超人たちが34年ぶりに東京へ!今年9月に開幕する「東京2025世界陸上」を前に、これまで歴史に名を刻んだ伝説のアスリートたちを紹介する。
2007年世界陸上大阪大会の男子110mハードルでは、前年に世界新記録を樹立した劉翔(当時24、中国)が準決勝でまさかの組2着に。決勝は不利とされる9レーンからスタートも、後半に驚異的な巻き返しをみせ、金メダルを獲得した。
2007年世界陸上大阪大会、男子110mハードル決勝。8人の決勝進出選手が出揃う中、不利と言われる9レーンにまさかの男がいた。中国の劉翔だ。
2004年アテネオリンピック™では世界記録に並ぶ12秒91で優勝し、オリンピックの陸上トラック種目においてアジア人初となる金メダリストに。2006年には12秒88で世界記録を樹立し、金メダル最有力候補といわれていた劉翔だったが、この大会の準決勝ではまさかの組2着。9レーンで決勝を迎えることになったのだ。
9レーンはなぜ不利なのか。大会が行われた、長居競技場を何度も走ったことがある当時の日本記録保持者・谷川聡氏は「内側は追い風が吹いていても、(9レーン)は向かい風が吹くことがある」とその理由を語った。
ライバルの急成長 絶対王者に迫る影決勝に残っていたライバルたちも充実していた。アトランタ五輪の金メダリストで“ハードルなぎ倒し男”、アレン・ジョンソン(アメリカ)の練習パートナーでもあり、“シルバーコレクター”との異名を持つテレンス・トランメル(アメリカ、当時28)が5レーンに。7レーンには大会前々日に急遽、繰り上げ出場が決まったアメリカの伏兵、デビッド・ペイン(アメリカ、当時25)。そして最も注目を浴びていたのは準決勝で劉翔に先着し、決勝は4レーンでのスタートとなったダイロン・ロブレス(キューバ、当時20)だった。直前の大会でも劉翔を制し、110mハードルの世界に新風を吹き込んだロブレスの最大の武器は、大抵の選手が8歩で1台目のハードルに向かうのに対し、7歩で走ることが出来たことだ。
51歩のドラマ 世界を震撼させたラストスパート静寂を切り裂く号砲が鳴った。一斉にスタートし、わずかに抜け出したのはトランメルだった。対照的にスタートでやや遅れた劉翔だったが、中盤から猛追。9台目辺りでついにトランメルを捕らえると、12秒95でフィニッシュ。ゴール直前にはトランメルを見る劉翔の姿があった。
歓喜の雄叫びを上げた劉翔は、悲願の自身初となる世界陸上での金メダルを獲得。シルバーコレクターと呼ばれたトランメルはこの大会でも銀メダルに終わった。銅メダルはペインで、注目されていたロブレスは4位に沈んだ。
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【日本人選手】
◆泉谷駿介(25、住友電工)13秒04 ※日本記録
19年世界陸上代表、22年世界陸上準決勝、23年世界陸上・5位
◆村竹ラシッド(23、JAL)13秒04 ※日本記録
22年世界陸上代表、24年パリ五輪5位
【外国人選手】
◆グラント・ホロウェイ(27、アメリカ)12秒81
24年パリ五輪・金、23年世界陸上・金
※ワイルドカード
◆ハンスル・パーチメント(34、ジャマイカ)12秒93
12年ロンドン五輪・銅、21年東京五輪・金、
15年世界陸上・銀、23年世界陸上・銀
※名前の後ろは自己ベスト
※東京2025世界陸上への出場は未確定