能登半島地震の被災者が入居する仮設住宅=10日、石川県七尾市 昨年元日の能登半島地震と9月の豪雨で石川県内に開設された避難所が13日で全て閉鎖される。だが、多くの被災者が仮設住宅で暮らし、住宅再建は進んでいるとは言えない。時事通信が仮設入居者のうち120人に実施した聞き取り調査では、今後の住まいに不安や悩みを抱えている人が7割を超え、資金や年齢の壁が浮かび上がった。
聞き取りは3月下旬以降、能登半島6市町の仮設住宅9カ所で行った。今後の住まいについて「不安や悩みを抱えている」としたのは92人で、77%に上った。「抱えていない」は24人(20%)、「どちらとも言えない」は4人(3%)だった。
不安や悩みを抱えていた92人に、理由を自由回答で尋ねたところ、52人が「資金や建築費」の問題に言及。36人が「年齢や健康」の課題を挙げた。
穴水町の66歳男性は、自宅解体後の更地に小さな家を建てたいと願うが、「平均寿命まであと10年か15年で借金をするのは厳しい」と話す。自宅再建中の七尾市の60代女性は建築費の高騰に触れ「当初坪単価70万円と言われたが、数カ月後には坪100万円を超えた。将来施設への入所が必要になっても、もう貯金がない」と訴えた。
人口流出など「地域コミュニティー」に関して不安や悩みを抱える人も17人いた。輪島市の65歳女性は自宅の再建場所を市内か市外かで悩んでいる。「更地になった土地を見るのもつらい。ここにどれだけの人が戻るのか。先に進まないといけないが進めない」と語った。
再建の難しさを背景に、全体の37%に当たる44人は、自治体が低家賃で提供する災害公営住宅への入居を検討すると回答した。輪島市の83歳女性は当初、自宅再建を目指していたが、昨年暮れに体調を崩し、「家を建てている場合じゃない。子に迷惑をかけるわけにいかない」と公営住宅に考えを変えた。
県は住まいなどに関する被災者の困り事に対応するため、来月から6人の相談員を配置。仮設住宅に入居する各世帯を訪問する。

13日に閉鎖される石川県輪島市の最後の避難所。既に仮設住宅への鍵の引き渡しを終え、人けは少なかった=12日午前