1日300杯売った“ビールの売り子”が暴露する「女の戦い」の舞台裏。客の目につかない裏で“嫌がらせ”されることも

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2025年04月23日 16:01  日刊SPA!

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 プロ野球を現地で観戦すると、若い女性の売り子からビールを買うサラリーマンをよく目にする。特に夏の暑い日は、売り子から買うビールを楽しみに球場に行く人も多いのではないだろうか。
 過去に東京ドームを中心に約3年ほど売り子として働いていたという佐々木静香さん(仮名)。1日で最高300杯を売ったことがある“売れっ子の売り子”だった彼女に、以前「1杯あたりのインセンティブ」など、売り子の裏事情について語ってもらった。

 プロ野球の売り子は女性がほとんど。SNSでは、ビールの売り子のバイトをしている若いタレントの発信も目立つが、実はそのかわいい笑顔の裏に隠された「女同士の戦い」があるという。今回は、野球観戦しているファンはなかなか気づかない「売り子同士の熾烈な争い」について、佐々木さんに話を聞いた。

◆「どこで売るか」によって売り上げが激変

 ビールの売り子の売上は、どの客席エリアを担当するかで大きく変わる。一杯あたりのインセンティブが発生する売り子にとって、担当するエリアの良し悪しは、収入を大きく左右すると言っても過言ではない。

 まずは東京ドームにおいて、ビールが売りやすい客席エリアを聞いてみた。

「一番売れやすいのは基本的に外野席です。攻撃中は総立ちで売れにくい球団もありますが、お客さんの人数が多いので数を売ることができます。その次が富裕層が多いバックネット裏。ここは基本的に年間シートで売られているので、同じ人が来る確率が高く、一度顧客を掴んだら売り続けることができます」

 では、担当する場所はどのように決められるのだろうか。ビール会社によって異なる可能性もあるが、佐々木さんによると「基本的には“チェッカー”が決めます」と話す。

「チェッカーとは、売り子が担当する場所を決めたり、現場で指示を出したりする人のことです。元売り子の女性が担当することもありますが、基本的には男性が担当することの方が多いと思います。働く当日に、チェッカーが売り子の実績や実力をみながら配置を考えるのですが、売り子にとっては担当する場所によって売り上げが変わるので、なんとしても良い場所を担当したいわけで……。チェッカーに気に入られようと必死な売り子もたくさんいましたよ」

 そして、結果的に1日300杯売るほどの売れっ子となった佐々木さんは、売る場所についてチェッカーに要望したこともあるという。

「チェッカーに言われたこともバレない程度に自分の担当エリアをはみ出して、少しでもいい場所で売ろうとする子もいましたね。私はチェッカーに直接『その通路空いてるなら行かせてください』と、周りに遠慮せず言ったことあります。それで“何あの子?”って空気になることもあったけど、遠慮してたら食われるだけなんで、積極的に動いて売り上げを伸ばしました」

◆妨害して“にらみあい”が発生することも

 もちろんインセンティブは個人に入るため、売れる担当エリアを勝ち取るという意味では、同じビール会社の売り子でもライバルになる。そして他社のビールの売り子に関しては、同じエリアで客を奪い合うため、もっと激しいライバル関係になるようだ。

「他社のビールの売り子が私の目の前に急に立って、客の視界を遮ることなんて日常茶飯事。だから、今度はこっちが相手の通路に行って真似して……まさに一瞬“にらみ合いの応酬”みたいになることもありました。これは私ではないですが、『ライバルの売り子から、階段の上から周りに気づかれないように押されたことがある』という話も聞いたことあります。笑顔でビール売ってるけど、裏ではずっと火花散ってる感じです。今思うと、あれこそ“女の戦い”って感じでしたね。あんまりこういうこと言うのも現役の売り子たちに悪いですけど、お客さんとして見に行ったときに、そういう瞬間が垣間見えたら面白いですよ(笑)」

◆悪口が飛び交うバッグヤード

 また、売り子にとってリピーターをどれだけ囲えるかも“売れっ子売り子”になるための重要なポイント。1日に何杯も買ってくれるような太客を複数人抱えることで安定して高いインセンティブを得られるようになるわけだが、その太客の“推し変”によって、新たな“女の戦い”が勃発することもあるとか……。

「気の強い売り子で『あの子、私の常連に勝手に声をかけてた』って文句言う子もいました。可愛がっていた後輩であっても、売った杯数を抜かれたら一瞬で態度変わりますからね。とにかく樽を交換する基地などの裏側では悪口が飛び交っていて、『ちょっと可愛いからって調子に乗ってる』『SNSを使って集客するとか水商売気取んなよ』など、いろんなことを聞きました」

 また、客の目につかない裏でも“嫌がらせ”が起きることもあったようだ。

「樽交換のタイミングで、わざと私の邪魔になるような動きをしてくる売り子がいたんです。ホント1分1秒が勝負なので、露骨な嫌がらせは売上にも響いてきます。あと、移動中に“あの子なんかムカつくよね〜”って聞こえるように言われたり。悔しいけどそれって“売れっ子の証”なんですよね。敵が多いってことは、それだけ結果を出してるってことだから」

◆“自分が一番だ”と思わないとやっていけない

 売り子の世界は、見た目が良いだけでは勝ち残れない。立ち回り方も重要だが、精神面においても「根性」や「負けん気の強さ」も生き残るためには必要になってくる。

「結局、ルックスは“武器のひとつ”でしかないんです。気が弱い子は何度も場所を譲っちゃって、それでチャンス逃して……ということを繰り返す。でも、売れている子はみんなメンタルが強い。売れ行きが悪い日も、嫌がらせされても、笑顔で堂々と売り子としての仕事をまっとうするんです。とにかく強い気持ちを持って、どこかで“自分が一番だ”って思ってないとやっていけない世界でした」

 ビール片手に楽しむ野球観戦の裏では、売り子たちが静かな火花が散らしている。次に球場でビールを買うとき、その一杯の向こうにある“女の戦い”を少しだけ想像してみてはいかがだろうか。

取材・文/セールス森田

【セールス森田】
Web編集者兼ライター。フリーライター・動画編集者を経て、現在は日刊SPA!編集・インタビュー記事の執筆を中心に活動中。全国各地の取材に出向くフットワークの軽さがセールスポイント

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