
報告書の中で、不適格な経営判断と行動を繰り返す取締役が役員に指名された理由として、取締役会が同質的で閉鎖的、硬直的で人材の多様性を欠いているとした上で、その組織運営は「オールド・ボ−イズ・クラブ」であると指摘しました。
オールド・ボ−イズ・クラブ(以下、OBC)とは何なのでしょうか? 単なる年配の男性の集まりのことなのでしょうか? OBCの成り立ちやOBCのプラス面・マイナス面などを組織運営の視点で解説します。
同質的な仲間意識に支えられたクローズドなネットワーク
OBCはオールド・ボ−イズ・ネットワーク(OBN)とも呼ばれ、年配の男性に代表される保守的で同質的なメンバーを構成員とする閉鎖的なネットワークのことを言います。年功序列で昇進した男性中心の旧来型の組織を批判する文脈で使われることが多いです。OBCのメンバーは組織内での勝ち組であることが多く、自分たちの既得権や支配構造を維持するために、多様な人材の参加を排除し、同じ価値観を共有する同質的なメンバーを中心に人脈を形成します。多様な価値観をあえて排除するという点では、ダイバーシティの対極にある集団です。
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内閣府男女共同参画局の広報誌『共同参画』2024年10月号では、女性の活躍を阻む壁として「女性の意識」の問題、「ワーク・ライフ・バランス」の問題に加え、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の問題が指摘されています。
女性を一段低い存在として扱うなど旧態依然とした価値観がまん延している会社だけでなく、特定の大学出身者が多い会社、同じトップが何年も君臨し続け、周囲を子飼いの役員で固めているような会社であれば、OBCが幅を利かせている可能性があります。
OBCは組織図に記載がなくとも、社内の誰もがその存在を知っている非公式の社内ネットワークです。日々の組織運営のみならず、誰を昇格させるかといった組織の重要な意思決定もOBCのメンバー内でなされます。仲間意識と特権意識に支えられた、なれ合い組織と言ってもいいでしょう。
そもそもどのようにして形成されるのか
OBCはもともと、英国の名門私立校(パブリックスクール)出身者のネットワークを意味していました。名門私立校出身者は、社会階層や家庭環境、趣味、思想などのバックグラウンドが共通しているので、あれこれと前提条件や背景を説明しなくとも意思疎通ができてしまうのです。
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私たちも出身校が同じである、同郷で出身地が近い人には何となく親近感を持ちますよね。それと同じです。人は自分と同質の人間に仲間意識を持ち、互いに引き寄せられていくことでグループを形成します。
仕事上の付き合いしかなかった社員が同じ大学出身者だと分かった瞬間に親近感が芽生え、一緒に飲みに行き、その後も社内情報を交換し合うということはよくあることです。
OBCは同質的なネットワークですので、クローズドで排他的なものになりがちです。考え方、価値観、バックグラウンドが共通するメンバーとの付き合いは、気が置けないものとなり、居心地もよいので、そのネットワークをそのまま維持しようとします。
またほぼ同じメンバーを構成員とする場合、メンバーの平均年齢は上がり続け、いつのまにかオールドボーイズ(年配者)からなるクラブになっていくのです。
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OBCのプラス面とマイナス面
OBCは互いのことをよく理解し合った信頼できるメンバーから構成されるので、コミュニケーションが円滑に進み、込み入った複雑な問題に対しても迅速な判断・意思決定が可能となります。あうんの呼吸で業務を前に進めることができるので、スピードが求められる経営判断にはプラスと言えます。一方で、閉鎖的な関係性となりがちで、多様な意見やアイデア、イノベーションが生まれにくいというマイナス面があります。
また世の中の常識とかけ離れた考え方や価値観を持っていても気付きにくく、不適切な判断を下してしまう可能性があります。特にOBCが支配階層となっている場合は、誰も異議を申し立てることができず、フジテレビのような問題を引き起こすリスクが高まります。
(文:本田 和盛(企業の人材採用ガイド))