いま歌いたい曲を集めたEP!夏川椎菜「Ep04」リリース記念インタビュー アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。2025年5月号には、『Ep04』をリリースした夏川椎菜が登場。
いい意味で傾いたバランスの1枚
――今回のEPは、夏川さんがいま「やってみたい」「歌ってみたい」楽曲を集めたそうですね。
収録する5曲はこれまでシングルやアルバムのコンペでいただいた曲なんです。シングルやアルバムはコンセプトが決まっているので、好きだけど入れられない曲がたくさんあって。たとえば「グッドルーザー」は、2ndアルバムから温め続けていたので、ようやく世に出せたなという気持ちです。
――夏川さんが考える、EPという盤の魅力と言われたらどこですか?
季節やコンセプトなど、表題に関係なく曲を入れられるところです。それもあって、タイトルもあえて曲から引っ張ってくるのではなく『Ep04』としました。
――たくさんあるストックのなかから今回の5曲を選んだ理由は?
いままではゴリゴリの熱いアレンジやロック調の曲を歌うことが多かったんですが、もうちょっと大人っぽい感じのメロディやアレンジの曲があってもいいんじゃないかと思って。いまの私に合う曲を考えて選んでいきました。
――それぞれの曲についても教えてください。まずは、ご自身が作詞を担当した「テノヒラ」から。
オルタナティブかつシンプルなメロディから感じた、ノスタルジーを歌詞でも表現したいと思いました。そこで、子供のころを振り返り、大人になったいま、自分と違う人とどう向き合うかをモチーフに作詞をしました。「人は見た目じゃない」など、子供のころに言われていたことを、やっと大人になって理解できた、身に染みて感じられるようになったからこそ書けた歌詞だなと思っています。この曲は、さらっと歌えてしまうのですが、メッセージ性が強いので、少しでも印象に残るような歌い方を心がけました。
――タイトルがカタカナであるところも目を引きますね。
歌詞のなかだと「手のひら」なのですが、そのままタイトルにするとカッコよくないなと思って(笑)。それから、自分のなかで手のひらがキラキラと光って曲が終わるようなイメージがあったんですね。そのキラキラ感を表現するのにカタカナのほうがしっくりきたので、カタカナに決めました。
――「テノヒラ」はMVも制作されていますが、夏川さん的な見どころと言われたらどこでしょうか?
MVによってEP全体の印象が決まってしまわないよう、コンセプチュアルなものにはしたくなかったんです。それもあって「テノヒラ」のMVではありますが、ほかの楽曲にも通じるような、自然な感じを意識しつつ、リップシンクは少なめで、誰しもが懐かしいと思えるような、なじみのあるものにしたいとお願いしました。歌詞に繊細な表現を用いたこともあり、「テノヒラ」というタイトルではありますが、手のひらをバーンと映すような、直接的な表現は避けたかったんです。それでいて、途中で象が出てくるシーンもあり、見た人がよくわからなかったなと思って終わるようなMVになりました。でも、象が登場するのはすごくいいシーンなので、よくわからなかったけど、いいものが見られたな、くらいに感じてもらえたらうれしいですね。
――「グッドルーザー」も夏川さんの作詞ですね。
アラームが鳴る5分前にこむら返りで飛び起きた経験があったので、それを存分に生かしました(笑)。10年前だったらこんなことはなかっただろうし、これからはこういうことも増えていくんだろうと感じて。その感覚がダウナーな曲にハマりそうだと思ったんです。ただ、それをネガティブに捉えているわけではないんです。どんなに幸せな人でも体にガタが来たと感じることはあると思うし、それをギターをジャカジャカとかき鳴らしながら「これも人生だぜ」って叫ぶようなコミカルさも感じてほしくて。私のイメージでは、この曲は斉藤和義さんなんですね。レコーディングでも、ちょっと牙を出しつつもあくびをしているような、歌詞に寄り添いすぎず、けだるげになりすぎないイメージで歌いました。タイトルに「グッド」と入れたのは、「ルーザー(負け犬)」という言葉を少し持ち上げて、「いい負けっぷり」みたいな意味合いに聞こえたらいいなと思ったからです。
――「スキ!!!!!」は、とても爽やかなナンバーですね。
前回のアルバムで集めていただいた曲のひとつなのですが、清涼飲料水のCMで流れるような爽やかさがあって、チーム夏川的には意外な選曲ですね。私の曲はどちらかというと隙間産業というか、マイナー気味な曲が多いので、選びづらい曲だったんです。でも、このタイミングなら歌ってみるのもいいかもと思い、挑戦してみました。
――この曲でも夏川さんが作詞を担当していますが、歌詞のポイントを教えてください。
「テノヒラ」や「グッドルーザー」は、これまでの歌と地続き感があるのですが、「スキ!!!!!」は曲調的にそれが通用しなさそうだったので、まず「皮肉は言わない」「前向きにしよう」と考えました。仮のタイトルとしてついていた「ジャンプ」が歌詞にも使われていたのですが、私はジャンプをしないし(笑)、でもそれ以外の歌詞も思いつかず、どうしようかと考えて。これまでになかったコール&レスポンス曲もいいかなと思い、お客さんがコールしやすい言葉、言いたくなる言葉として「スキ」が思いついたんです。
――「好き」にも種類がありますが、夏川さん的にはどの「好き」ですか?
「推し活」のイメージです。「推しは推せるときに推せ」じゃないですが、「好きって言えるときに好きなだけ好きって叫べるのは素敵だね」とか、「人でも趣味でも、あなたの好きという感情に素直になろう、周りと比べなくていいよ」と、肩を叩くような曲にできたらいいなと思って前半の歌詞を書きました。後半はラストの「ダイスキ!!!!!」をロングトーンで叫びたくて、そこに向かって組み立てていきました。レコーディングでは、ディレクターさんから昔のアメリカの、若いバンドの男性ボーカルのような歌い方のリクエストがあって。がむしゃらに力任せで、頭を空っぽにして叫んでいるような歌い方がいいなと思って、あえてあまり考えずに歌いました。
――ちなみに「!」の数には何か意味があるのでしょうか?
絵文字を連投するクセがあるのですが、歌詞を見直しているときに、私が「!」を打つとしたら何個かなと思って実際にやってみたら5個だったんです。3個も考えたのですが、それだと物足りなくて。ちょっと理性がなくなっている感じも表現できるかなと思って5個にしました。
――「つよがりマイペース」は、やぎぬまかなさんの作詞・作曲ですね。
私はやぎぬまさんが以前組んでいた「カラスは真っ白」というバンドが好きで。やぎぬまさんの楽曲と歌詞のアンバランスな世界を、ずっと歌いたいと思っていたんです。なんなら全曲やぎぬまさん提供の曲でアルバムを作りたいくらいなんですが、なかなかそういうわけにもいかず、いただいた曲を小出しにしているんです。「つよがりマイペース」も以前作っていただいた曲のうちのひとつで、彼女の曲を自分の中に落とし込んで映像化するのが楽しかったです。
――sympathyさんによる「かなわない」についても教えてください。
前回のアルバムで「コーリング・ロンリー」のほかに2曲書いていただいたのですが、そのうちの1曲です。みずみずしく、自分にもこういう時代があったと思わせてくれる世界観がある曲です。身近にある喪失感ややるせなさのようなものを表現していて、繊細でありながら気の抜けた感じもよくて。声のつまみを絞って、最小限で出力するようなイメージで歌いました。この曲は、小手先でテクニックを入れようとすると、みずみずしさが失われる気がしたので、飾らずありのまま、ピッチがブレてもそれをよしとするレコーディングでした。チーム夏川は、声のブレやリズムのズレも味になるからと、そのテイクを使うことがあるのですが、それが出た曲だと思います。
――ジャケットのこだわりは?
ソロで初めてスタジオから出て、自然光のなかで撮影しました。天気がすごくよく、冬なのに夏のような日差しが差し込んでいたんです。カメラマンさんが、淡い世界を撮るが得意な方だったので、素敵な写真を撮っていただけました。
――全5曲揃ってみて、どんなEPになったと感じていますか?
今回の5曲も入れてアルバムを作るとなったら、ライブがあるから盛り上がる曲を入れたいとか、いろいろ考えてしまったと思います。でも、EPだからこそあえて整えず、傾いたバランスのままお届けできる1枚になったなと感じています。
――EP発売の翌日、4月17日には毎年恒例「417の日」のイベントが開催されますね。
毎年私が脚本、演出、さらに出演もするという夏川づくしのイベントです。何が飛び出すかは、会場に来てもわからないというサプライズ感がたっぷりで、私としては毎年お客さんにドッキリを仕掛けているようなイメージですね。最近は、前年の自分の活動を元ネタに、それをおもしろおかしくパロディする感じなのですが、今回は昨年12月にmonaというキャラクターとしてワンマンライブを行ったこともあり、サブタイトルを「夏川椎菜の萌え萌え大作戦 悶絶可愛いカバーライブしちゃうもん♡」にしました。私が大人の力を借りて全力で悪ふざけをするイベントで、今年もドタバタエンターテイメントがお届けできると思うので、楽しみにしていてください。そして、夏川椎菜がどういう活動をしているかの答えが全部「417の日」にあるので、ぜひ見に来てください。
――最後に、読者にメッセージをお願いします!
夏川椎菜のいまやりたいこと、表現したいことが存分に詰まったEPになりました。夏川を知っている方はもちろん、初めて知った方にも気持ちよく聞いていただける作品になったと思います。歌詞にも注目して、自分と共感できるところを探してみてください。
Profile
なつかわ・しいな/7月18日生まれ。千葉県出身。2017年からソロシンガーとして活動を開始。これまでにシングル9枚、EP3作(配信含む)、アルバム3枚をリリース。
声優としての主な出演作は、『響け!ユーフォニアム3』釜屋すずめ役な ど。
Information
4月17日(木)に千葉県・森のホール21にて『LAWSON presents 令和7年度417の日』の開催が決定。また、5月18日(日)には都内某所にて『Ep04』発売記念リリースイベントを開催。チケットやイベント参加方法などの詳細は、公式webサイト【https://www.natsukawashiina.jp/】をチェック。
『Ep04』
初回生産限定盤4000円(税込)
通常盤3000円(税込)
ミュージックレイン
夏川椎菜がパッケージとしては2枚目、配信を含めると第4弾となるEPをリリース。全5曲収録で、うち3曲は自身が作詞を担当。いまの夏川が「やってみたいこと」「作ってみたいもの」に挑戦した1枚。初回生産限定盤に同梱のBlu-rayには、「テノヒラ」のミュージックビデオ(MV)とTV SPOT映像を収録。