4月15日、コミュニケーションアプリ「LINE」上で使える生成AI機能「LINE AI」が登場した。すでに日本人のコミュニケーションインフラとして浸透しているLINE上で、どんな機能が使えるのか、詳細をチェックしていく。
●ホーム画面からAIチャット&画像生成が利用可能に
新機能は大きく分けて3つ。1つ目は、ホーム画面から使える「AIチャット」機能だ。ChatGPTのようにAIとテキストでやりとりができる。LINEヤフーは天気を尋ねるといった使い方を提案している他、ChatGPT同様相談事なども可能だろう。画像の入力も可能で、例えば日本酒の画像を入力すると、蔵元の情報を提示してくれた。ただし、少なくともユーザー側からWebブラウジングを行うよう指示はできない。
2つ目は文章から画像を生成してもらえる「AIキャンバス」だ。「茶色い猫の画像を出して」と頼めば、その通りの画像が出力される。ただし、こちらは画像の入力に対応していない。
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ちなみに、検証目的で特定の人物やキャラクターなどの生成を指示したり、アダルトな要素を含む語を入力したりしたところ、「ネットワーク接続を確認して、もう一度お試しください」とのメッセージが表示され、対応を拒否される場合があった。ただし、出力が絶対にできないわけではなく、一部は指示が通ってしまうケースもあった。
どちらの出力物も、シェアボタンを押せばLINEの友達やグループに共有が可能だ。AIチャットもAIキャンバスも無料だが、1日当たりの利用回数に上限がある。具体的な回数は不明。
モデルは不明なものの、機能の提供には米OpenAIのサービスを利用しているという。AIに送った画像やテキストが学習されたり、LINEヤフーが業務に利用したりする可能性については、少なくとも利用規約には記載がなかった。
●「どんな返信にしよう」をAIに任せられるように
3つ目は、友達に送信するメッセージやスタンプの提案を行う「AIトークサジェスト」だ。試験的な機能を先行体験できる「LINEラボ」で設定を有効にすれば利用できる。
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設定をONにすると、メッセージ送信にAIマークが表示される。これをタップすると、AIが直前のやりとりを分析した上で、返信の候補を出してくれる。「短く」「丁寧に」など、候補のメッセージをさらに変更することもできる。メッセージ欄に文章を下書きし、その長さや口調をAIで変換することも可能だ。
さらにLINEスタンプの設定から「サジェスト表示」をオンにしていれば、スタンプの送信候補も選んでくれる。こちらも、利用しているのはOpenAIのサービスという。
AIトークサジェストはAIチャットとAIキャンバスとは別に利用規約が存在し、送受信したメッセージの扱いも一部異なる。規約によれば「利用するトークルームで送受信した最新15件のメッセージのテキストなどのコンテンツ」と、メッセージ変換機能に関する入力のうち、メッセージ欄に記入したテキストについては、LINEヤフーやグループ会社がサービスの改善に使う場合があるという。
●実際に使ってみた 現時点ではそこまでだが……
早速知人に付き合ってもらい、十数回程度のメッセージのやりとりで一連の機能を使ってみたところ「現時点ではあまり感触が良くないが、機能が便利になれば、これまでAIに触れてこなかった人にとって良い入り口にはなるかもしれない」という印象を受けた。
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AIチャットもAIキャンバスについては、日常的にChatGPTや米GoogleのAI「Gemini」に触れている記者からすると、既存の生成AIサービスを取りあえずLINEに組み込んだ以上のものではなく、LINEの体験が大きく改善した印象はなかった。ただ、ChatGPT同様相談事やアイコン作成には使えるし、これまで生成AIを体験してこなかった人にとっては、AIの利便性を享受できるいい機会になるはずだ。音声入力ができるとより直感的でいいかもしれない。
AIトークサジェストについても、今の時点ではユースケースが限られるものの、ポテンシャルを感じられた。LINEユーザーの中にはアルバイト先や町内会での連絡など、厳格ではないもののある程度の丁寧さが求められるやりとりにLINEを使っている人もいるだろう。同様の連絡事項への対応は得てして面倒なものだが、それに頭を使わず返答できるのは便利そうだ。
ただ、日常会話を全てAIに任せられるほどではない。記者は基本的にはカジュアルに会話ができる知人とのみLINEでやりとりしており、その際は端的なネットスラングや短い返信を多用するため、AIの補助があまり必要ない。例えば「この動画見てよ」というメッセージに対してはだいたい「見た 面白い」くらいの返答だが、AIは「この動画、面白そうだね! 動画の題材が今後どのように進化するか楽しみだな〜」といった返信を考える。これはちょっとやりすぎだ。実際に知人に送ったら「お前らしくなさすぎる」と言われた。
ただ、仮に記者の返信のくせを学習し「見た 面白い」といった回答を一発で出してくれるようになるなら、応答をかなりお任せできるようになりそうと感じた。現時点でも「短く」「親しみやすく」と口調変換の指示を重ねれば端的な内容にはなるので、例えば口調の変換をプロンプトで指示し、その設定をユーザーごとに保存できる機能があると使いものになるだろう。例えば「よそいきモード」「友達と話すモード」を切り替えられたら便利そうだ。
総じて、ChatGPTなどがすでに導入している機能をLINE上でも使えて、それがメッセージのやりとりに関するUXとうまく融合すれば便利になりそう、というのが記者の所感だ。これまで、LINEの生成AI機能はあまり目立ってこなかったが、AIトークサジェストを中心に利便性が増していけばより存在感は高まるかもしれない。人口に膾炙しているだけに、AIの特徴が広く知られるきっかけにもなり得るので、今後の改善に期待したい。
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