インタビューに答えるMS&ADインシュアランスグループホールディングスの船曳真一郎社長=10日午後、東京都千代田区 MS&ADインシュアランスグループホールディングス(HD)の船曳真一郎社長は21日までに時事通信のインタビューに応じた。3月に決めた傘下の三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険の合併に関し、業界で不祥事の発覚が相次ぐ中で「ガバナンス(企業統治)体制の再構築が最優先だ」と強調した。
損保業界を取り巻く経営環境は、自然災害の激甚化や少子化に伴う国内市場の縮小に加え、最近の不祥事で厳しさを増している。船曳氏は合併による「資本力強化と事業費(削減のため)の構造変革が必要だ」と指摘。6月末に傘下2社のシステム統合計画を策定する方針を示した。
2027年4月をめどとする合併後は、売上高に当たる正味収入保険料の規模で東京海上日動火災保険を抜き、国内首位となる見込み。1990年代後半に10社超あった主要損保会社は、東京海上日動と損害保険ジャパンを加えた3社体制となる。
損保業界では自動車保険の契約獲得を目的とした代理店との癒着が露見。業界慣行の是正が求められる中、各社とも価格競争力が問われている。船曳氏は「(合併で)システムや不動産、人的資本など全ての領域で効率性が確保できる」と話し、現状では東京海上日動よりも高い事業費率の削減を目指す考えを示した。
また、企業向け保険の価格調整問題では、各社とも不正の温床とされた顧客企業との持ち合い株式の売却を進める。船曳氏は「企業マーケットの競争の在り方が変わってくる」と指摘。競争激化への備えとして「1社で大きなリスクを引き受けられる体制をつくるための資本力が必要になる」と説明した。