DeNAオースティンが今も誇る田中将大から放ったホームラン 「最高の人間から打ったからこそ特別な意味がある」

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2025年04月07日 18:30  webスポルティーバ

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 今年2月のキャンプ中、横浜DeNAベイスターズのタイラー・オースティンは、4月8日に巨人との今季初対決があることを知らされると、満面の笑みを浮かべた。

 オースティンは、巨人に対して特別な感情を抱いたこともない。しかし今季の巨人には、オースティンが再会を楽しみにしている選手がいる。それがニューヨーク・ヤンキース時代のチームメイトであるマー君こと田中将大である。

【ヤンキース時代のマー君との思い出】

「彼は大好きなチームメイトでした」とオースティンは語り、当時のエピソードを語ってくれた。

「メジャー昇格後、クラブハウスでできるだけみんなの邪魔をしてはいけないと、目立たないようにしようと思っていたのですが、タナカはとてもやさしく迎え入れてくれました。本当に感謝しています」

 ふたりは投手と野手、日本人とアメリカ人、若手とベテランといった具合にすべてにおいて対照的で、本来なら親しくなる要素は少なかった。にもかかわらず、オースティンは田中と過ごした時間をこう振り返る。

「ベンチでよく話しました。日本のこと、野球のこと......楽しい会話をたくさんしました。彼は毎日『グッドモーニング』とあいさつしてくれました。メジャーのクラブハウスにいる若い選手にとって、そうした彼の気遣いは本当にうれしかったですし、心に残っています」

 オースティンのメジャーデビューは、2016年8月13日、ヤンキーススタジアムでのレイズ戦だった。その試合、ヤンキースの先発は誰だったかオースティンに尋ねると、彼は即答した。

「タナカ」

 田中はその試合に先発し、オースティンは「7番・ファースト」でスタメン出場した。そして2回裏の第1打席で、いきなりメジャー初本塁打の偉業を成し遂げたのだった。カウント2−2からの6球目を、ライトスタンドへ運ぶ鮮烈な一撃だった。

 この試合のドラマは、それだけにとどまらなかった。オースティンのあと、8番打者として出場していたのもメジャー初出場の選手。その彼こそ、現在、大谷翔平(ドジャース)のライバルとして知られるアーロン・ジャッジだった。

 なんとそのジャッジも、メジャー初打席で本塁打を放ったのだ。メジャーリーグ史上初となるルーキーふたりによるデビュー戦での連続本塁打。その歴史的瞬間をオースティンが振り返る。

「正直、緊張しすぎていて、ほとんど覚えていません。夢のようで、ベースを回った記憶すらないんです。ただ、ベンチに戻った時に階段で滑りそうになって......とにかく興奮しすぎていて、『落ち着け』と思ったことははっきり覚えています(笑)」

 自分のことはあまり覚えていないが、ジャッジのことについてははっきり記憶していた。

「月にまで届きそうな、特大のホームランでした。それは覚えています。メジャーデビュー戦の2人が、それぞれ初打席でホームラン。しかも2者連続というメジャー史上初の快挙を達成しました。ドラフトは一緒ではなかったですが、ともにマイナーでプレーしていたので友だちになりました。彼とともに歴史に名を刻めたことは本当にすばらしいことですし、今も誇りに思っています」

 ジャッジとの関係は今も続いており、このオフに会った際、彼から祝福の言葉をもらった。

「シーズン終了後、僕もジャッジもフロリダのタンパにある施設でトレーニングしているのですが、そこで再会した時、『日本一おめでとう!』と声をかけてくれました。最近は、アメリカでも日本のプロ野球の知名度は上がっていますね」

【2021年の交流戦ではホームラン】

 オースティンは2018年途中にヤンキースを離れ、ミネソタ・ツインズ、サンフランシスコ・ジャイアンツ、ミルウォーキー・ブリュワーズを経て、2020年からベイスターズに加入。一方、田中は2021年に楽天へ移籍し、3年ぶりの再会を果たした。

 2021年5月28日、仙台での交流戦。試合前、田中が三塁側で準備をしていると、一塁側にいたオースティンが遠くから声をかけた。田中は帽子を取って応え、ふたりは笑顔であいさつを交わした。しかし翌日の試合では一転、真剣勝負の場となった。

 オースティンと田中の直接対決。最初の2打席はセンターフライに打ちとられた。しかし、0−0で迎えた6回の第3打席、オースティンはカウント1−2から強振すると、打球は左中間スタンドに飛び込む先制のホームランとなった。

 マウンド上の田中は悔しそうな表情を浮かべたが、オースティンは無表情のままダイヤモンドを一周した。試合前の笑顔とは対照的に、ふたりは目を合わせることはなかった。

「あれは日本に来てから最も誇りに思うホームランです」とオースティンは語る。

「最高のピッチャーであり、最高の人間である彼から打った一発だからこそ、特別な意味があります。尊敬しているからこそ、彼から打ちたかったんです」

 試合はその後、楽天が追いつき1−1の引き分けで終わった。

 その後、ふたりの対戦はなかったが、今季から同じリーグのライバルとしてプレーする。オースティンは2年連続首位打者獲得に挑み、田中は日米通算200勝を目指す。

 しかし8日の巨人戦を前に、オースティンは下半身のコンディション不良により、登録抹消となった。とはいえ、同一リーグでプレーするふたりの今後の直接対決の可能性は大いにある。DeNAと巨人の戦いから目が離せない。

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