観光客らでにぎわう中国チベット自治区のラサ市内=3月29日 【北京時事】中国の1〜3月期の経済成長率は5.4%と、政府が今年の目標に掲げる「5%前後」を上回った。ただ、トランプ米政権が対中追加関税を急速なペースで引き上げる中、景気失速の懸念は根強い。目標達成に黄信号がともっている。
「関税の規模は当初の予想を大幅に上回っており、中国の成長目標達成はもはや難しくなった可能性がある」。米金融大手ゴールドマン・サックスは最近公表したリポートで、米中の貿易戦争と、これに伴う世界経済の冷え込みにより、今年の中国成長率が4.0%にとどまるとの見通しを示した。
トランプ政権は4月に入り、対中関税を20%から145%へ引き上げた。これに中国が125%の報復関税で応じたことで、貿易戦争が本格化。ゴールドマンは両国間の貿易が大幅に縮小し、中国経済を支えてきた輸出が大きな打撃を受けると分析。政府が金融緩和などの景気てこ入れ策を講じるものの、成長の鈍化が避けられないと指摘した。
景気の先行きに対する不安は市民からも漏れる。チベット自治区の区都ラサでは、政府による巨額の資金投入を背景に、各地で建設工事が進む。2024年の自治区の成長率は全国首位の6.3%で、記者が訪れた3月末も市内は多くの観光客らでにぎわっていた。
ただ、土産物店を営む男性によると、売り上げはコロナ禍前の水準まで戻っていない。客の購入単価が落ちているといい、男性は「高収入を得るため四川省から移住したが、生活は厳しい」と語った。国外にも顧客を持つラサの陶器メーカーの担当者は「海外の経済と政治の動きは気にしている」と話した。
ゴールドマンは景気の落ち込みを回避するため、中国政府が財政赤字の比率を高めるとの予想を示した。