佐々木朗希選手 公式Instagramアカウントより引用 現地9日(日本時間10日)、ドジャースがナショナルズとの接戦を制して連敗を3で止めた。
これで東海岸の遠征6連戦を2勝4敗としたドジャース。移動日を1日挟み、現地11日(日本時間12日)から、ドジャースタジアムでカブスとの3連戦を迎える。
◆安定性を欠く先発投手陣の現状
ここに来てドジャースの大きな懸念材料となっているのが「安定性を欠く先発投手陣」である。
特に直近の4試合は、先発投手が合計21失点と乱調気味。新戦力のブレーク・スネルが左肩の炎症で負傷者リスト入りするなど、層の厚いドジャースといえども、先発陣は苦しい台所事情となっている。
そんなドジャースの先発陣を支えているのが、こちらも質・量ともに豊富な救援陣だ。ドジャースの今季チーム防御率は、メジャー全体で6位の3.22だが、その内訳は先発投手が4.27、救援投手が2.25である。ドジャースがメジャー最多の8試合で逆転勝利を収めているのは、まさに好調な救援陣の活躍あってこそだ。
さらに救援陣の貢献度の高さを示しているのが、投球イニング数である。先発陣と救援陣の投球イニング数を比較すると、前者の59回に対して、後者は64回。救援陣のイニング数が先発陣のそれを上回っているのは、メジャー30球団の中でもちろんドジャースだけである。
それだけドジャースの先発投手が早い回にマウンドを降り、救援陣がそのしりぬぐいをしているということになるが、この状態が続くようなら勤続疲労の懸念も生じかねない。
◆佐々木朗希も「救援陣の負担増」の一因に…
そんな救援陣の負担増の一因となっている一人が、ほかでもない佐々木朗希である。
ご存じの通り、東京シリーズの第2戦でカブス相手にメジャーデビューを飾った佐々木は、防御率こそ4.15とまずまずの数字を残しているが、3試合合計で投じたイニング数は8回1/3。特に開幕からの2試合はイニング数を大きく上回る四球数を記録するなど、酷い制球難に見舞われ、早々と交代を告げられたのは記憶に新しい。
前回登板のフィリーズ戦でようやく明るい兆しを見せ、5回途中まで1失点と好投し、課題の制球力も大幅に改善。四球も2個にとどめた。
それでも佐々木の早期降板は、今後もしばらく避けられないだろう。
というのも、ドジャースは佐々木にかなり厳密な球数制限を課しているためだ。チームやロバーツ監督が公言しているわけではないが、デビュー戦からの佐々木の球数は「56→61→68」。
まだ仕上がり途上だった初戦は50〜60球という制限があったとみられるが、2試合目以降も徐々にしか増えていない。今後も「75→80→85」など計画的に球数を増やしていく考えだろう。
◆ドジャースの方が過保護な現状
佐々木はドジャースにとって大切な“金の卵”。とはいえ、その過保護ぶりは昨季まで佐々木が所属した「ロッテ時代をも凌ぐ」ともいえそうだ。
佐々木が18試合に先発した昨季は、半数以上の試合で100球を超えており、5月にはプロ入り後、自己最多となる123球を投じた試合もあった。
一部のファンから“温室育ち”と言われ続けてきた佐々木だが、今のところロッテ以上にドジャースの方がより室内温度は高い印象。メジャーの水に慣れるまでは一定の温度を保つだろう。
ただ、救援陣の負担を考えると、遅くても5月下旬ごろまでには、先発投手の目安とされる100球前後の投球数が求められる可能性もある。特に佐々木は中6日と十分な登板間隔を与えられているだけになおさらだ。
◆過保護は球数だけではない?
また、ロバーツ監督の過保護ぶりは球数に限ったことではない。制球が比較的安定していた前回のフィリーズ戦も5回に2人の走者を出すと、すぐさま交代の決断を下した。もちろん球数も理由の一つと思われるが、早めの継投で佐々木の精神的ダメージを軽減する意図もあったのではないか。
佐々木の次回登板は現地12日(日本時間13日)のカブス戦に決定済み。ロバーツ監督の“親心”に応えるパフォーマンスを発揮できるのか。それとも制球難がぶり返し、さらなる救援陣の負担増を強いることになってしまうのか。
次こそ、ロッテ時代に何度も見せた快刀乱麻の佐々木らしい投球を期待したい。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。