
4月6日(現地時間)、セグンダ・フェデラシオン(スペイン4部)グループ1(4部は地域別に18チーム×5グループで構成されている)の第30節、ラージョ・カンタブリア(ラシンB)対ヌマンシアの一戦は、2−1でホームのラージョ・カンタブリアが勝利した。
中井卓大が所属するラージョ・カンタブリアは、中井が今季前半に所属していたアモレビエタとはビルバオを挟んで反対の西側に位置するカンタブリア州の州都サンタンデールを本拠地とする、ラシン・サンタンデールのBチームだ。
トップチームのラシン・サンタンデールは、スペイン1部リーグ創設時の"オリジナル10"でもあり、近年ではセルヒオ・カナレス(現モンテレイ)やパブロ・トーレ(現バルセロナ)がプレーしていた。今季は2部で、1部昇格争いの真っ最中にある。余談ではあるが、過去には日本人が初めて1部リーグ所属のトップチームのスタッフ(トレーナーの山田晃広氏)となったクラブでもある。
試合はサンタンデールから電車で30分弱、郊外のアスティジェロにあるSDウニオン・クラブのスタジアムである「ラ・プランチャーダ」で行なわれた。ラシンは現在、自前の練習場施設が改修中で、ここを間借りしている。
今季のグループ1は、スペイン国王杯で浅野拓磨のマジョルカを下すなど旋風を巻き起こしたポンテベドラと、2部時代に福田健二氏(現横浜FC強化部スタッフ)が活躍したヌマンシアという古豪の2チームがトップ争いを演じている。現在2位で自動昇格の可能性があるヌマンシアを後押ししようと、アウェーのサポーターも駆けつけ、席数600余りのスタンドは大いに盛り上がった。
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冬の移籍市場でアモレビエタからレアル・マドリードにレンタルバックした後、ラージョ・カンタブリアへと戦いの場を移した中井。だが移籍後の初出場となった2月16日のバジャドリードB戦で負傷を負い、離脱を余儀なくされていた。前節は招集メンバー20名には含まれたものの、慎重を期して試合メンバー(18名)には登録されなかったので、この試合が復帰戦となった。
【守備面で高い経験値】
その中井はほぼフル出場となる89分までプレーし、勝利に貢献している。
先制したラージョ・カンタブリアだが、ゴール前での守備陣のミスが重なってヌマンシアに同点ゴールを許してしまう。Bチームはトップチームへの選手供給という役割を負っている以上、所属選手は基本、23歳以下に限定される。タレント依存でもなんとか形になる攻撃面に比べ、基本的に経験値が必要となる守備面で成熟していないというのはありがちな現象だ。
リーグ最多得点ながら失点数も多いラージョ・カンタブリアには、まさにそれが当てはまる。"育成チーム"らしさ(チームコンセプトに沿って、ボールをきちんとコントロールしようとする)を感じさせる試合をしても、それ故に、勝利のみを目指す相手チームの後手を踏む場面もまた多かった。
筆者の印象ではあるが、この試合でも、もしもう少し早い時間帯に中井の交代が行なわれていたら、おそらくヌマンシアに同点、もしくは逆転ゴールを許していたのではないかというプレー内容と試合展開だった。
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後手を踏まずにいられたのは、試合前から「間違いなく、蹴りあいになる」(中井)と予想してチームが準備してきたなかで、監督が中盤の底の位置に中井を先発起用し、守備的な役割に徹することをさせていたからだ。守備面における経験値という点で、21歳の中井は間違いなくチームの他の選手よりも高いものを持っていた。
試合後、中井は「長く出ていなかったので、試合勘に関してはよくなかったけど、ほぼフルタイムでプレーできたのはよかった。でも、あまり攻撃には絡めなかったし、なんならヘディングでボールを触った回数と脚で触った回数がそれほど変わらなかったかも。自分のなかでは過去一、泥臭い試合だったかもしれません」と、苦笑いしながらコメントしてくれた。
1週間をかけて準備し、泥臭くとも目指した勝利をしっかり掴むという、これぞ"プロのプレー"を全うした結果だとも言えるだろう。
現在7位のラージョ・カンタブリアは、昇格プレーオフ圏内である5位まで5ポイント差で、上位のチームとの直接対決も残っている。ポイント差的には楽観できないが、プレーオフまで進出すれば、そこから最大でプラス4試合を戦うことになる。
4部とはいえ、そこには過去に1部の経験もあるチームも選手も多数含まれている。ヌマンシア戦での経験は、次なる経験値獲得(と、プロサッカー界での生き残り)につながっているはずだ。残るは4節。チームと中井の戦いぶりに注目したい。
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