
米リーグ「LOVB」で奮闘する選手たち(2)
(1)を読む:パリ五輪代表のリベロ・小島満菜美はなぜ米プロリーグでプレーするのか 日本との違いに「最初は対応できなかった」>>
アメリカで今年からスタートした女子プロリーグ「LOVB」(League One Volleyball)でプレーするソルトレイクの小島満菜美(リベロ/30歳)と松井珠己(セッター/27歳)、オースティンの井上琴絵(リベロ/35歳)への連続インタビュー。小島に続くふたり目は、同じくソルトレイクに入団し、2025年度の女子日本代表登録メンバーに選ばれた松井。
昨季はブラジルのスーパーリーガのマリンガでプレー。2シーズン続けての海外リーグとなるが、今のチームにはアメリカ代表セッターで東京五輪金メダリストのジョーディン・ポールターが所属しており、彼女にとってその壁は高く険しい。出場時間は決して長くは得られていない。それでも、試合中はチームメートとの意思疎通を欠かさず、試合が終わってからも入念に体を動かす姿が見られた。現状について、彼女はどう捉えているのか。
【出場時間は限られても、準備は十分】
――試合後、誰よりも体を動かしていますね。
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「2枚替え(選手が2人同時に交代すること)や途中出場だけでは、動き足りていないと感じるので。レギュラーの選手と同じくらいの運動量にしておきたいと考えています。あとは、試合を振り返って『自分だったらこうしていたな』と思いを巡らせています」
――出番が終わってアップゾーンに戻ってからも、周囲と熱心に話し合っている様子も見受けられました。
「ある試合では、一緒に出ていたアタッカーがスパイクアウトになったプレーがあったので、『トスが低かったかな?』と心配したのですが、『トスはよかったよ。アタックのチョイスが問題だった』と言ってくれて。みんながモチベーションを上げてくれるので、とてもやりやすい環境です」
――主に2枚替えでの起用になっていますが、そこはどう向き合っていますか?
「気持ち的には『もっと出たい』というのが正直なところですが、チームが試合に勝てば問題ありません。逆に、チームが負けている状況でどれだけ使ってもらえるか。その信頼感を得られるように頑張りたいです」
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【アメリカ代表のセッターからも学んで成長】
――チームメートで同じポジションには、アメリカ代表のポールター選手がいます。
「アメリカでナンバーワン、と言っていいくらいの選手ですからね。日々、その選手と練習試合ができている感覚なので、とても楽しいですし、トスの上げ方ひとつにしても勉強になっています。
彼女のトスワークの特徴としては、それほど同じ選手に続けて上げることはしない印象です。そして、何よりブレない。その安定感はトス、精神的なところにも感じます。セッターというポジションはアタッカーが崩れたとしても、自分の軸をしっかり持っておくことが大事だ、と再認識しました」
――技術面で習得できていることはありますか?
「昨年から、"相手ブロックを振る"ことに取り組んできました。"ブロックを見てから上げる"ことに関して、これまでは2本に1本くらいしか見えていなくて、感覚で上げることのほうが多かったんです。それが今は、ブロックを意識しながらいいトスを上げることができている実感があります。感触としては、8割くらいできている感じですかね。
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どんなタイミング、どんな場面でもこれができれば、私も不安なくトスを上げられます。もともとトスの質には自信があるので、ブロックを振って1枚にして、アタッカーに決めやすいトスを上げられたら、それが一番。そこを詰めて練習しています」
――「LOVB」で過ごすシーズン、自身にとってどのような機会にしたいと考えていますか?
「もちろん、全部を自分の成長につなげたいと思っています。それに、試合になかなか出られないからこそ、チームやコート内がよく見えるので。選手の善し悪しがとてもわかるので、視野は広がったと感じています。
あとは、限られたチャンスのなかでいかにプレーするのか。その点に関しても、準備の仕方はこれまで以上にモノになったと感じますし、そこはレベルアップしていると思いますね。3年後のロサンゼルス五輪も意識していますが、この先はスタメン、リザーブと、立場が変わることもあるはず。どっちでもしっかりと準備して、どんなシチュエーションでも使いやすい選手になれるように、今は勉強中です」
【ロス五輪に向けて「最初からアピールしていきたい」】
――五輪に関しては、2023年のパリ五輪予選に出場しましたが、本戦ではメンバーから落選しました。
「振り返ると、昨年(2024年)の代表はほぼメンバーも固まっていて、その前年までのアピールが足りていませんでした。選ばれなかったことは素直に自分の力不足です。ですから、『悔しくて立ち直れない』ほどではなくて、自分のアピールポイントや強みを明確に身につけなければと感じました。ここからロス五輪に向け、新たな日本代表を作っていくなかで、最初からアピールしていきたいです」
――あらためて、ロス五輪への思いを聞かせていただけますか?
「出たいですね!! まだまだ体も元気ですから。それにアメリカに来て、五輪に出た選手はとても評価されていると感じました。この『LOVB』でもアメリカ代表の、それもメダリストがリーグの看板を担っています。単純に"オリンピック選手=すごい"というわけではないと思いますが......。ともあれ、私はアピールをしながら一年一年を積み重ねるだけだと考えています」
(3)を読む:リベロの井上琴絵がサーブやバックアタックでも活躍 米リーグで堪能している「最後のチャンス」>>
【プロフィール】
松井珠己(まつい・たまき)
1998年1月10日生まれ、千葉県出身。ソルトレイク(アメリカ)所属。身長170cm。セッター。日本女子体育大学時代からアンダーエイジカテゴリー日本代表として主力を担い、2019年の第30回ユニバーシアード競技大会では銅メダル獲得に貢献した。卒業後はデンソーエアリービーズで3季を過ごしたのち、2023/24シーズンはブラジルでプレー。経験を積み重ねる。