大阪・関西万博が4月13日に夢洲(ゆめしま)で開幕した。東側ゲート付近には国内パビリオンが複数集まっており、その中で注目を集めているのは、大阪府市が出展する「大阪ヘルスケアパビリオン」だ。「REBORN(リボーン)」をテーマに、未来に実現を目指すヘルスケア体験や再生医療の可能性を発信している。
REBORNというテーマには、「人は生まれ変われる」「新たな一歩を踏み出す」という意味を込めた。出展内容は「リボーン体験ルート」と「XD HALL モンスターハンター ブリッジ」(いずれも事前予約が必須)、「ミライの食と文化」「バーチャル大阪ヘルスケアパビリオン」の4つに分かれている。
リボーン体験ルートでは、健康スコアの測定や25年後の自分(アバター)と対面できるコーナーのほか、各企業が提案する栄養と体に関する「ミライのヘルスケア」、2050年頃を想定した「ミライの都市」を体験できるブースを用意している。
健康スコアの測定には、公式アプリのダウンロードとユーザー登録が必要だ。アプリで体験QRコードを提示して場内を進むと、7つの項目(心血管、筋骨格、髪、肌、歯、目、脳)に関する健康データを複数のセンサーやカメラで測定する「カラダ測定ポッド」が設置されている。
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●スコアの可視化は健康意識を高めてくれる
カラダ測定ポッドは、約5分間で心血管などの全7項目、約45種類の健康データを取得できる装置だ。両手を特定の位置に置いて体脂肪率などを調べる測定には、健康機器を手掛けるタニタの体組成計の最新技術が使われている。肌診断には、AI肌診断などを展開するパーフェクトの技術を採用した。
測定が完了すると、画面上には7つの項目それぞれのランクと、測定結果にもとづく体年齢が表示され、専用アプリでは項目ごとの詳細も確認できる。
筆者も体験してみると、骨格筋(Aランク)と歯(Bランク)は良好な結果が出た一方、脳や肌はCランクとやや低評価だった。参加した他の来場者の様子も見ると、健康スコアを見せ合い、自身の生活習慣を振り返るきっかけにしているようだった。
医師の診断ではないため測定結果は参考程度にすべきだが、体の状態を数値化することで、健康について再考する機会を提供している。
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前に進むと、生成された25年後の自分(アバター)に対面できる。この仕組みは、計測した健康データを「ヘルスケアプラットフォーム」が管理し、「25年後の自分」をイメージしたアバターを作成することで実現しているという。
公式アプリには体験後もアバターを残せるほか、パビリオンの体験をひと通り終えたあと、作成したアバターが動き出すシーンも用意している。
●さまざまな企業が考える「ミライのヘルスケア」を体験
さまざまな企業が栄養と体に関する「ミライのヘルスケア」体験を提供するゾーンは2つのエリアに分かれ、合計で12のブースがある。
「パーソナルフードスタンド」では、来場者のカラダの状態に合わせて、パーソナルアドバイスができるAIが「なりたいミライ」に必要な栄養や食材、レシピを提案。来場者には「ヘルスケアベンダーマシン」を通じて、パーソナルフードのサンプルを提供している。
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椿本チエインが出展する「カラダ拡張スーツ」では、ロボットスーツを装着することですることで、空中の移動や、重いものを持ち上げられるミライをイメージできるVR体験を提供している。このほか、江崎グリコの「細胞ケア研究所」、ロート製薬の「アイケアステーション」、二プロの「次世代を創る医療技術」など、近未来のヘルスケアサービスが並んでいる。
ミライの都市エリアでは、「家庭で作る霜降り肉」のコーナーでミートメーカーで作った培養肉を展示している。ミライの暮らしをイメージさせるコンテンツに加えて、没入型の「人生ゲーム REBORN in 2050」も設置するなど、大阪ヘルスケアパビリオン全体で見ても豊富なコンテンツを用意している。
余談だが、大阪在住の筆者は開幕前に実施された「テストラン」(実際に来場者を入れて会場の運営を試験的に行うこと)にも参加しており、大阪ヘルスケアパビリオンを訪れるつもりだったが、予約が取れず断念した。ここからも同パビリオンへの注目度の高さがうかがえる。
●パビリオンが健康意識向上のきっかけに
経済産業省によると、日本国内のヘルスケア市場は2020年時点で25兆円規模となっており、2050年には77兆円程度の市場規模に達すると推計されている。一方で、社会保障給付費は年々増加しており、2024年は137.8兆円(対GDP比22.4%)となった。高齢化に伴い、今後も増加が見込まれている。
増大する社会保障費への懸念が高まるなか、医療費や介護費の抑制につながる可能性があるとして、予防医療推進の動きも活発だ。健康なうちから生活習慣に気を配り、病気を予防することは、健康寿命を延ばし、医療費の削減にもつながると期待されている。
今回の万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとしている。大阪ヘルスケアパビリオンでは、訪れた人々が「いのち」や「健康」、近未来の暮らしを感じられる展示と体験を通じて、来場者が新たな行動につながることを目指す。
人は大きな病気やケガをしない限り、健康に対して無自覚なことが多いが、カラダ測定ポッドのように簡単に自身の健康スコアを可視化できれば、意識を少しは変えられるかもしれない。体の状態について知ることは、予防への第一歩だ。
大阪ヘルスケアパビリオンでは、現在の健康状態を知り、25年後の自分と対面し、ミライのヘルスケアや都市生活を体験できるブースをめぐることで、新たな自分へと生まれ変わるきっかけを提供する。
(カワブチカズキ)
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