ノンカロリー人工甘味料は砂糖より“空腹感”を与える MRIで75人の脳を調査 海外の研究者らが検証

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2025年04月08日 08:31  ITmedia NEWS

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ノンカロリー人工甘味料は砂糖より“空腹感”を与える MRIで75人の脳を調査(画像作成:編集部)

 米南カリフォルニア大学などに所属する研究者らが発表した論文「Non-caloric sweetener effects on brain appetite regulation in individuals across varying body weights」は、ノンカロリー甘味料のスクラロースが、脳の食欲調節中枢である視床下部の活動に与える影響に関する研究を発表した。カロリーのある砂糖と比較して異なる生理学的反応を引き起こすことが明らかになった。


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 この研究は、18〜35歳の体重が異なる(健康体重、過体重、肥満)75人の健康な若年成人を対象とした試験を行った。参加者は研究センターを3回訪問し、スクラロース(ノンカロリー甘味料飲料)、スクロース(砂糖飲料)、水のいずれかの飲料をランダムに摂取した。


 各飲料は甘さが一致するよう調整済み(水は非甘味対照として使用)。磁気共鳴画像法(MRI)を用いて、飲料摂取前後10分と35分の間隔で、脳血流、特に空腹を制御する主要領域である視床下部の血流を測定した。


 研究結果は、スクラロース飲料の摂取が砂糖飲料や水と比較して視床下部の血流を有意に増加させることを示した。また、スクラロース飲料摂取後は砂糖飲料摂取後と比較して参加者がより強い空腹感を報告したが、興味深いことに水と比較した場合には空腹感に有意差はなかった。


 砂糖飲料の摂取は血糖値を有意に上昇させ、これが視床下部活動の低下と空腹感の減少と相関していた。これは通常のカロリー摂取による空腹抑制が正常に機能していることを示している。


 一方、スクラロースは血糖値に影響を与えないため、このような空腹抑制メカニズムが作動せず、視床下部の活動パターンは時間とともに動的に変化し、砂糖摂取後とは異なる反応を示した。


 この脳内反応は体重によって異なるパターンを示した。健康的な体重の人では、スクラロースと砂糖を比較した場合に視床下部の活動に違いが見られた。


 つまり、健康な人は砂糖とスクラロースを明確に区別して処理している。一方、肥満の人々では、スクラロースと水を比較した場合に違いが見られたが、スクラロースと砂糖の間には有意な差がなかった。これは肥満状態において、甘味に対する脳の処理メカニズムが変化している可能性を示唆している。


 また性別による顕著な違いも観察できた。女性はスクラロース摂取後、男性と比較してより顕著な視床下部反応を示した。これは女性が食物刺激に対してより敏感である可能性を示している。


 Source and Image Credits: Chakravartti, S.P., Jann, K., Veit, R. et al. Non-caloric sweetener effects on brain appetite regulation in individuals across varying body weights. Nat Metab 7, 574-585(2025). https://doi.org/10.1038/s42255-025-01227-8


 ※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2



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