前埼玉県知事の上田清司参院議員の公設秘書だった男性から性暴力を受けたとして元記者の女性が損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は24日、国に440万円の支払いを命じた。原告の支援者らは「性暴力の事実について、原告の主張を全面的に認めた。勝訴と考えている」と判決を評価。元記者の女性は「ほっとしました。(支援者に)改めてお礼を伝えたい」などとコメントを出し、今回の判決を受けて前に進む決意を明らかにした。
女性は裁判などを通じて「(性被害が)なかったことにされたくない」と、性暴力被害の認定を求め続けてきた。公設秘書の男性は、準強制性交等などの容疑で書類送検後に自死して不起訴となり、警察が捜査段階で集めた着衣に残された証拠や防犯カメラ映像も1年後に破棄されていた。
裁判で国側は性暴力について、「原告の供述のみで客観的証拠がない」などと主張。女性側は警察官との会話の録音などを証拠として提出し、被害を訴えてきた。
判決では、女性と公設秘書が初めて会ってからほとんど日を置かずに性的暴行が起きたこと、女性が被害届や告訴状を提出したことなどから、「(性行為に対して)原告の同意があったとは考えにくく、原告の供述は信用性が高い」と指摘。公設秘書の行為は、当時の準強制わいせつ罪と準強制性交等罪に相当するとした。
一方、上田氏には女性の権利を侵害しないよう公設秘書を指揮監督すべき注意義務があったとする原告側の主張は認められなかった。弁護団は「責任を認めなかったのは不当」として、控訴も検討するとしている。
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女性は判決後のコメントで「被害から5年たっても涙が止まらず眠れなくなる日もあります。被害者は一生この傷を抱えるのかと思わされます」と苦しい胸の内を吐露。その上で、「(2次被害を恐れたが)悩んだ末に被害届を出すことができた。まずは相談することが何よりも大事だと身をもって体験しました」と振り返った。
判決後、支援者は東京都内で報告集会を開き、「フラワーデモ埼玉」の野田静枝さんが「(原告が)1人で立ち上がり、周りがサポートしてここまで来た。女性の人権が守られるために私たちは立ち続けます」とあいさつ。弁護団は「判決で『準強制わいせつ罪に相当する行為』などと認められたのは、被害者の救済として高く評価したい」と述べた。
判決を受けて、上田氏は「訴訟の当事者でなく、判決内容を知る立場にないので申し上げることはない。女性が今もつらい思いを抱えていることに対し、心よりお見舞い申し上げる」、女性が所属する報道機関は「性暴力を未然に防ぐことができなかったことを重く受け止めます」とそれぞれコメントを出した。【鷲頭彰子】
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