
長い年月、思いを寄せていた人と結ばれることは、とても素敵な話ですよね。『月刊少年ガンガン』2025年1月号に掲載された読切『龍の花嫁 虎の婿』(作:瑠夏子)は、没落貴族の堅物男子が、“半龍半人の姫”から猛烈なアプローチを受けるという物語です。瑠夏子さんのX(旧Twitter)に同作がポストされると、約6000もの「いいね」が寄せられています。
貴族の家系「蓼宮(たでみや)家」のひとり息子「正虎」は、父の作った多額の借金によって貧乏生活を強いられていました。そんなある日、不思議な力を持つ謎の一族「竜胴家」の「瀧」という人物から、借金返済用の資金として小切手が送られてきます。
使用人によれば、竜胴家の屋敷に訪れた者は誰も帰ってこないという噂があるとのこと。それでも正虎は小切手を返すために、ひとりで竜胴家の屋敷に。そして、姫である瀧と相対し、「ご厚意はありがたいですが お断りします」「理由なく借金の肩代わりをしていただくなど」と伝えたところ、瀧は「理由があればよろしいですか?」と聞き返し、さらに「私のお婿さんになってくれませんか?」とお願いするのでした。
瀧いわく、以前から正虎に好意を寄せているそうで、そう言われた正虎は身に覚えがありません。そんななか、正虎の手の周辺に丸い形をした小さな妖がいくつも浮遊しており、何かがおかしいと察した正虎は、強引に小切手を瀧の手に握らせます。
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すると、手に触れたことで赤面した瀧が、大きな龍に変身。というのも竜胴家は龍の家で、龍の父と人間の母の間に生まれたのが、半龍半人の瀧でした。龍の姿を見せたからには簡単に帰すわけにはいかないため、瀧は屋敷に留まるように伝えます。
その後も瀧のアタックは続き、ひたすらに断り続ける正虎。しかし、瀧は、母が出て行き、父も娘の瀧を持て余し、屋敷で孤独であることを伝えると、正虎は自身の境遇と似ていることに気づきます。さらに、瀧の様子を見て「似た境遇なのに このひとは どうして こんなに あたたかい」と思うのでした。
屋敷に泊まることになった正虎は、夜に寝床の部屋から外に出てみると、空には龍の姿になった瀧が。変身を制御できない瀧は屋敷からの外出を許されておらず、不安定さを克服するため夜な夜な練習していたのでした。その姿を見た正虎は「俺は好きですよ 瀧さんのこの姿」「うろこが輝いて美しかった」と瀧に伝えます。
すると、お互いが子どもの頃に偶然会っていたことを明かす瀧。その時の正虎に「君のうろこ きらきらしてきれいじゃないか」と褒められ、それから今まで正虎を想い続けていたのでした。そして、瀧は正虎を好きであることの証として、1枚のうろこを正虎に渡します。
しかし、龍の姿になってしまう以上、人と結ばれることを諦めた瀧は、その後に正虎を門の外に押し出します。門の外に出てしまえば、屋敷のことをすべて忘れてしまう仕組みで、正虎は抗ったものの、瀧の覚悟は強く、そのまま離れ離れになってしまうのでした。
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その後、記憶を失った正虎は、1枚のうろこをきっかけに、瀧のことを思い出します。すぐさま竜胴家の屋敷に向かうも、瀧は他の竜の一族との結婚式を進めている最中でした。それでも正虎は強引に割って入り、瀧に「あなたが好きです」「うちに嫁にきてください!」と告白。瀧は正虎の想いに応えて「はい」と返事をしました。
父の龍に止められるも、正虎は固い決意を言葉にし、そして、2人は口づけ。その後、龍に変身した瀧の頭に正虎を乗せ、正虎の住まいに向かうのでした。読者からは「一途な瀧が可愛すぎる」「ほっこりした」などの声が。そこで瑠夏子さんに、同作を描いたきっかけについて話を聞きました。
―同作を描いたきっかけを教えてください。
もともと瀧と正虎の原型となるキャラクターと『龍の花嫁 虎の婿』というタイトルは自分の中にアイディアとしてありました。読切を制作することになり、「使えるのでは」と引っ張り出してきた次第です。
―特にお気に入りの場面があれば、理由と一緒にぜひお聞かせください。
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正虎が瀧のことを思い出して涙するシーンが気に入っています。表情だけで、正虎の瀧への想いを表現できたと思っています。
―作中の龍は、どのような経緯で誕生したのでしょうか?
いわゆる人外ヒロインが描きたかったので、思いっきり人からかけ離れた姿にしようと、あのような大きな龍にしました。デザイン自体は自分の好きな龍を参考にしつつ、瀧の可愛さが残るようにリボンなどをつけました。
―読者にメッセージをお願いいたします。
『龍の花嫁虎の婿』を読んでいただいてありがとうございます!好きなものを詰め込んだ作品なので、愛していただけることが本当に嬉しいです。
(海川 まこと/漫画収集家)
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