KDDIが4月11日、5Gの通信速度を向上させたと発表した。ニュースリリースで、技術的な「カラクリ」と、このタイミングの意図を示した。
●通信速度向上のカラクリ
まず、通信速度向上のカラクリについては、「Dual Band Massive MIMO Unit(DB-MMU)」という新たな無線装置を導入したと説明している。これは、従来は周波数帯ごとに分けて設置していた無線装置を1台に統合し、Sub6の3.7GHz帯と4.0GHz帯の2つの周波数を同時に利用できるようにしたものだ。
DB-MMUでは、多数のアンテナ素子を利用したMMUのビームフォーミング技術の適用により、利用する場所に電波を効率的に届ける。同時に複数のユーザーの通信を収容するMulti-User MIMOを活用し、高密度な通信を実現することも可能だ。従来装置と比較して小型軽量(サイズは約2割、重量は約4割削減)のため、容易に設置可能な点も特徴となっている。
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複数の周波数を重ねるキャリアアグリゲーション技術により、1つの周波数のみに対応した従来のMMU装置と比較して最大2倍の通信速度を実現する。ただし、5G SA(スタンドアローン)サービスに対応したスマートフォン、タブレット、モバイルWi-Fiルーターが必要になる。
●なぜこのタイミングでDB-MMUを導入?
次に、導入タイミングの意図についてだが、KDDIがDB-MMUを商用導入したのは2025年3月。ニュースリリースでは、4月13日から開催される2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)の屋外イベント会場で活用することを明らかにしている。
大阪・関西万博は、世界中から多くの人々が集まる国際的なイベントであり、高速かつ安定した通信環境の整備が求められる。そのため、KDDIにとっては自社の技術力をアピールする格好の舞台であると同時に、大規模イベントを活用して新技術の本格運用をスタートさせる絶好のタイミングだといえる。
●品質改善への努力を怠らずに継続していく姿勢 DB-MMUは鉄道路線や商業地域などでも導入
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KDDIは2024年度、5Gの大容量・高速通信を実現するSub6(3.7GHz帯/4.0GHz帯)について、基地局の出力強化やアンテナ角度の最適化を進め、利用可能エリアの拡大を図った。Sub6のエリア全域において、5G SA方式によるサービスを開始している。
さらに、4Gを含めたネットワーク全体の最適化や、通信速度(スループット)の向上、遅延(レイテンシ)の改善といった通信品質の向上にも継続的に取り組んでいる。
世界的な通信評価機関である英Opensignalが2024年10月に発表した日本市場における通信体感分析では、全18部門のうち13部門で最多受賞を果たし、2025年2月に発表されたグローバル市場の通信体感分析においても、6部門中3部門で世界1位を獲得した。
KDDIの通信品質向上の取り組みが功を奏した形だが、松田浩路社長は10日の就任会見で、品質改善への努力を怠らずに継続していく姿勢を見せた。
KDDIは、2025年夏以降、多くの人が利用する鉄道路線や商業地域などの生活動線でもDB-MMUを順次導入し、Sub6の2周波数を同時利用することで、さらなる品質向上に取り組んでいく考えを示している。
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