【三段餃子重】不思議な見た目に惹かれて食べてみたら中毒性の高すぎる逸品だった「ぎ ょうざのブッタ」の三段餃子重:パリッコ『今週のハマりメシ』第182回

0

2025年04月18日 11:50  週プレNEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

週プレNEWS

江古田「ぎょうざのブッタ」の三段餃子重

ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。

それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。

そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。

【写真】コンポタチップスをお通しに

* * *

娘が小学校で必要な備品が新たにあり、それが僕の住む西武池袋線の石神井公園駅から6駅の、江古田駅近くの店で手に入るという情報を小耳に挟み、朝から電車で出かけていった。

ところが店に到着し、店員さんに聞いてみると取り扱いはなく、販売のある店を親切に教えてもらったところ、そこは家の近所の商店なのだった。よく考えたら、同じ小学校へ通う生徒の親御さんがみんな江古田まで買いにいくとは考えにくいし、相変わらず自分の浅はかさを思い知る体験となった。

しかしせっかく江古田の街にやってきたんだから、とんぼ帰りというのもつまらない。時刻は11時過ぎで、ちらほらとランチ営業をする店が開きだしている。せっかくだから昼ごはんでも食べて帰ることにしよう。


急ぐこともないからと、うろうろ街を徘徊していたら、さすが学生の街。魅力的な飲食店があちこちに見つかる。が、ある店のあるメニューを見てしまった瞬間、今日の僕はもう、ここにしか入りたくない! というモードになってしまった。そこは、「ぎょうざのブッタ」という餃子専門店。ブッダを自称するとは大きく出すぎじゃないだろうか? と思いきや、近づいて看板を見ると、かわいい豚さんが描かれた看板があり、店名が「豚」由来ということが判明。

なんてことより、気になったのはランチメニューだ。


目立つ看板でどどーんと推されていたのは、お店の名物であるらしい「三段餃子重」。大盛り無料、スープつきで、税込1,045円。5個の羽根つき餃子が3段に重ねられているように見えるから、合計15個か。お得な価格だ。

それにしても、なぜ!? 餃子とごはんをお重に詰めて食べる意味って、あるのだろうか? こういう創意工夫の末に生まれた、ちょっと抜けた感もあるメニューは、はっきり言って大好物だ。もう絶対これ! 11時半のオープンを待って入店した。

明るい店内には小粋な洋楽が流れ、おしゃれなダイニングバーといった雰囲気。カウンター席に着き、一応メニューを見てみると、各種の餃子を中心とした食事の他に、酒やつまみも充実している。夜は酒場営業がメインになるようだ。


そういうことであれば、と、「タコハイ」(495円)の「メガ」(+165円)を頼んでしまう。


すぐにやってきたそいつをぐいっとやれば、もはやさっきの小さな失敗のことなどはどうでもよくなった。むしろ、この時間が過ごせて幸運だ。

食事の注文は当然、三段餃子重。それからメニューに「本気で美味い!」とあってどうしても気になった「コンポタチップス」のSサイズ(330円)も追加で。


かわいいロゴ入りの紙袋に入り、シャカシャカポテトスタイルでやってきたコンポタチップスは、どうやら餃子の皮を揚げたものらしく、熱々のサクサク。そこにたっぷりと、甘くて香ばしいコーンポタージュ味の粉がまぶされていて、なるほど、こりゃうまい。とりわけ僕はコーンポタージュ味のお菓子に目がないので嬉しい。


そして三段餃子重も到着。わはは! 事前にきっちりと写真を見ていたにも関わらず、目の前にやってくるとやっぱり笑う。餃子をお重スタイルで食べるのは、確実に人生で初めてだ。ごはんは少なめでお願いしていたんだけど、それでもお重から余裕ではみ出るインパクトもすごい。


さっそくひとつを、まずはそのまま食べてみる。ふんだんなパリパリの羽根の香ばしさがまずやってきて、餃子自体は小さめで、皮も薄めで、にんにくも感じるけれど、けっこうあっさりタイプ。これなら15個でもちょうどよさそうだ。

旨味たっぷりの豚肉と、キャベツの食感、風味もとても良い。さすが専門店だけあって、美味しい餃子だな。それから珍しいのは、これまで餃子を食べて感じたことのないタイプの甘みを強めに感じること。そこで店内の「餃子五訓」という貼り紙を見なおすと、具材に「手造り白甘味噌」が使われているようで、それ由来と思われる。ふたつめはたれをつけて食べてみると、その味と甘みが相乗効果を生み、かなりクセになる味わいであることに気づく。これは急いで、ごはんごはん!


あわてて餃子の下からごはんを発掘しようとすると、餃子と米の間に、のり弁風に韓国海苔が敷いてある。こういうの、嬉しい。しかもそれだけではなかった。なんとその海苔の下には、細かく刻まれたフレッシュなザーサイまで入っている。


そのこだわりを感じる米部分と、たれをまといつつ甘みもある餃子を合わせて食べると、さっきまで見た目のおもしろさに言及していたことが恥ずかしくなるくらい、恍惚的な味わいだ。すごい。この餃子重、計算しつくされている。しかも、単なる餃子定食ならば、ごはんの工夫に驚くことはなかっただろう。お重スタイルだからこそのエンターテイメント性。ぎょうざのブッタ、ものすごく好きだ!

卓上には各種の調味料があって味変も可能。そのなかの「辣覇香味油」が、特に気になる。

「辣覇(ラーパァー)」とは、定番の中華調味料「味覇(ウェイパァー)」の創業者が考案した自家製調味料で、1本1本手作りするため、数年前に工場生産が可能になる前までは長く「幻の調味料」と呼ばれていたんだとか。それに食用油などを混ぜ合わせて作ったブッタのオリジナルが、辣覇香味油というわけ。


これを餃子の3段目に思いきってかけてみる。すると、原材料の詳細まではわからないけれど、塩気はほぼなく、痺(しび)れる辛さがあって、ナッツ系のコクもあって、確かにブッタの餃子の味をさらに底上げしている。海苔ザーサイごはんとの相性も最高で、最後まで夢中で食べきってしまった。


ブッタの餃子重、はっきり言って、この原稿を書いているお昼前の今も、めちゃくちゃ食べたい。あらためて、出会えて良かったな。

ところでお会計時、感じのいい店主さんにこの記事の掲載確認などをさせてもらいつつ、少し立ち話をさせてもらったところ、なんとここ、午後2時から6時半までハッピーアワーを実施していて、なんと「焼餃子」が10個で275円、「レモンサワー」が209円、メガでも319円など、とんでもないサービス価格らしい。次はその時間にも来なくては。

江古田の他、桜上水にも店舗があるらしいので、お近くの方はぜひ。

取材・文・撮影/パリッコ

    ランキングトレンド

    前日のランキングへ

    ニュース設定