坂本花織が「限界突破!」 たくさんの課題を財産にしてミラノ五輪へ向けポジティブ

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2025年04月21日 19:20  webスポルティーバ

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【過密日程のなか限界突破!】

 4月19日、フィギュアスケートの世界国別対抗戦の最終種目となる女子シングルフリー。日本の順位が2位と確定したなかでの坂本花織(シスメックス)の演技は、最初から最後まで耐える滑りになってしまった。

 3月の世界選手権にピークを合わせ、帰国後にはアイスショー出演もあったため調整が難しい大会だったが、競技前日に坂本は「今はリラックスもできているし、体もまだ試合モードなのでまあまあいいほうだと思う」と話していた。

「疲労感というのを通り越しています。限界突破!」と笑う坂本は、初日(17日)のショートプログラム(SP)では、最初から大きな滑りで安定感を見せた。だが、3回転フリップ+3回転トーループは、フリップで重心が落ちてしまい2ターンをしてから3回転トーループを付けるジャンプになり減点。第1グループで滑った世界女王のアリサ・リウ(アメリカ)に0.16点及ばない2位の結果になった。

 それでも、「ストレスフリーで演技ができていてうれしい」と、2回目のチームキャプテンの役割を存分に楽しんでいた。

【はしゃぎすぎて、先生に......】

 19日のフリーは、SPで崩れたアンバー・グレン(アメリカ)が自己最高の148.93点を出していて、坂本は最後のリウを残しての演技だった。

「リンクサイドの応援席から『カオちゃん』という声が聞こえたので、試合前で集中したいけどもう笑いが抑えられなくて。『もうええわ』と思ってずっと笑っていました。この試合は緊張感半分、楽しさ半分という感じなので。最初の緊張はいつもどおりにあったけど、みんなの盛り上げのおかげで楽しさが復活してきたって感じです」

 こう話す坂本の演技は、出だしからスピードに乗った滑りで、完璧なダブルアクセルを決めて勢いをつけたかに思えた。だが、そのあとの3回転ルッツは、オーバーターン気味に振られて耐える着氷に。さらに次のダブルアクセル+オイラー+3回転サルコウも、最後のサルコウは4分の1回転不足の「q」判定で着氷を乱す。

 後半の3回転+3回転もトーループはオーバーターンになりながらも、コレオシークエンスはノリノリで坂本らしさも見せた。だが最後の3回転ループも「q」判定で着氷を乱す。「これぞ気合いで乗りきったという演技、という感じでした」と、坂本は苦笑しながら自己分析した。

「ルッツを耐えたあたりから乳酸が溜まりすぎて、こりゃやばいと思いながら......。でも、みんながこれでもかというくらいに応援してくれたので、それがすごく力になりました。団長もめちゃくちゃ楽しかったです。今年はとくに楽しかった。もちろん大変だとふとした瞬間に思ったこともあったけど、リンクに来たらやっぱり楽しい。はしゃぎすぎて、中野(園子)先生にも『自分が滑る力は残しとけ』とずっといさめられていました。今日の演技も、自分が団長じゃなかったらもうちょっとテンションが低かったかなと思います」

【五輪へ向け"前半戦"で見えた課題】

 楽しさとともに悔しさも味わった試合になった坂本だが、その表情には清々しさもあった。

「ひとつ前のシーズンがすごくよかっただけに、今シーズンはよかったなと思う試合が少なかった。それまでの過程でコンディションがよくなかったり、体のバランスが変わってしまったりという困難がいろいろあったけど、何とか乗り越えてシーズンを終えることができたのでとりあえずはホッとしています」

 坂本にとって、国際大会全勝だった前季とは違うシーズンとなった。NHK杯ではISU(国際スケート連綿)公認大会で3季ぶりとなる230点台を出したが、GPファイナルは3位で、冬季アジア大会と世界選手権は2位と不本意な結果に。しかし、坂本は前向きに捉えている。

「今シーズンが始まる前から、今季と来季を2年でひとつと言っていたので、ここは折り返し地点かなと思います。この前半で課題をたくさん残して終われたのも、次の1年に向けての財産になった。本当に試行錯誤もたくさんしたシーズンだけど、それはそれで本当によかったと思います」

 北京五輪後のシーズンから、プログラムも振付師を替えて、さまざまなジャンルに挑戦をしたのもプラスになっている。

「今シーズンはショートのタンゴやフリーの『オール・ザット・ジャズ』をやってみて、自分は意外と速い動きが苦手だと感じた。それもやって気づけたことだし、やってよかった。だからこそ来シーズンは、動きで見せるより、自分のスケーティングスキルを見せるプログラムにしたいなと思っています。もうちょっとスケーティングを上達させないといけないので、それも含めて安定感と両方を頑張っていきたいです」

 今季、ジャンプ攻勢についても、フリーでは苦手にしていた3回転ルッツ2本構成にしたり、3回転+3回転を基礎点が高くなる後半に入れたりして得点力アップを試した。それも踏まえ、来季に向けては「どの構成が自分自身、一番戦えるかというのを、あらためて考え直してから決めたい」。一方で課題について坂本はこう話す。

「最近はショートの安定感がなくなってしまっているので、そこを取り戻すことが一番の課題かなと思います。ショートになると自信なくなってしまったりして、ルッツは跳べても3回転+3回転が跳べない。3回転+3回転が跳べたら今度はルッツが跳べなくなるみたいな感じになってしまっている。そこが練習の時から不安要素で気になっているところなので、自信を持てるように改善していきたい」

【団体戦の優勝争いでカギをにぎる】

 自身の集大成と位置づけている五輪シーズンへ向かって新しいプログラムを仕上げていこうとしている。次の五輪に条件付きで復帰してくるロシア選手との戦いに加え、坂本の演技は団体戦(ロシアは参加できない)でもキーポイントになるのは間違いない。

 団体戦の前哨戦とされた今回の世界国別対抗戦を見れば、五輪での優勝争いは日本対アメリカの構図になりそうだ。そのなかでペアとアイスダンスの得点争いはアメリカが優位だが、その得点差はわずかだろう。

 また、男子シングルでは、アメリカのイリア・マリニンの力は絶対的だが、団体フリーから中1日で男子SPが始まる日程を考えれば、マリニンを両方とも使う可能性は低く、つけ入る隙はありそうだ。一方、女子シングルは、団体フリーから女子SPまで中6日あるだけに、勝負をかけるなら坂本をSPとフリーの両方に起用という戦略も考えられ、重要度はより増してくる。

 納得しきれないシーズンだったからこそ、次につながるというポジティブな思考をする坂本。悔しさとともに楽しさも全開で味わった今回の国別対抗戦は、勝負の来季へ向けて大きなエネルギーにもなったはずだ。

世界国別対抗戦2025記事>>

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