トランプ米大統領=9日、ワシントン(AFP時事) 【ワシントン時事】トランプ米大統領は、2国間関係に基づいて課す相互関税の上乗せ部分について、発動からわずか13時間余りで90日間の停止を決めた。各国・地域との交渉期間を確保する狙いだが、金融市場の混乱に配慮した可能性もある。急な政策変更で周囲を振り回す「トランプ劇場」が繰り返された。
「人々は少し恐れているようだ」―。9日、ホワイトハウスで記者団の前に現れたトランプ氏は、一時停止の発表後こう語り、金融市場に配慮した可能性を示唆した。
米政権が2日、ほぼ全世界を対象にした相互関税を打ち出すと、米金融市場では動揺が広がり、貿易戦争の再燃や景気悪化への懸念から、株式と債券、ドルが売られる「トリプル安」の展開に。海外市場では同時株安を招いていた。
9日午後、市場に上乗せ部分の一時停止が伝わると一転、米株式相場は急騰し、この日の上げ幅は2900ドル超と、過去最大を記録した。
トランプ氏は、カナダ、メキシコへの25%関税を巡っても、急な方針転換で混乱を引き起こしている。2月には発動の数時間前に1カ月間の延期を決定。3月の適用開始から2日後に大幅な減免措置を導入し、周囲を翻弄(ほんろう)した。
今回の一時停止発表時、米議会下院では貿易政策に関する公聴会が開かれていた。民主党の議員は「戦略も計画もない。経済を混乱に陥れた」と急な方針転換を非難。出席した米通商代表部(USTR)のグリア代表は「数分前に決定したものだ。われわれはあらゆる選択肢を議論している」と釈明した。