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2025年04月17日 18:01 ITmedia PC USER
アイロボットジャパンは4月18日、ロボット掃除機「ルンバ(Roomba)」の新製品として「Roomba 105 Combo」「Roomba 205 DustCompactor Combo」など6機種9モデルを発売した。エントリーからハイエンドまで、フルラインアップを一斉に刷新するのはルンバとしては初の取り組みとなる。
4月17日の発表に合わせて来日した米iRobotのゲイリー・コーエンCEOは「新たなテクノロジー、消費者が求める新機能、新しいパッケージに加えて、保証も刷新した。フルラインアップでの刷新は、かつて例がないものだ。全てが新しくなったルンバ(All New Roomba)の発表によって、ルンバの新たな章が幕を開ける。消費者のニーズや要望を反映して開発したものであり、消費者の生活を後押ししていくことができる製品だ」と力を込めた。
またコーエンCEOは「(ルンバにとって)日本は米国に次ぐ大きな市場であり、重要な市場だ。日本は“王冠の宝石”のように価値の高い市場と位置付けている。日本のユーザーはルンバを家族の一員として大切にしており、ブランドロイヤリティーが最も高い市場でもある。また、日本のチーム(アイロボットジャパン)は独創的な施策を実施している」などと評価した。
一方、アイロボットジャパンの挽野元社長は「国内クリーナー(掃除機)市場全体の中で、2030年までに5台に1台の普及を目指す。ルンバを掃除機のあたり前にしていきたい」と述べた上で、「新たなルンバは、3つのカテゴリーに分けており、その中に必ずフィットする“マイベストルンバ”がある。新製品を通して日本のクリーナー市場での存在感を高めていく。新たな一歩を踏み出す」と意気込みを語った。
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●新製品は「エントリー」「ミドルレンジ」「フラグシップ」で分類
今回発表した新しいルンバは大きく「エントリー」「ミドルレンジ」「フラグシップ」の3つのカテゴリーに分けられており、それぞれにマーケティング上のターゲットを定めている。
エントリーモデル:日本市場を強く意識
エントリーモデル「Roomba」では、「Roomba 105 Combo ロボット」「Roomba 105 Combo + AutoEmpty充電ステーション」「Roomba 205 DustCompactor Combo ロボット」の3モデルを投入する。特に日本市場を強く意識して開発してきたといい、単身世帯(1人暮らし)や間取りがシンプルな家屋での利用を想定している。
直販価格はRoomba 105 Combo + AutoEmpty充電ステーションが3万9440円、他2モデルが5万9200円と比較的手頃ながらも水拭き機能も備える。コストパフォーマンスにこだわる人にも最適だという。
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いずれのモデルも、水拭き時にモップに圧力をかける「スマートスクラブ」を装備することで、モップの拭き取り性能を2倍に強化している。また吸引力も強化している他、複数の床素材に対応できる「毛ブラシ」を装備している。
カメラセンサーの代わりにLiDARセンサーを内蔵したことで、部屋のマッピングを素早く作成し、障害物を避けつつ無駄のない動きで掃除を行えるようになった。
Roomba 205 DustCompactor Combo ロボットは、内部にごみ圧縮機能付きのダスト容器を搭載している。容器内にあるメカニカルアームを使ってごみを圧縮することで、ごみ収集ステーションがなくても最大60日分のごみを収納できる。
充電ステーションは背が低く、ベッドやソファの下に設置しやすいため、日本の家屋には最適であると訴求する。
ミドルレンジ:子育て中の家族や複数の部屋のある家族
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ミドルレンジモデル「Roomba Plus」では、「Roomba Plus 405 Combo + AutoWash 充電ステーション」と「Roomba Plus 505 Combo + AutoWash 充電ステーション」の2モデルを投入する。子育て中の家族や、複数の部屋を持つ家屋での利用を想定しているという。「Roomba(エントリーモデル)だと物足りないが、Roomba Max(フラグシップモデル)ほどの機能はいらない」という人にもお勧めとのことだ。
直販価格はRoomba Plus 405 Combo + AutoWash 充電ステーションが9万8800円、Roomba Plus 505 Combo + AutoWash 充電ステーションが12万9800円となる。
いずれのモデルも、ルンバとしては初となる2基構成の「DualCleanモップバッド」を搭載している。Roomba Plus 505 Comboについては片方のモップが外側に出る機構を備えており、壁際のモップがけをよりしっかりと行えるようになっている。
センサーはLiDAR式で、物体を認識して「避けるべきもの」を迅速に判断し、空間において最適な掃除を行うという。Roomba Plus 505 Comboについてはカメラも併載しており、カメラがごみの量を判断して、きれいになるまで集中的に掃除する「ダートディテクト機能」も備えている。
AutoWash 充電ステーションでは、本体からのゴミ回収とモップパッドの給水/洗浄/乾燥を行える。Roomba Plus 405/505 Comboの本体には水タンクがなく、モップでの水拭きをする場合はこのステーションでぬらしてから出発することになる。なお、Roomba Plus 505 Comboについてはモップの温風乾燥にも対応している。
フラグシップ:吸引力の向上に全力
フラグシップの「Roomba Max」では、「Roomba Max 705 Vac ロボット+ AutoEmpty充電ステーション」が新たに投入される。先に紹介した新モデルとは異なり、本モデルでは水拭き機能はあえて備えず、吸引力の強化に“全振り”している。
「水拭き機能は要らないけれど、ブラシにペットなどの抜け毛が絡まないロボット掃除機が欲しい」というニーズに応えたという。ペットを飼っている家庭やカーペットが多い家庭などでの利用にピッタリだ。直販価格は9万8800円だ。
その吸引力は、従来モデル(Roomba 600シリーズ)比で最大180倍となり、2本のゴム製デュアルアクションブラシによって、カーペットのごみをかき出せる。充電ステーションでは最大75日間のごみを収集可能だ。
アプリやデザインも一新
今回の新モデルに合わせて、ルンバのスマートフォン/タブレットアプリは一新され、名称は「Roomba Home(ルンバホーム)」に一新された。ユーザーの操作スタイルにあわせて、より直感的に操作ができるようにしているという。
なお、2025年2月までに発売された既存モデル向けのアプリは「iRobot Home (Classic)」として別途配信されているので、気を付けたい。
また、今回の新モデルでは、新しいデザイン言語「GRID(グリッド)」を採用している。GRIDは「Geometric(調和)」「Rational(合理的)」「Iconic(象徴的)」「Dynamic(大胆)」の頭文字を組み合わせたもので、コーエンCEOは「色、素材、仕上げには温かみと親しさ、やさしさのある知性的なテザインを採用した。どんな家庭のデザインにもマッチする」と語る。
加えて、新モデルではグローバルタグラインとして「Made for this」を採用した。挽野社長によると、「生活の全てのシーンにルンバがあり、そのためにルンバは作られているという意味を持たせた」という。
●アイロボットジャパンの2024年
発表会では、挽野社長が2024年度の日本におけるアイロボットの取り組みについても説明した。
挽野社長は「2024年に日本における累計出荷台数は600万台を達成し、国内における(ロボット掃除機の)普及率を10%にまで高めることができた。『普及率10%』は2018年に打ち出した中期目標であった。日本の家庭において市民権を得ることができた」と胸を張る。
一方で、同社は2024年4月に「指定価格制度」を導入し、長期的に価値を提供できる販売基盤が整ったことに加え、ヤマダデンキでも販売を開始することで店頭での接客機会が大きく増加した。「他の量販店でも、販売現場でのタッチポイントの質が高まっている」という。
挽野社長は販売面について「特にエントリーモデルの販売が好調で、初めてロボット掃除機を購入するというユーザーや単身世帯、ヤングファミリー層に受け入れられている。ルンバは価格が高いとして敬遠していたユーザーにも、手が届く存在へと進化した実感がある」と語る。
また、2024年度の新たな取り組みとして、2024年11月から千葉県東金市において「ふるさと納税」の返礼品にルンバのリユース品が採用された、2カ月で1000台を超える申し込みがあったことを紹介。これは同市内にルンバの修理と整備を行う「アドレスサービス」の拠点があることから実現したという。
●「存続企業の疑念」が出るも不安なしとコーエンCEO
iRobotのコーエンCEOは、2024年5月に就任した。今回の発表会は、日本で初めて参加する記者会見でもあるという。
「CEOに就任した際、業績改善のためにありとあらゆるものをエレベート(向上)し、iRobotの成功に全力を注ぐことを決意した。私は再活性化するための手助けを必要とする企業やブランドで働くことに大きなパッションを持っている。また、それに関して多くの経験がある。革新的なブランドとして知られるiRobotは、大きな成長の可能性を秘めたグローバルブランドであり、マルチチャネルを持ち、知財ポートフォリオも持っている点が強みだ」と述べる。
またコーエンCEOは「CEOに就任してからの1年間で、(iRobotに)多くの変化を生み出した。ビジネスモデルを変え、ロボットの生産/開発方法を変え、新製品を迅速かつ効率的に市場投入すべく、アジアに所在するパートナーと手を組んだ。さらに経営陣を刷新し、新製品のイノベーション、消費者フォーカスの製品設計、ブランド構築に集中する最高の人材をそろえた。iRobotはものすごいスピードで動いている」と、この11カ月の変化について説明した。
加えて、コーエンCEOは「消費者に焦点を当てることにも力を注いだ。ロボット掃除機に求められている製品と技術を明確にし、全ての価格帯と機能レベルにおいて、喜んでもらえる“iRobot体験”を提供する。機敏で、市場投入スピードを重視した革新的企業となり、これによって、業績を回復させる」とした。
そんなコーエンCEOについて、挽野社長は「人の話を丁寧に聞く、オープンで懐の深いリーダーだ。経営者としてシャープで、社員や取引先、協力会社への配慮も優れている。iRobotブランドへの理解度が高く、その価値を直感的に理解している」と評した。
そんなiRobotだが、2025年3月12日(米国時間)に発表した2024年度業績において、負債の借り換えや企業売却の可能性など、さまざまな選択肢を視野に入れた取り組みを開始したことを明らかにした。それに伴い、同社の年次報告書(Form-10K)において「企業としての存続に課題がある」と指摘されることになった。
本件に対して、コーエンCEOは「疑問や懸念、誤解を招くような一部報道があった」と前置きした上で、「財務基盤の強化策を講じており、事業戦略の見直しを行っているが、全てポジティブ(前向き)なアクションであり、主要な融資先と建設的な協議を継続している。そのプロセスにおいて、取締役会が(年次報告書で)企業継続に関する懸念の一文を加えた。iRobotの戦略的見直しプロセスの中で、この文言が修正されることを期待している」とした。
その上で、「新製品は、利益率が向上しており、収益成長に貢献する。新たな製品に投資し、顧客に投資し、販売店のための投資も継続している。また、次世代の新製品も開発中である。結果として、事業運営や製品開発、製造、サービス提供に直接的な影響を及ぼすことはない。通常通り業務を行っている。再建の基盤となるブランドもある。安心してほしい。iRobotは盤石である」と強調した。
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