
Q. 双極性障害の疑いがある家族、病院受診をさせるべき?
Q. 「テンションの上がり下がりが激しい家族がいます。うつ状態のときはふさぎこんでしまうのですが、気が大きくなると異常なほど活動的になったり、身の丈にあわない借金をしたりといった行動が見られます。本人は病気と感じていないようなのですが、病院受診は必要でしょうか? いつか自然に落ち着く可能性も期待できますか?」A. 双極性障害の場合、自然治癒せず悪化する傾向があります。治療は必須です
双極性障害は、躁の状態とうつの状態を繰り返す心の病気です。診察しないことには分かりませんが、ご家族から見られて、双極性障害が疑われる言動があるようですね。もし本当に双極性障害だとすると、残念ながら自然には治りません。無治療のまま放置すると、躁状態とうつ状態の間隔は次第に短くなる傾向があります。また、それぞれの期間に現れる症状も、さらに重くなる可能性があります。
躁とうつの期間が半年程度の人もいれば、1週間、または1日単位で変わる人もいるなど、個人差が大きいです。塞ぎこんだうつ状態から、躁状態に転じて活動的になると、本人も周りも「元気になった」「治った」と誤解してしまうこともあります。
双極性障害の場合、患者さん本人に「自分が病気である」という病識がないケースも多く見られます。そのため、適切な医療にたどりつけず、治療が受けられないままになることも珍しくありません。まず、ご家族にできることは、「躁」や「うつ」の変化の兆候を見逃さないことです。
そして非常に大変かもしれませんが、やはり本人の精神状態やタイミングを見ながら説得し、医療機関につなげる必要があります。特に、自殺をほのめかしたりするような言動がある場合は、緊急事態です。命に関わる状況になる前に精神科を受診できるよう、できる限りのサポートを考えていただければと思います。
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中嶋 泰憲プロフィール
千葉県内の精神病院に勤務する医師。慶応大学医学部卒業後、カリフォルニア大学バークレー校などに留学。留学中に自身も精神的な辛さを感じたことを機に、現代人の心の健康管理の重要性を感じ、精神病院の現場から、毎日の心の健康管理に役立つ情報発信を行っている。(文:中嶋 泰憲(医師))