茂木健一郎「“病は気から”という言葉があるように…」“笑う”ことで健康になれるメカニズムを脳科学の視点で解説

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2025年04月09日 20:10  TOKYO FM +

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茂木健一郎「“病は気から”という言葉があるように…」“笑う”ことで健康になれるメカニズムを脳科学の視点で解説
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、国内外で活躍するゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00〜22:30)。
TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、スピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」も配信中です。この番組では、リスナーの皆さんから寄せられたお悩みに対して、茂木が脳科学の視点から回答し、「ポジティブな考え方」を伝授しています。
3月22日(土)の配信では、「笑顔がもたらす効果」に関する相談に答えました。


パーソナリティの茂木健一郎



<リスナーからの質問>
私は、ヨガの先生から「楽しいから笑うのではない。笑うから楽しくなるのだ」と教えてもらいました。笑うと、心のなかでは本当は楽しくないとわかっていても、脳が騙されるそうです。これはなぜ騙されるのでしょうか?
私は楽しくないのに笑うことができません。なんだか自分に嘘をついているような気がします。

<茂木の回答>
とても誠実で素敵な方ですね。たしかに、楽しくないのに笑うのは、自分に嘘をついているように感じるかもしれません。でも、脳科学的に見ると、ヨガの先生がおっしゃっていることは正しいのです。これは「行動主義」と呼ばれる考え方に基づいています。

「楽しいから笑う」のではなく、「笑うから楽しい」と感じる。あるいは、「悲しいから泣く」のではなく、「泣くから悲しい」と感じる──つまり、感情が先にあって行動が伴うのではなく、行動が先にあって感情が生まれるという側面があることが、脳科学でもわかってきています。

作り笑顔でも、脳の「体性感覚野」という部位には「自分が笑っている」という刺激が伝わります。すると、脳は本当に笑っていると錯覚してしまうのです。確かに、それは自分に嘘をついているとも言えるかもしれませんが、脳にとってはそれで十分なのです。

この仕組みの極端な例が「プラシーボ効果」です。実際にはただの砂糖の塊でも、「これはよく効く薬です」と言われて飲むと、脳がその気になり、本当に効果が現れて病気が改善する──こうした現象は科学的にも証明されています。そのため、新薬の臨床試験では、プラシーボでもある程度の効果が出てしまうことを考慮し、本物の薬の効果をより厳密に検証しているのです。

つまり、「笑う」という行動も、ある種のプラシーボのようなもの。笑うことで脳が楽しいと感じ、結果的に病気の改善につながることもあるのです。「自分に嘘をつくようで嫌だな」と感じるかもしれませんが、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。

たとえば、楽しい気分になると、幸福感と関係のある「エンドルフィン」という神経伝達物質が分泌されます。一方、ストレスを感じると出る「コルチゾール」は低下します。こうした物質が脳内でしっかりと働いているのです。ですから、たとえプラシーボであっても、上手に活用してみるのも1つの方法だと思います。

そして、そもそもヨガはこの行動主義の考え方に基づいています。さまざまなポーズを取ったり、呼吸を整えたりすることで、脳や身体が“騙される”──つまり、よりポジティブな方向に自分を導いていく。これこそがヨガの本質的な考え方です。

ヨガの先生のおっしゃることは、とても理にかなっていると思います。あなたが誠実な方であることは文面からも伝わってきますが、「病は気から」という言葉があるように、気の持ちようで病気が改善することもあるのです。健康のためだと思って、ぜひ先生の言葉に従い、笑顔を取り入れてみてください。きっと、さらに健康が改善されていくのではないでしょうか。

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音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」
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<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎

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