
日本には古くから人間に化ける「化け猫」や「化け狸」などの存在が言い伝えられています。現在webアクションで連載中の『チュンの恩返し』は(作:梵辛)は、人間に化ける一羽のスズメと青年画家による交流を描いた作品です。以前梵辛さんのX(旧Twitter)に第39話がポストされると、約1万もの「いいね」が寄せられています。
【漫画】林の中に現れた怪物とは…「チュンの恩返し」全編を読む
物語は青年画家「お絵かきさん」が、怪我した一羽のスズメを助けたことから始まります。そして、その晩、助けたスズメが人間に化けた姿でやってきては自身を「おチュン」と名乗り、お礼にと恩返しを試みるのです。その後も健気に何度も恩返しを繰り返した挙句、おチュンは新しい里を探しに行くために旅立つのでした。
―埼玉県の大空市、公園の大規模な再開発が進んだことにより、住処を追われ各地の生き物が縄張りから離れることに。そして、生き物たちの生存競争は熾烈なものとなっていくのでした。
東京の公園、猫はエサのためにハムスターを必死に追いかけていました。ハムスターは探し当てたひまわりの種を空腹の兄弟たちに届けるため、猫も家族のため、お互いに走り続けます。
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ついに猫パンチがハムスターの顔面にヒットし、その時にくわえていたひまわりの種が飛んで、たまたま居合わせたおチュンの口に。そして、ピンチと察したハムスターは仕方なく「ころ丸」という人間の姿に変身。さらに猫も「テマネキ」という化け猫の姿となり、最後におチュンも人間の姿に化けます。
それぞれが人間に化けたところで、ころ丸は“化けられることが猫たちにバレたら不必要な恨みを買って全面戦争になる”と、化けたくない理由を述べます。テマネキも他の生き物とのわだかまりは、少ないに越したことはないと考えていました。
そして、話題は、最近噂されている「林の中の怪物」のことに。この怪物は「辺りの食べ物をかき集める」「お腹を空かせて集まってきた動物たちを食べてしまう」などの行為に及んでいるらしく、実際に見たものは誰もいません。そして、猫、ネズミ、鳥で協力して林の中の怪物からごちそうを奪い取れたら、お互いに争そわずに済むという考えに落ち着きます。
その後、各集団が林の中の怪物の縄張りに向かって進軍。リーダーのおチュンが先に怪物の縄張り付近に侵入すると、そこには横になっているお絵描きさんが。お絵描きさんは新しいアトリエとして格安の古びた家を借り、生き物をスケッチするため庭にエサ箱を設置。それが回りまわって「林の中の怪物」というあらぬ噂になったようです。
真実を知ったおチュンはころ丸とテマネキに危険ではないことを伝えるも、そもそもおチュンが怪物とグルだと勘繰ってしまい、その場から退散。そして、お絵描きさんは生き物を肉眼で見ることを諦め、エサ箱にライブカメラを設置することにしたのでした。
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読者からは「動物たちも、化けた姿もかわいい」「癒された」などの声が。そこで梵辛さんに、同作を描いたきっかけについて話を聞きました。
―同作を描いたきっかけを教えてください。
幼少の頃に親戚からセキセイインコを譲渡してもらったことで、小中学生という多感な時期を小さい鳥と暮らす生活でした。そこからいつか鳥を題材にした漫画を描いてみたいなと思っていたので、より世間一般で親しみを持って認知されている、しかし、人間とべったり仲良くするイメージはない雀を主人公にした、人間と動物の距離感をテーマにした漫画を考えました。
―第39話の中で、特に気に入っている場面があれば、理由と一緒にぜひお聞かせください。
鳥、ネズミ、猫の集団が一斉に進軍する大コマのシーンです。野生の動物をモチーフにした漫画を描こうと思った時に、動物の種類ごとでそれぞれ対立しているという図式はすぐに思い浮かんだのですが、それらが一時共闘するようなカッコいいシーンを描いてみたいな、と思ったところからこの漫画の着想はスタートしました。
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―連載作品に取り組んでいる時の特に大変なこと、常に意識していることを教えてください。
SNSに公開する際にはそれぞれ1話ごとの読切作品として読まれるので、1話ごとにまとまった内容にしながらも、前後のお話の文脈を載せていくという作業が大変です。情報をどこまで増やすか削るかということばかり気にしてしまうと、肝心なところである漫画を面白くすることを忘れてしまいかねないので、ここを一番頑張らなきゃいけないなと思っています。
―読者にメッセージをお願いいたします。
お話を頑張って描きたいというのがまず半分で、もう半分は動物のかわいさを描きたいというのがこの作品です。発売中の単行本2巻では一気にキャラクターが増えてやたらとにぎやかになってしまいましたが、3巻ではこれらのキャラクターについてより詳しく描いていって、読者さまにも好きになってもらえたら嬉しいなと思います。
(海川 まこと/漫画収集家)
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