2025年6月は日韓関係の分岐点に 韓国大統領選の勝敗のカギは中道層の動向

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2025年04月23日 18:10  まいどなニュース

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韓国では2025年6月3日、次期大統領を選ぶ選挙が実施されます※画像はイメージです(freshidea/stock.adobe.com)

韓国では2025年6月3日、次期大統領を選ぶ選挙が実施される。この選挙は、尹錫悦前大統領の弾劾罷免に伴うもので、60日以内の実施が憲法で定められている。

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現在の最有力候補は、最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表であり、世論調査では支持率が40〜50%近くに達するなど独走状態にある。しかし、李氏の過去の反日的な言動や最近の現実路線への転換は、日韓関係の将来に複雑な影響を及ぼす可能性がある。ここでは、選挙後の日韓関係の行方を、李氏の政治姿勢や国際環境を踏まえて考察する。

李在明の政治的背景と日韓関係への影響

李在明氏は人権派弁護士出身で、京畿道知事や城南市長を歴任した経歴を持つ。2022年の大統領選挙では文在寅政権の後継候補として出馬したが、尹錫悦氏に僅差で敗れた。過去には慰安婦問題や徴用工問題をめぐる活動を支持し、「日本は敵性国家」との発言もあったとされる。こうした反日姿勢は、韓国の進歩(革新)派の伝統的な支持層を固めるための戦略だったと見られる。しかし、2025年4月の出馬表明では「韓米日協力の重要性」を強調し、「日本への愛情が深い」と発言するなど、従来の姿勢を軟化させる動きを見せている。

この変化は、李氏が大統領選勝利を見据えた現実的な戦略を取っていることを示唆する。韓国経済はゼロ成長に近く、米中対立や北朝鮮の脅威が高まる中、孤立主義的な外交は国益を損なう。仮に李氏が当選した場合、尹前政権ほど明確に良好なものではないとしても、日韓関係は安定的に継続していく可能性が考えられる。尹政権下で改善した日韓関係、特に元徴用工問題の解決策や安全保障協力の強化などを完全に覆すことは、国際社会での韓国の立場を弱めかねない。しかし、国内の反日感情や進歩派の支持基盤を意識し、歴史問題で日本に厳しい姿勢を取る場面も予想される。例えば、慰安婦問題や徴用工問題での新たな要求が浮上すれば、日韓関係は再び緊張するリスクがある。

対抗馬の動向と選挙の不確実性

李氏の独走が報じられる一方、保守系「国民の力」では候補者乱立が続く。注目すべきは、韓悳洙(ハン・ドクス)大統領権限代行の動向だ。韓氏は経済副首相や駐米大使を歴任した官僚出身で、トランプ政権との交渉経験も豊富である。トランプ大統領から出馬を促されたとの報道もあり、保守派の「隠し玉」として浮上している。韓氏が当選した場合、日韓関係は尹政権の路線を継承し、安定した協力関係が維持される可能性が高い。しかし、保守派の党内予備選は混迷を極めており、統一候補の選出が遅れれば李氏の優位は揺るがない。

選挙の鍵は中道層の動向だ。韓国の社会は保守と進歩の分断が深刻で、李氏の過去の疑惑(特に大庄洞開発疑惑や公職選挙法違反裁判)に対する拒否感も根強い。中道層が保守候補に流れるか、あるいは投票を棄権すれば、選挙結果は予想以上に接戦となる可能性もあろう。

国際環境と日韓関係の展望

日韓関係の行方は、米国のトランプ政権や中国、北朝鮮の動向とも密接に関連する。トランプ大統領は在韓米軍の撤退や同盟国への負担増を求める可能性があり、韓国は米国との関係を最優先にせざるを得ない。李氏が当選した場合、トランプ政権との関係がぎくしゃくするとの懸念もあるが、韓米日三カ国協力の枠組みを維持する可能性が考えられる。日本としては、韓国との安全保障協力を強化しつつ、歴史問題での衝突を避ける外交努力が求められる。

中国の海洋進出や北朝鮮の核開発が進む中、日韓の連携は東アジアの安定に不可欠だ。李氏が現実路線を維持すれば、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)や日米韓の共同訓練は継続されるだろう。しかし、国内の反日感情を背景に、突発的な外交摩擦が起きるリスクは残る。日本は、柔軟な対話と毅然とした姿勢のバランスを取ることが重要となる。

2025年6月の韓国大統領選挙は、日韓関係の分岐点となる。李在明氏の当選が有力視されるが、反日的な過去と現実路線の間で揺れる同氏の姿勢は、関係の安定性を不透明にする。保守派の巻き返しや国際環境の変化も影響を及ぼし、選挙後の日韓関係は楽観も悲観もできない状況だ。日本は、歴史問題での摩擦を最小限に抑えつつ、経済・安全保障での協力を深化させる戦略を追求すべきである。韓国の新政権がどのような選択をするのか、その動向に注目が集まる。

◆和田大樹(わだ・だいじゅ)外交・安全保障研究者 株式会社 Strategic Intelligence 代表取締役 CEO、一般社団法人日本カウンターインテリジェンス協会理事、清和大学講師などを兼務。研究分野としては、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障など。大学研究者である一方、実務家として海外に進出する企業向けに地政学・経済安全保障リスクのコンサルティング業務(情報提供、助言、セミナーなど)を行っている。

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  • 北朝鮮問題には触れていないが大して重要性がないのか、それとも両党隔たりがないのか?
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