
「実家に帰ったら73歳の父が
ミニチュアハウス大量生産してた
ゲームの街みたいでめちゃくちゃかわいい。
けど、家に飾ってるだけだからみんなに見て欲しい…!」
闘病中の父を励ますために投稿
どこかヨーロッパの街並みを思わせるシックなミニチュアハウスが「X」で注目を集めました。73歳のお父様の手仕事を投稿した「真田英幸 / minne」(@snd_noko)さん(以下、真田さん)に連絡をとると「実は父が闘病のため入院し、ものづくりができない状態でふさぎ込んでいたため、少しでもポジティブになればと思い、投稿しました」とお父様の作品の写真をポストした時のことを教えてくれました。
話題になったポストには5万件もの「いいね」がついています。
「たくさん反応いただけて父も喜びます!嬉しい
素材は木製で薄いものを張り合わせて制作しているようです
お家の中にキャンドルライトを設置できたり、壁掛けタイプもあったりします かわいい
このモノづくりのスキルを息子としてもっと受け継ぎたかったです。笑」
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真田さんはお父様がどうやってミニチュアハウスを作ったかを説明しています。
「え?え?え? 色のチョイスすばらしすぎませんか???」
「家がみんな笑ってる顔に見えますね。すてきなデザイン、工作キットになってほしいです」
「可愛い過ぎー! 売ってたら買っちゃう!!!」
作品には絶賛の声が相次ぎました。
しかし…大変残念なことに「その父も先月(3月)28日に亡くなりまして、改めて最期に皆さんに作品を見ていただけて良かったなぁと感じていたところでした」と真田さんはDMにてお父様の逝去を知らせてくれました。
生前の姿をお聞きしました
真田さんに話題になったミニチュアハウスのことを、そして生前のお父様のことをお聞きしました。
――生前のお父様は息子さんの目から見て、どのようなお人柄でしたか?
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父は昔から手先が器用でした。幼い頃の記憶では鉛筆を走らせさささっと魔法のように姉や妹と一緒にいろいろな絵を描いてもらいました。人気のキャラクターだけでなく、僕たちの顔の特徴を捉えてキャラクターにしてくれたり、すごく嬉しかったのを覚えています。
絵画も得意
――絵もお上手だったのですか。
晩年もミニチュアハウスなどのプロダクトだけでなく色鉛筆やパステルカラーを使った絵画も描いていて、家族みんなのお気に入りです。私も自分の家に何枚か飾っています。
自作のHPにスティーブ・ジョブズからコメントが来たことも
――素晴らしいクリエイターだったのですね。
仕事は主にデザイン関係のことをやっていたのですが、Apple製品が好きでiPodやMacの新製品について一緒に語ったりしたのも楽しかったです。好きが高じてApple好きのネット界隈ではちょっとした有名人だったこともあります。『Applele新種林檎研究所』(※現在は閉鎖済み)というHPを立ち上げそこで父が自分でデザインしたMacの画像を上げていました。HPのゲストブックにスティーブ・ジョブズからコメントが来たこともありました。
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――それはすごいですね。
とにかくものづくりに関して多才だったので、畑に農具入れの小屋を作ったり、ミニチュアハウスを作ったりと、最期まで家族を驚かせたり、楽しませたりしてくれました。
病室で「夢のようだ」と…
――家や家族を愛しておられたのが作品から伝わってきます。ミニチュアハウス制作時の思い出を教えてください。
ものづくりが大好きだった父は癌の宣告を受けてからも絵を描いたりミニチュアハウスの制作を進めてました。目標ではミニチュアハウスをたくさん制作してひとつの街のようなものを完成させて公募展へ出品したいと頑張ってました。
ただ、体調が悪化し、入院が増え、思うようにものづくりができなくなり、ミニチュアハウスの制作も難しくなってました。そんな中、少しでも父の作品を見ていただけたらなという思いから、今回の投稿を行いました。
――そうだったんですね…投稿に大きな反響があったことについて、お父様とどんなお話をしましたか?
想像以上の反響に僕自身も驚いたのですが、病室で父に「X」でいただいた感想を話したところ驚きながらも「夢のようだ」と伝えてくれて、表情が少し和らいだのを覚えています。
「欲しい人がいるなら販売してもいいよ」
さらに「Xの投稿後、ミニチュアハウスを購入したいとたくさんの方からコメントをいただきました。父からも『欲しい人がいるなら販売してもいいよ』と許可をもらったので父が生きてるうちにと急きょ販売することにしました。父が制作したミニチュアハウスは30〜40点ほどありましたので、その中から10点ほどを販売し、現在8点の購入先が決まっています(※編集部注:記事執筆時点で9点の購入先が決定済み)」とお父様の作品を最初で最後の販売をすることにした経緯を振り返る、真田さん。
ミニチュアハウスをお迎えした人に向けてメッセージ
ぜひ息子である真田さんからこのミニチュアハウスをお迎えした人たちに向けメッセージをいただけませんか。とお願いすると以下のように答えてくれました。
「私は普段minneというサービスでものづくりに携わる作家さんを取材しています。父のものづくりの価値を分かっていただけたこと、お迎えいただけたことにとても感激しました。父の作品を飾ることで、みなさまの暮らしが少しでも豊かになれば、父も私たち家族もとても嬉しいです」(真田さん)。
またこのインタビュー後、真田さんはアカウントのタイムラインにてお父様の逝去をフォロワーに向けて知らせました。ポストには作品を見てくれたことへの感謝の気持ちと、さらに新たなミニチュアハウスが見つかったことの報告とその画像、そしてフォトグラファーである真田さんが撮影した、作品づくりに集中する生前のお父様の横顔を写した写真が投稿されています。
(まいどなニュース特約・山本 明)