平日はお互いに極力関わらない「週末婚」を希望する女性が増加傾向。いまだに存在する「家事労働の夫婦間格差」が背景に

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2025年04月17日 16:01  日刊SPA!

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 こんにちは。結婚相談所「マリーミー」で代表を務める植草美幸です。『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)での特集をはじめ、各種メディアで見たことがある――なんて方もいらっしゃるでしょうか。
 マリーミーは設立16年となり、現在では年間約6500件もの結婚や恋愛にまつわる相談を受けています。これだけの相談を聞いていると、多くの問題はいくつかの類型に分けられ、それぞれに存在する鉄板の解決策が見えてくるものです。人間関係は十人十色のようで、対応には同工異曲の趣があります。

 リニューアルした本連載では、「結婚後のリアル」な悩みにお答えしていきます。ただ、結婚や同棲中の方だけでなく、お相手選びに迷いのある婚活中の方にも参考となるよう、手加減なしの“辛口”モードです。心してお付き合いくださいね。

◆令和の今でも時代錯誤な対応がまかり通っている

「ペアローンなのに夫にしか名刺を渡してくれない」

「書斎がほしいと言っているのに『“奥様”には家事室を』と押し付けられる」

 住宅購入時のハウスメーカーの差別的対応はいまだに見る光景だと聞きます。X(旧Twitter)などでもしばしば炎上しているそうです。

 日々、結婚後の「暮らし方の希望」や「家計の分担」について詳細を聞いている私からすると、驚愕する対応です。現代夫婦のリアルな暮らしぶりと、アップデートが追いついていないメーカー側との乖離は埋まるどころか、どんどん大きくなってしまっているのでしょう。

 そこで今回は「新婚夫婦の暮らし」をテーマにお届けしてまいります。

 というのも、価値観やライフスタイル、社会情勢が急速に変化している現代。炎上したハウスメーカーのような対応とまでいかずとも、自分自身の想定する結婚生活が時代錯誤なものや、持続可能性がないものになっている人は、少なくないはずです。

 他人事と思わずに、婚活中の方からすでに結婚生活を送っている方まで、皆さまに読んでいただきたく思います。

◆寿退社が絶滅して、「アツアツな新婚カップル」も過去の遺物に?

「新婚生活」と聞いたとき、どのような生活をイメージされるでしょうか。新婚ホヤホヤといえばラブラブでウキウキ、アツアツなもの――と書くと、語彙だけでどことなく昭和感・平成感が漂ってさえいるような気もします。

「お風呂にする? ご飯にする? それとも……」なんてネタも、専業主婦の存在が前提です。一方、令和においては寿退社がすでに稀有な事例となっていますから、そうした「ラブラブな新婚夫婦」を形容する言葉に違和感が生まれるのも、無理もないのかもしれません。

 実際に、相談所で「理想の結婚生活」のあり方についてヒアリングしていると、大きな変化がとくに女性のなかで起きているのを実感します。

 そうした女性たちの理想を端的に表すと、「家庭内週末婚」です。

 住む家が別々なのが週末婚なのに対し、この「家庭内週末婚」は同居こそしています。では「週末婚」要素がどこにあるかというと、平日はお互いに極力関わらないで過ごす点です。

 つまり、平日のあいだは、まるでルームシェアをしている友人同士や、シェアハウスをしている他人同士のように、それぞれの食事の支度や心配はしない。なんならまともに会話すらせず、帰宅後はそれぞれの自室で過ごし、寝るときも別々。

 代わりに週末は一緒に食事をし、ひとつのベッドで眠る……。と、まるで独身生活と結婚生活のハイブリッドのような暮らし方を、希望・理想とされる方が着実に増えているのです。

 フルタイム同士の共働きでも、家事分担は妻に偏ってしまう場合が多い事実を知っているからこそ、はなから「平日はそれぞれ自分のことだけに集中したい」と考える女性が多いのでしょう。

◆仕事をしながら「夫のママ」はやりたくない

 そもそもコロナ禍によって、自宅に対する考え方が大きく変わった人が多いはずです。5類移行前ほどのフルリモートではないとしても、週に何日かはリモート出勤という勤務形態も決して珍しいものではなくなりました。

 したがって「家庭内週末婚」を希望する以前に、「各自の書斎」の必要に迫られている夫婦・カップルが少なくありません。

 こうした外部的な要請も後押しとなって、「ならばいっそ家庭内週末婚に」と思う女性が増加している肌感があります。

 では、この「家庭内週末婚」の是非をアドバイザー目線で考えてみましょう。単純な選択肢としてはもちろんナシではありません。あくまで2人の生活ですから、2人のあいだで納得していればよいことです。

 残念ながら、女性がフルタイムで働いていても関係なく「お世話」を期待する男性も、減ってきたとはいえまだまだいるのも事実。

 週5で働きながら、相手の健康・希望・タイミングにあわせた食事や着替えの用意をするのは非常に大変なことですから、女性たちが予防線を張りたくなる気持ちもよくわかります。

◆子供が生まれたら、共同生活からは逃れられない

 ただし、DINKS以外の夫婦は、「家庭内週末婚」もとい「平日独身生活」をいつまでも続けることはできません。あまりに当然のことですが、子供ができれば、平日・週末に関係なく、保護者としての責任が常にあるわけです。

 子育て以前に、妊娠してつわりがない女性はたったの2割といわれます。妊娠してから、子供が生まれてから、本格的な共同生活を始めたとしても、それでうまくいけばもちろん問題はありません。

 しかし、「家庭内週末婚」が最適だと判断するようなライフスタイルの夫婦だと、各々がもともと仕事や趣味などで多忙なタイプの方が多いでしょう。

 すると、お互いに「こんなこと聞いてない!」「思っていたのと違う!」と、すれ違ってしまうのもさもありなんです。

 夫婦2人だけの状態であっても、しっかり関わり合う共同生活を営めば、「家庭内週末婚」として過ごすより、よほど喧嘩や言い争いが発生するのは当然です。けれど、2人きりのうちに共同生活上の懸念点を潰していかなければ、後から苦しむ場合も多いでしょう。

 ですから、DINKSを選択するつもりの夫婦以外なら、少なくとも妊活を始める前には共同生活を始めるのが得策といえるはず。

◆申し込まれている側は、危機感を持つべき

 もしあなたが「家庭内週末婚」をしたいと思っている側なら、きっと相手の家事能力ややる気を信じられないと考えているのでしょう。

 その予感や妥当性は否定しませんが、そうした相手は、子供ができたとしても、自動的に親らしい行動ができるようにはまずなりません。「なんで自分がこんなことまで教えなければならないんだ!」と思っても、別れたくないのなら、今のうちにあなたが鍛えようとするしかないのです。

 反対に「家庭内週末婚」を申し込まれている側は、ご自身の家事能力やその分担量、そして相手への感謝の伝え方を反省すべきです。

 フルタイム共働きである以上、お相手はあなたのお世話をしなくとも生きていけるのであり、本当はいつ捨てられてもおかしくないとの危機感をしっかり持ってください。

◆いまだに存在する「家事労働の分担格差」

 最後に2022年調査の、夫婦間における家事分担の実態*についてご紹介します。

 1日に2〜8時間以上を家事に割いている正規雇用の女性は、実に75%以上にのぼります。一方で正規雇用の男性だと、2時間未満である人の割合が8割弱です。

 しかし先ほどの数値は、妻側も“正規雇用”での数字です。正規雇用だからといって必ずしもフルタイムを意味しないとはいえ、ほとんどイコールと考えても差し支えはないでしょう。

 等しく働いている夫婦同士でも家事労働の分担格差はまだまだあり、ハウスメーカーの「家事室」提案も、憂うべき実態に即したものと言えてしまうのかもしれません。

 より多くの男性が旧来的なあり方から脱皮できたとき、そうした対応がなくなるとともに、婚姻率や出生率の数字が変わってくるのではないでしょうか。

*国立社会保障・人口問題研究所「2022年社会保障・人口問題基本調査 第7回全国家庭動向調査 結果の概要」より

<TEXT/植草美幸>

【植草美幸】
結婚相談所マリーミー代表取締役、恋愛・婚活アドバイザー。 1995年にアパレル業界に特化した人材派遣会社エムエスピーを創業。そこで培ったマッチング能力・人材発掘力を生かし、2009年に結婚相談所マリーミーを設立。日々カウンセリングを行いながら、セミナーの開催、テレビやラジオへの出演など幅広く活動中。著書に『ワガママな女におなりなさい 「婚活の壁」に効く秘密のアドバイス』(講談社)、『モテ理論』(PHP文庫)など

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