇佐美や鈴木徳真を控えに回し、満田とファン・アラーノをスタメンに抜擢。より攻撃的な戦いを目指してスタートした。
しかし、前半のガンバは柏にボールを握られ、自陣に引いて守る展開を強いられる。
「守備する時間が長かった分、それで体力を削られてしまって、攻撃の時にパワーを出せない部分があった。もっと賢く守れればよかったのかなと思いました」と背番号51をつける男は神妙な面持ちで言う。
彼自身も最初は4−4−2のダイヤモンド型の中盤の頂点に位置していたが、途中から4−2−3−1のトップ下でプレー。イッサム・ジェバリやデニス・ヒュメットらとの距離感やバランスを探りながらボールを触る回数も増えてきたが、全体としては苦しい時間帯が続いたまま、後半まで進んでしまった。
それでも、彼が絡んだチャンスはあった。特に印象的だったのが、後半開始5分のシーン。左のイッサム・ジェバリから中央でボールを受けた満田はドリブルで前進。ペナルティエリアやや外側の位置でフリーになったが、シュートを打たず、右から走ってきたファン・アラーノへのパスを選択。惜しくもDFにブロックされてしまったのだ。
似たような攻めが2〜3回あったのだが、広島1年目の満田だったら、迷わずシュートを選択していたはず。新天地に赴いてから1カ月半の間にさまざまな布陣や組み合わせでプレーしている分、自分の感覚でフィニッシュに持ち込めていないところがあるようだ。
「もっとシュートを打てば、他の選手も空いてきたかなと。そこは思い切りが足りなかったと感じます。僕自身、ゴール前で積極的にシュートに持っていくプレーの選択を多くしたいですし、それを増やしていけばもっと自分のよさも出てくる。まだガンバに来てから結果が出ていないので、結果にこだわらないといけないと思っています」
本人も悔しさをにじませたが、やはりアタッカーは得点を奪ってこそ、勢いが出てくる。満田はG大阪に赴いてからリーグ戦6試合に出ているが、数字が伴っていないのは事実。この苦境を乗り越え、躍動感とアグレッシブさのある本来の姿を見せられることになれば、G大阪でも必ず輝けるはずだ。
結局、G大阪は後半20分に小泉佳穂が決めた1点を跳ね返すことができず、0−1の敗戦を喫した。これで直近4戦未勝利。順位も暫定14位まで後退した。守備リーダーの中谷は「ホントにうまく噛み合っていない」と苦渋の表情を浮かべたが、直近4戦で3試合ノーゴールという攻撃陣が爆発しないと、明るい未来は開けてこない。それは確かだ。
「1点以上は取らないと勝てないので、攻撃陣がしっかり点を取って、全員で守って勝てればいいのかなと思います」と満田も自分に言い聞かせるようにコメントしていたが、先陣を切ってゴールに突き進んでいくべきだ。
かつて広島のミヒャエル・スキッベ監督は満田のことを「悪ガキ」と評したが、ヤンチャなプレーが影を潜めたままでは魅力も半減してしまう。やはり彼には怖いプレーを見せてほしい。ここからの巻き返しに注目だ。
取材・文=元川悦子
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