日本の“トイレ”で外国人観光客が感動。お土産に“便座”を爆買い「日本のトイレは、もはや文化だった」

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2025年04月22日 16:20  日刊SPA!

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今回話を聞いたコニーさんとダンナさん。そして30代の息子たちとの家族旅行
インバウンド需要に沸いている日本。観光地はもちろん、大きな都市ではどこに行っても外国人の姿が目に入ってくる。だが日本に住み、インフレ&物価高の影響を大きく受けている日本人からすると「日本の何がそんなに良いのか?」と疑問に思ってしまうこともしばしば。
そこで、すこし日本にゆかりのある外国人に「日本の印象」を聞くことで、我々が忘れかけていた日本の素晴らしさに改めて気づくことができるかもしれない。

今回は海外旅行の楽しみの一つである「お土産」に関する話だ。

浴衣や甚平、かんざしや扇子などの「日本の伝統品」以外にも、化粧品から洋菓子、百均グッズまで様々なものが選ばれる「日本土産」。その中でも意外なほど根強い人気を誇っているのが「温水洗浄便座」だ。歌手のマドンナや俳優のレオナルド・ディカプリオ、ウィル・スミスも来日した際に感激したものの1つとして挙げていたし、ほかにも購入して帰った大物外国人タレントも多いと言われている。

その流れが今、一般の観光客にも広がっている。今回インタビューに答えてくれたオーストリア人もその一人だ。

「ねえ、あなた、便座を2台買って帰るわ!」

そう言ったのは、オーストリアのウィーンから夫と二人の息子の家族4人で日本へ旅行に訪れたコニーさんだった。夫のロベルトは、一瞬「妻が何かに取り憑かれたのでは」と本気で心配した。しかしよくよく聞いてみると、日本ではあれこれ驚きや感激の連続だったが、最も驚かされたのが「トイレ」だというのだ。

◆清潔で、心まで洗われる——日本のトイレ初体験

「日本のトイレに入った瞬間、ふっと幸せな気分になるのを感じたの」

コニーさんは日本到着の日、羽田空港で最初の“出合い”を果たした。まず目を引いたのは、どこもトイレが無料で使えること。そして、驚くほど清潔であることだ。

ヨーロッパ、特にコニーさんの住むウィーンでは、公共トイレの多くが有料で、小銭がないと使えない場面も多い。もちろん設備は整っているが、場所によっては掃除の頻度が少なく、においが気になることもあるという。

その点、日本のトイレはいつでも清潔で、無料で誰もが気持ちよく使えるという点に大きな驚きがあった。「これはトイレというより“パブリックスペース”と考えられているのね」と、コニーさんは日本の気配りの行き届いた空間にとても心を打たれた様子だった。

◆使用者にやさしい設備が、当たり前のようにある不思議

さらに感動したのが、子どもや高齢者に向けた配慮だった。トイレの個室内にはおむつ替え台が設置されており、ベビーカーでも入りやすい広さが確保されているところも多い。パーキングエリアやデパートなどでは授乳スペースも完備されていて、コニーさんは「これは小さな子を持つ親にとって天国のようだわ」と目を輝かせて話してくれた。

日本では当たり前になっているこれらの設備は、ウィーンでは高級デパートなどごく一部の施設に限られているという。

◆決定打は“温水洗浄便座”!

感動のピークは、やはりあの「ウォシュレット体験」だ。「便座が温かい!おしりが洗える!しかも自動でふたが開いて、ライトがつくなんて……!」

目を丸くして話すコニーさん。何度か使用するうちに、もう普通の便座には戻れなくなったという。

「ウィーンの冬は寒いの。だから以前はガスのヒーターを使ってトイレも温かくしていたんだけど、最近は供給の問題でそれも難しくなっていて……。そういう意味でも、この便座は本当にありがたかったわ」

そして、帰国が近づいたころ、彼女は大胆な決断をした。

結婚してもうすぐ半世紀。穏やかな年金生活も8年目の夫・ロベルトを説得し、家電量販店へ向かった。今ではほとんどの時間を自宅で過ごすふたりにとって、少しの快適さが大きな喜びになる——コニーさんの思いは、そこにあった。

◆便座がおみやげ? オーストリアで使えるの?

ここで気になるのがどうやって日本で買った便座をオーストリアで使うかだろう。まずは電圧の違いがある。日本は100ボルト。一方でオーストリアの電圧は他のヨーロッパ諸国同様日本よりもずっと高い230ボルトだ。

「じつは日本の量販店でも海外へのお土産用として電圧が高いモデルが売られているんですよ」

彼女が購入したのは電圧が220ボルト用のモデル。オーストリアの230ボルトより少し低いが、そのあたりは誤差の範囲で変圧器は不要。そして重量は1台あたり約4.5キログラム。ずいぶん軽いと思われるかもしれないが、売られているのは「便座とコントローラーと蓋」の部分なので意外と軽い(「便器はオーストリアの家にあるものをそのまま使い、「便座」部分のみを取り換える)。2台で約9キロなので受託手荷物で預けられる範囲だ。

日本から海外に便座を持ち帰る際に問題になるのはむしろ「電気工事」かもしれない。日本で少なくとも21世紀以降に建てられた家ならトイレに温水洗浄便座用の「コンセント」があることが普通だろう。

だが、トイレで家電製品を使うことなんてそもそもないヨーロッパの国々ではそこにコンセントがない。

つまり「えっ? トイレの便器のそばにコンセントをつけるんですか?」と現地の電気工がおそらく首をかしげる工事を依頼しなければならないのだ(トイレとシャワーと洗面台が一部屋になっている「バスルーム」では、ヘアドライヤーなどで使うためのコンセントから延長コードを延ばすという手もないわけではない)。

幸いなことにいとこの1人が電気工。工事は無料でやってもらえるという。

「自宅でこの便座を使って、友達にも体験してもらいたいの。きっと驚くわよ!」

コニーさんは笑った。

◆“おもてなし”と“快適さ”の交差点——日本のトイレで感動したワケ

今回の旅を通じて、コニーさんは「便利だった」だけでなく日本のトイレに込められた“精神”に心を動かされたという。

ヨーロッパでは、環境保護の観点からペーパータオルが減らされ、代わりに布製タオルディスペンサーやハンドドライヤーが使われている。だがそれが必ずしも快適とは限らない。高齢者にはタオルを引き出すのが大変で、機械の故障や詰まりも多い。きれいなタオルが永遠に出てこない……そんなこともよくあるそうだ。

「EUは環境を優先しすぎて、利便性が置き去りにされている気がするわ」

そう語るコニーさんにとって、日本のトイレはまったく違う体験だった。

「日本のトイレは、もはや文化だったわ!」

清潔さ、利便性、快適性、そして美意識まで。そのすべてが、日常の中で当たり前に機能している。ときにパーキングエリアのトイレにすら生け花が飾られ、使う人の心を癒やす空間に仕立てられている。これこそが、日本のトイレが“衛生設備”を超えて、“文化”と呼ばれる理由だ。

実際、慣れない左側通行の長距離ドライブに少し疲れていた息子たちも、この生け花を見て「こんな所にも飾られているなんて……ホント、すごいね!」と驚いていたという。オーストリアでも花を美しく飾る文化はあるが、まさか高速道路のトイレにまでとは思わなかったようだ。ちょっとした花が、疲れた身心をふっと和ませてくれたようだ。

◆日本のトイレは世界の常識を変える

「この便座を通じて、日本の素晴らしさを少しでも世界に伝えたいわ」

コニーさんが大事そうに抱えた白い箱は、単なる家電ではない。そこには、日本の“おもてなし”と“合理性”がたくさん詰まっていた。

日本のトイレは、世界の常識を変える。そんな未来は、もう静かに始まっているのかもしれない。

<取材・写真/パッハー眞理>

【パッハー眞理】
ウィーン生まれ、演奏家の両親のもと東京で育つ。慶應義塾大学文学部卒業。1859年設立されたコンコルディアプレスクラブウィーン会員。英国・オーストリア・インドに滞在し、欧州在住歴は40年以上。『地球の歩き方』ほか各メディアに寄稿。2018年、オーストリア政府より「功労黄金名誉勲章」受勲。著書に『アウガルテン宮殿への道』(ショパン、2002)など。世界100か国以上の現地日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。

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