
ここ数年、クレジットカードの所有者なら誰にでも起こりえる被害となっている不正利用。クレカ情報が流出して不正利用された場合にユーザーはどう対処するのが正解なのか? アプリを中心としたチェック項目を解説します!
■クレカ会社のアプリで利用通知環境を整える!
3月13日、日本クレジット協会は昨年のクレジットカード不正利用による被害額が過去最悪の555億円だったことを発表。
そして、4月1日からは実店舗でのクレカ利用時は決済端末に暗証番号の入力、ECでは本人認証サービスである「3Dセキュア」の導入が店舗やEC事業者側に義務化されるなど、クレカでの決済環境はセキュリティ面で大きな転換期を迎えている。
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そんな中、クレカ情報の流出による不正利用が疑われる場合にユーザーが行なうべき手続きは? 事前にできる対策にはどういったことがある? 100枚以上のクレカを保有し、通算5回以上も不正利用の被害を受けている、ポイ活情報サイト『ポイ探』代表の菊地崇仁さんにお聞きします!
――昨年、イオンカードの不正利用が相次ぎ、今年3月には99億円に上る被害額に。ただ、不正利用されたユーザーには補償が進められており、ユーザー的には金銭的なダメージが少ないのでは?と思ったりします。
菊地 クレジットカード発行会社の補償には期限が設けられています。一般的には60日、一部では90日という場合もあります。
この期限内にカード会社へ不正利用があったことを報告しない場合は補償対象外になりますので、ユーザー側はいち早く不正利用を知ることが重要。そのために利用通知や決済履歴を頻繁にチェックする必要があります。
――どのクレカにも専用アプリが用意されています。これらを利用するべきですか?
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菊地 楽天カードや三井住友カードでは「アプリからの設定」が推奨されています。利用通知に関しては【SMS・メール・LINE・アプリ内のプッシュ通知】といった種類があり、ユーザーが選べるようになっています。
――利用通知は、電波状況に左右されにくく、安定して受信できるSMSを選ぶのが正解ですか?
菊地 私はアプリ内のプッシュ通知を推奨しています。近年、カードの利用通知に偽装したフィッシング行為が氾濫しており、SMSやメールではこれらをカード会社からの本物の通知と勘違いしてしまう恐れがあります。
特にメールに関しては、文言がより正確で巧妙になり、瞬時に判別するのが難しい。一方、アプリ内のプッシュ通知にはフィッシング行為はなく、現状で最も安全だと言えます。
――身に覚えのないクレカ決済の通知が来て"怪しい!"と感じた場合、次はどのようなことをチェックすればいいでしょう。
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菊地 利用明細を確認します。こちらもアプリから確認することができますが、カード会社によって明細に反映されるまでタイムラグがあります。早い会社は即反映、遅いと2日から1週間前後です。
不正利用には、少額決済を繰り返すという特徴があります。一発で高額なブランド品を購入するのではなく、電子ギフトカードやたばこなど換金性の高い商品の購入を繰り返す。なので、利用通知で怪しいと感じた場合には明細を確認し、このような決済履歴がないかチェックしましょう。
――では、「不正利用、ほぼ間違いなし!」と思ったときに行なうべきことは?
菊地 まずは家族への連絡です。不正利用と勘違いされやすいのが、実は家族が決済していたというケース。
カードをECなどの支払いに設定し、それを家族で共有しているのに、不正利用と勘違いしてしまうのです。なので、まずは家族への確認。これで家族が使っていなければ不正利用されていたことが確定になりますので、カードの利用を停止します。
――クレカの一時停止は、どこで行なうのが正解ですか?
菊地 これもアプリから行なえます。メニュー内に【カード停止】に関する項目がある場合は設定できます。カードによっては一時停止機能がない場合もあります。
――確かに、大手クレカ会社のアプリ内にもその項目があり、2、3タッチほどでクレカの停止設定が完了。アプリ内のメニューを表示すれば、誰でも簡単に【停止・解除】ができる環境は整っていますね。クレカの利用停止後にやるべきことは?
菊地 カード会社への連絡です。これもアプリから行なえる会社がありますが、基本は電話連絡となります。
――でも、クレカ会社への連絡って、なかなかつながらなかったり、対応時間外ということもありがち。そもそも、どこに電話するのですか?
菊地 基本的にカードの背面にプリントされている電話番号で対応してもらえます。不正利用に関する電話問い合わせは、どのカード会社も24時間対応。不正利用は社会問題化しており、どの会社もつながりにくいということは少なくなっています。
電話では「ご家族で利用していませんか?」と聞かれるので、事前に家族に確認をしておくことで話がスムーズに進みます。
――ゴールドやプラチナなど上位カードだと迅速対応だったりするのですか?
菊地 上位カードは専用のカードデスクに電話をして、そこから担当部署へつないでもらうことも可能です。私の経験ですと、上位カードの場合は電話一本で返金対応まで迅速なイメージがあり、補償期間をオーバーしても対応してくれる柔軟性もあります。
――ほかに、電話連絡に関する注意事項は?
菊地 最近はスマホにクレカを登録して、カードそのものが手元にないこともあり、事前に電話番号を控えておくことを強くオススメします。
――カード会社への連絡後はどのような手続きを?
菊地 基本は新カードを発行することになります。この場合、カード番号もすべて新しくなり、これまで支払いに設定したサービスなどは全部新カードに更新する必要があります。
不正利用された場合はカード会社の補償があり、期限内に手続きすればユーザー側には金銭的な被害はありません。しかし、各種支払い手続きの変更という手間は発生します。
――不正利用された場合、ユーザーが警察に被害届を提出する必要は?
菊地 カード会社の利用規約には、不正利用があったときは警察への手続きも必要であるという内容が記載されています。しかし、私が不正利用されて被害届を提出しに行ったときは、「被害者は決済を利用された店舗側になります」と言われました。
つまり、不正利用として決済された店舗側が被害届を提出しないと、捜査も刑事事件化もできないという話だったのです。私の場合は「記事にできるかも?」という考えもあって警察に行きましたが、一般のユーザーだと、そこまでやる必要はないと思っています。
――警察側としては、不正利用された店舗側のセキュリティ体制にも問題があるという判断なのでしょうか?
菊地 私が聞きに行ったときはそういうニュアンスの話でした。それもあってか、4月1日からは実店舗でのカード決済は暗証番号の入力が義務化され、これまでのように紙にサインする決済は不可となりました。
ECにも本人認証サービスの3Dセキュアの導入が義務化されますが、これはユーザーがカード会社のアプリなどから設定を行なう必要があります。なので、今年は不正利用が減少するのではないかと思っています。
■菊地さんが体験した不正利用とは?
――ところで、クレカを100枚以上も保有する菊地さんには、エクストリームな不正利用被害などありましたか?
菊地 クレジットカードの不正利用だけでなく、デビットカードでも被害を受けたことがあります。未遂だったのですが、犯人側は私のカード番号を把握しており、買い物をしようとしていました。
しかし、デビットカードの口座にはお金を入れておらず決済不可だったのです。なので、私のアプリには「決済エラーです」という通知が一晩で100通以上も届きました(笑)。
――不正利用されるリスクが高いクレカは?
菊地 加入したけど、まったく利用していないカードです。「クレジットマスター」と呼ばれる、カード番号の規則性から実際に決済利用できるカード番号を割り出す犯罪手口があるのですが、利用しないカードはアプリに登録もしておらず、この手口でやられても気づきにくいのが特徴です。
ですから、あまり利用しないカードでもまずはアプリに登録すること。そして【限度額を下げる】【海外利用を制限】などの設定を行なうことでも、不正利用のリスクを下げることができます。私のように100枚以上もカードを所有しているとリスクしかありませんけど(笑)。
――不正利用対策は、利用していないクレカの解約を含めた見直しも重要ですよ!
取材・文・撮影/直井裕太 写真/アフロ イメージマート