夫より稼ぎ家族を支える妻。人一倍稼がなくてはならず「自分の家なのに息苦しい」40代に共通のつらさとは?

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2025年04月08日 09:00  女子SPA!

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20代は未来へ向けてよちよち歩き、30代は無我夢中で突っ走る。そして40代はおそろしい?

◆まだ若い40代、されど楽しみはおあずけ

『女40代はおそろしい』(幻冬舎)は、40代の女性だからこそ遭遇するさまざまな「おそろしさ」に焦点を当てたコミックエッセイです。

登場するのは、ふさ子、まい、カオリ、3人のワーキングマザー。夫がいながらも一家の大黒柱は彼女達。三人三様に、どこからともなく湧いて出る黒いドライアイスのような「おそろしさ」と対峙しているのです。

夫婦、義母、仕事、さらに自身のセクシャリティまで。終わりがうっすら見えてきた人生と自分に、彼女達はどう決着をつけるのでしょうか。

◆一家の生計を支える大黒柱妻、責任を負うおそろしさ

夫も子供もいて、妻として確立されて、仕事でもそれなりのポジションをキープ、収入も盤石。そんな大黒柱を担いつつも、まだ世間の風当たりは冷たかったりします。

「仕事がなくなっても、家族の責任負う覚悟はできてますぅ?」

面識のない失礼オヤジにふさ子さんが言われたこの言葉、“憎たらしいセリフ!”と思いきや、これは実際にあったことだと本書。

一家を支える頑張り屋の女性は、正論かもしれないと認めつつも、やはりおそろしさを実感するのです。ひとりの女性ではなく、家族ありきの自分として。

「思いきり仕事させてほしい」と宣言し、夫に転職をさせてしまったふさ子も、無職の夫と義母に世話になりっぱなしのまいも、主夫である夫との関係に悩む経営者のカオリも、大黒柱妻の任務をこなしながらも、「私って何者?」という問いを繰り返しているのかもしれません。

仕事は好き、家族も大切。自由にさせてもらっているのだから、人一倍稼がなくてはならない。体を張って家族を支える40代女性は、皆、努力家で真面目で一本気です。そうしてじょじょに、家にも息抜きの場所を見出せなくなってくるのです。

相変わらず不景気な世の中で、私が働けなくなったらどうしよう?と不安に苛(さいな)まれる日々。反面、のんびりくつろぐ夫や義母を疎んでみたり。

精神的な疲労やストレスを家族には悟られたくない。裏腹に、逃げ出したくてたまらない。デキる女性だからこそ、はけ口を見つけなくてはならないのです。

◆ほのかな恋心と、女の自覚

自分の家なのに息苦しい、となればワーキングマザーの逃げ場所は職場しかありません。

社内に心惹かれる人がいるまいさんも、女としての感覚をあきらめたくないカオリさんも、その心情は年齢を重ねた私達の心を揺さぶるのに十分です。特に女性用風俗の扉を叩いたカオリさんには、私も天晴(あっぱれ)だと拍手を送りました。

「自分の性を探してるってこと、誰に知られちゃいけないっていうの?」と、カオリさんは涙ながらに、性を解放したことを誇りに思うのです。浮気をしているらしい夫とのぎくしゃくしたセックスよりも、自分を労(いた)わり、慈しむという尊さを選んだのでしょう。

何十年と連れ添って、未だに夫とのセックスが最高だと惚気(のろけ)る人もいます。あるいは、性交渉がなくても円満で幸せな夫婦もいます。

婚外恋愛も不倫も浮気も、人それぞれに事情があるからこそ成立しているもの。夫への感情は、ふさ子、まい、カオリ、それぞれ異なります。変化する関係性に「おそろしさ」を覚えながらも折り合いをつけていくのです。

夫や家族とはいえ、他人です。40余年も生きた人生、「誰かのために」ではなく「自分はどうしたいのか」という視点で過ごしていきたいものです。

40代の「おそろしさ」と戦うのではなく、「おそろしさ」を味方につける。本書を読み、そんな生き方を模索したくなりました。40代を超えた時、ゆたかな人生に感謝するはずです。

<文/森美樹>

【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx

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