ある世代から上の人たちにとって、乾電池として見慣れていた「赤」と「黒」のマンガン電池。そんなマンガン電池が、実は国内で姿を消しつつあるという。
「2008年からマンガン電池の国内生産は終了しており、現在、購入できるマンガン電池はすべて輸入品です」
こう語るのは、一般社団法人電池工業会の担当者だ。
「1885年に日本で初めて発明されたマンガン電池は、“休み休み使うと電圧が回復する”という特徴があり、リモコン、時計、懐中電灯など微少電流の機器で広く使われていました。一方、1960年代にはアルカリ電池が登場します。CDプレイヤー、MDプレーヤーなど大きな電流が必要となる携帯機器の普及、デジタルカメラの登場などにより、マンガン電池の約2倍の容量があり、より長持ちするアルカリ電池へと需要がシフトしていきました」(電池工業会担当者、以下同)
阪神淡路大震災以降、防災意識の高まりから電池を備蓄する人も多いだろう。こういった場合でも「アルカリ電池」が推奨されている。
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「防災を目的として乾電池を“買い置き”する場合でも、マンガン電池の使用推奨期限が2〜3年であるのに対して、アルカリ電池が5〜10年。この差は圧倒的です」
しかし、マンガン電池は安価というメリットもある。さらに前述のように、「リモコンや時計など微少電流のものにはマンガン電池、それ以外の強い電力を必要とするものにはアルカリ電池」という基本的な用途の違いもある。
それなのに、なぜマンガン電池は国内での生産が終了したのだろうか?
■「液漏れ問題」をアルカリ電池が克服し、使い分けが不要に
実は、現在のほとんどのアルカリ電池は、「微少電流の機器に対応できるように」と性能が向上している。かつては、リモコンなどにアルカリ電池を使用することで液漏れなどが発生したが、今ではアルカリ乾電池も問題なく使えるため、使い分けの必要性がなくなった──。
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さらに、かつては2倍以上といわれたマンガン電池とアルカリ電池の価格差も、海外で製造された安価なアルカリ電池が輸入されることで、徐々に縮まっていった。
その結果、徐々にマンガン電池の家庭での“居場所”がなくなっていったのだ。
「日本をはじめアメリカ、欧州などではすでにマンガン電池からアルカリ電池に入れ替わっています。今、国内で売られているマンガン電池(輸入品)は、微少電流に適していると認識している方だけが購入しているのでしょう」
今後は、マンガン電池は全く必要なくなってしまうのだろうか?
「世界では、現在もマンガン電池は使われています。今後も使用されるかどうかは、電池を使う機器次第で大きく変わってくるでしょう。たとえば、時計を単純に動かすだけならばマンガン電池で十分ですが、デジタル表示になったり、アラームがついたりと機能が増えていけばアルカリ電池の方が適しています。アルカリ電池とマンガン電池のシェアがひっくり返ることは考えづらく、マンガン電池が絶滅する可能性は否めません」
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多くの人になじみのある「マンガン電池」は、いまや“絶滅危惧種”となってしまったのだ。
店頭で見かけなくなる日も近いかもしれない。
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