「働くほどに損をする日本」はなぜ生まれた?財務省の“増税路線”で日本経済は壊死する。国会議員・島田洋一氏が警鐘

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2025年04月13日 09:10  日刊SPA!

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キャプテンフック - stock.adobe.com ※写真はイメージです
 ロシアとウクライナの停戦をめぐるアメリカとロシアとの駆け引き、ガザ再建の問題、またアメリカによる相互関税。この関税を日本は24%課せられ、これによって日経平均株価が急落する事態に――。
 2025年1月にトランプ大統領の就任によって、世界ではさまざまな混沌とした事態が起きている。

 トランプ政権に精通しており、最近『世界は利権で動いている』を上梓した国会議員の島田洋一氏によれば、「世界は『利権』で動いている。それは一つの国の内部で激しいせめぎ合いを生み、国家間の闘争やテロ勢力との戦いなどにも絡んでくる。

 天然資源や漁場をめぐる『領土利権』、補助金拡大を求める『再生可能エネルギー利権』、常に増税、天下り先確保を狙う財務省に代表される『官僚利権』などと枚挙にいとまがありません」と世界の情勢の実態を端的に指摘する。

 となると、冒頭の事態は、収束するどころか、まだまだ続くということなのかもしれない。

 一方、日本経済に目を向けてみると、物価の高騰、実質賃金のマイナスなど、景気のいい話は一向に聞こえてこない。そこで、財務省の増税路線も一因という島田氏に、日本経済がなぜこのように低迷してしまったのかについて、鋭く切り込んでもらった。

(本記事は、『世界は利権で動いている』より一部を抜粋し、再編集しています)

◆日本経済はどうすれば成長する?

――ずばり! 日本の経済成長のための方策についてはどのようなものがいいのですか?

島田洋一氏(以下、島田):国を強靭化し、一般庶民の生活を底上げするには、経済を健全なかたちで成長させねばなりません。そのための王道は、減税と規制改革を通じて経済を活性化させることです。

 税率を下げても、それが経済成長につながれば、財政的にも自然増収が生じます。減税と軍備の強化は両立します。米国のレーガン政権が実証したとおりです。

 しかし、減税には財務省を裏の司令塔として大きな抵抗があります。

――財務省が所管する税金であるガソリン課税が物議を醸しだしています。そもそもガソリン課税の実態と問題点はどのようなものなのでしょうか。

島田:日本の場合、安倍首相後の自民党は完全に財務省のコントロール下にあります。たとえば、ガソリン税です。これは近年国際的に、「地球温暖化対策」といった美名のもとに提示されることが多いです。

「ガソリンを消費すると、その分炭素の排出が増えて地球に害をもたらす。気候変動危機が進行する中、税率を上げてガソリン消費を抑えるべきだ」といった理屈で増税が正当化されます。「気候変動対策という国際的義務を果たすための増税」というわけです。

 日本の場合、ガソリンに掛かる税金は、石油石炭税、ガソリン税本則分、ガソリン税上乗せ分(旧暫定税率)、消費税から成っています。

 このうち「上乗せ分」は、法律上、全国平均でガソリン価格が3カ月連続で160円超となれば課税停止することになっていますが、停止措置を「凍結」して下げない「違法状態」を続けてきました。

 加えて、ガソリン消費税は、上記の諸税を含めた「ガソリン代」全体に掛ける仕組み(税金に税金を掛ける二重課税)となっていて、そもそも税理論の基本に反しています。

 近年、ガソリン自体の価格が高騰し、ガソリン減税どころか、「課税停止」すべき上乗せ分の増税を続けている上に、消費増税までしている状態です。ふざけ切った話というほかありません。

 減税でガソリン価格を下げれば、物流コストが下がり、その分、物価全般を低下させ、間違いなく消費が活発化して経済成長につながります。それゆえ日本保守党は、「ガソリン減税で物流コストを下げ、経済を活性化させよ」と主張してきました。

◆声を上げて戦う議員がいない与党に期待すべきでない

――先ほどの質問で、自民党は完全に財務省のコントロール下にあるとおしゃっていました。自民党と財務省の減税に対する問題点はどこにありますか?

島田:いまの与党自民党では、高市早苗や小林鷹之など自称保守派も含め、声を上げて闘う議員が一人もいません。まだ自民党に期待する人がいるのが不思議です。

 財務省は体質的に、「均衡財政」を金科玉条(きんかぎょくじょう)視します。

 単年度で国庫収入と支出を一致させなければ財政破綻を招く、それゆえ、ある部分で減税措置を取るならば、同時に別の部分で増税措置を取らねばならないと主張して、あらゆる減税案を潰しに掛かります。財務省はこのイデオロギーの使徒と言ってよいでしょう。

――一方、アメリカではトランプ政権になって、アメリカ・ファースト政策を進めています。共和党に代表される保守派の財政に対する考え方について教えてください。

島田:いまでは減税が旗印と言える米国の保守派(共和党)も、1970年代までは、均衡財政を基本的な財政理念としていました。国債を発行(すなわち借金)して国の事業を進めるのは財政的に不健全とされ、収支を単年度で一致させることこそ保守の姿勢だとされました。

 しかし、1980年代、ロナルド・レーガンが大統領に就任し、従来の共和党路線とは基本的に異なる立場を打ち出しました。減税と規制緩和によって経済を活性化させれば、結果として自然増収がうまれ、財政面でもプラスが生じるという発想です。

 いまでは、静的でなく動的(ダイナミック)なこの考えが、共和党の正統路線となっています。

◆「税収第一」の制度を緩和すれば結果として財政も黒字に

――最後に再び日本経済についてお聞きします。これからの課題と警鐘を鳴らすとしたら、どのようなことなのかを教えてください。

島田:減税で、働くほどに可処分所得が増えるとなれば当然、人々の勤労意欲は高まります。

「103万円の壁」や「130万円の壁」など働き控えを生んできた「税収第一」の制度を緩和すれば、経済活動が盛んになり、人々の消費が増え、GDP(国内総生産)が伸びます。その結果、自然増収によって財政も黒字になります。

 財務省が抵抗するのは、組織の宿痾(しゅくあ)でいかんともしがたいとしても、経済成長を第一に考えるべき政治家がその尻馬に乗るのは言語道断であり、職務放棄というほかありません。

 増税路線を続ければ、庶民の生活が苦しくなるだけでなく、経済成長が阻害されて「自然減収」となり、財政も中長期的に悪化します。

 その穴埋めのためさらに増税となれば、日本経済は壊死します。いまの日本はまさにそうなりつつあるのです。

<構成/日刊SPA!編集部>

【島田洋一(しまだ よういち)】
1957年大阪府生まれ。京都大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了後、京大法学部助手、文部省教科書調査官を経て、2003年、福井県立大学教授。 23年より名誉教授。24年10月の衆議院総選挙において日本保守党から出馬、近畿ブロック比例代表で当選。同党政調会長、拉致問題対策本部長を務める。
『腹黒い世界の常識』(飛鳥新社)、『ブレーンたちが明かした トランプで世界はこう変わる!』(ワック)、『許されざる者たち』(飛鳥新社)などベストセラー著書多数。Xフォロワー数は20万人を超える。
YouTube:「島田名誉教授チャンネル」
X:@ProfShimada

このニュースに関するつぶやき

  • …なんかいかにも競馬場みたいな題だなw
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